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年金繰下げ:損益分岐年齢と平均余命

公的年金の繰下げを考える場合に気になるのが、年金の受取総額。

65歳以降75歳までの間であれば、年金の受け取り時期を繰下げることができます。1ヶ月繰り下げる毎に0.7%の年金増。ただし繰り下げている間の支給はありません。

受け取りを開始した後、どの時点から当初の受取総額を超えてくるのか、気になります。

そこで、基礎年金・厚生年金合計で月額15万円(額面・単身世帯)の場合をモデルケースとして試算してみました。

1.70歳まで繰り下げた場合の損益分岐年齢


以下のグラフをご覧ください。

年金受取総額の推移比較(70歳まで繰り下げた場合)

縦軸は年金の受取総額。横軸は年齢。

オレンジの線は、65歳から受け取りを開始した場合の受取総額の推移です。

グリーンの線は、70歳から受け取りを開始した場合の受取総額の推移。

2つの線が交わったところが、損益分岐年齢。

この場合は、81歳となりました。

つまり、70歳まで繰下げて、81歳以上長生きできれば、繰下げをしない場合よりも受取総額は多くなる、ということでした。

2.75歳まで繰り下げた場合の損益分岐年齢


では、75歳まで繰下げた場合はどうでしょうか?

こちらのグラフをご覧ください。

年金受取総額の推移比較(75歳まで繰り下げた場合)

損益分岐点となる年齢は86歳

70歳繰下げでも、75歳繰下げでも、受け取り開始から11年後が損益分岐年齢です。

実は、66歳から75歳までの間、どこからの受け取りでも、11年後が損益分岐年齢になります。

受け取り開始から「11年」、と覚えておくと便利。

ちなみに、年金額から税金や社会保険料などを差し引いた「手取り額ベース」で試算すると、損益分岐年齢は、「額面ベース」でみた場合よりも2年ほど後ずれして、13年後になりました。

3.損益分岐年齢と平均余命


そして、次に気になるのが、「損益分岐年齢まで長生きできるかどうか」、ということ。

いつまで生きられるかは、誰にもわかりません。

そこで、
65歳時点の平均余命(*)を参照して、男性85歳、女性90歳を一つの目安として、先ほどのグラフに入れてみると、以下のようになりました。
*65歳時点の平均余命:65歳の人が、その後何年生きられるかという期待値。厚生労働省「令和3年簡易生命表」によると、65歳男性19.85年、65歳女性24.73年

年金受取総額と平均余命(70歳まで繰り下げた場合)
年金受取総額と平均余命(75歳まで繰り下げた場合)

4.「損益分岐年齢と平均余命」のグラフから見えること(結論)

①    男性の場合

75歳まで繰り下げると、年金受取総額が少ないまま、平均余命の年齢を迎える(損益分岐年齢の手前で平均余命の年齢が到来)。
75歳まで繰り下げる場合は、平均余命の年齢以上に長生きでありたい!
70歳くらいまでの繰り下げがちょうど良い?

②    女性の場合

75歳まで繰り下げても、十分に年金受取総額が多くなる(平均余命の年齢よりも損益分岐年齢のほうが4年若い)。
よって繰り下げするメリットは大きい。

これはあくまで、平均余命どおりの生存であった場合の結論ですが、いつまで生きられるかは誰にもわからず、また個人差もあります。

公的年金は終身年金。
繰り下げは「長生きしても大丈夫」という安心感を得られるところも大きなメリット。

損益分岐年齢を見る際は、あまり損得にとらわれず、目安として見ておくくらいで良いものと思いました。

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