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年金繰り下げ:額面ほどには増えない手取り額(税・社会保険料の影響)

65歳からの国の年金の受け取りを繰下げると、年金額が増えます。
1か月の繰下げにつき0.7%増。
70歳まで繰り下げると、65歳時点の年金額の42%増。
75歳まで繰り下げると84%増です。

ただし、これは額面の話。

税金や社会保険料も「所得」をベースに決まるので、
年金の手取り額でみると、もう少し緩やか。

そこで、年金の繰り下げは、
どのくらいの手取り額になるのか、
単身世帯と夫婦二人世帯の一般的事例で、
ざっくり試算してみました。

注)税金は、所得税と市民税等、社会保険料は国民健康保険料と介護保険料を対象にしています。

1.単身世帯の事例


試算の前提:
65歳時点の厚生年金 月額15万円(含む基礎年金)
年金以外の収入は無しとした場合
厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」の受給者平均年金月額を参考にしています)

まず、繰り下げた場合の年金額をグラフにしたものがこちら。

(筆者作成)

これを、「税・社会保険料」と「年金手取額」で分けると以下のとおり。

市民税等や国民健康保険料、介護保険料は千葉市の場合(筆者作成)

さらに、「税・社会保険料」の内訳を表したのがこちらのグラフ。

市民税・県民税や国民健康保険料、介護保険料は千葉市の場合(筆者作成)

そして、額面の年金額に対する「税・社会保険料」の比率を計算すると、概ね9%~15%程度。繰り下げる期間が長くなるほど、高くなっていました。

(筆者算出)

2.夫婦二人世帯の事例


計算の前提:
夫:65歳時点の厚生年金 月額15万円(含む基礎年金)
妻:65歳時点の国民年金 月額6万円
夫婦同年齢・年金以外の収入は無しとした場合
厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」の受給者平均年金月額等を参考にしています)

夫婦ともに繰り下げた場合の世帯年金額をグラフにしたものがこちら。

これを、「税・社会保険料」と「年金手取額」で分けると、

そして、「税・社会保険料」の内訳がこちら。

こちらの場合も、額面の年金額に対する「税・社会保険料」は、繰り下げる期間が長くなるほど比率が上がり、概ね9%~12%でした。

夫婦二人世帯のほうが、単身世帯に比べ「税・社会保険料」の比率が低く出るのは、配偶者控除の影響によるものです。

3.まとめ


あくまで一定の条件をおいての試算ですが、70歳まで繰り下げた場合は、額面の88%~90%、75歳まで繰り下げた場合は85~88%が手取り額、というところになりました。

注)市民税等や国民健康保険料、介護保険料の算出は自治体により若干異なります。


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