日本着陸の航空機予約停止要請に思うこと

コロナのオミクロン株の感染拡大を受けて,国土交通省は12月末までのひと月,日本到着の全ての国際便に関しての新たな予約の停止要請を出した.

それ以前に,「特段の事情」がない全ての外国人の入国停止措置を決めていた.「特段の事情」というのは,日本人の家族である外国人,永住者の家族,外交官,である.日本人にとって新年は一年で一番大事なイベントであり,クリスマス休暇と時期が重なりやすいこともあって,年末・年始に帰国しようとする在外邦人は多かった筈.つまり,新規予約の停止は実質的には在外邦人に対するもの,と考えられる.

コロナは国籍を選ばない.だから,水際措置として日本国籍だろうと外国からの入国は防ぎたい気持ちはわからなくはない.だがそれでも.自分が主権を担う自分の国というのは,いついかなる時も滞在を拒否されない唯一の国,ではないのだろうか.どれだけ悪臭を放っていようとも,どれだけ危険な存在であっても,入国を拒んではいけないのが,その人の国,というものではないのか.その後の隔離などは公共の福祉に鑑みてやむを得ないにしても,自分の国に滞在する権利は,基本的人権の一部なのではないだろうか.今回政府は,あっけなく在外邦人の入国を禁止した.棄民政策である.それは憲法違反ではないかと思う.

在日邦人は,今回の措置は対岸の火事と思っていることだろう.自分たちの安全が増えた(本当か?隔離されずに入国する人は数度の検査を通っているのに?)と歓迎すらしているかもしれない.在外邦人の人数は割合として少なく,切り捨てたところで大したことはないと思っているだろう.でもこれは,あなたが当り前に行けると思っていた場所に,ある日突然行けなくなるということだ.あなたが会えて当然と思っていた人に,ある日突然会うことを禁止されるということ.自主的にではなく国から強制的に.
欧州の首脳たちが外出制限やロックダウンをかける時に,いかに言葉を尽くして国民の理解を求めたか.それは,移動の自由という基本的な人権を制限することの重みを十分に理解していたから.
日本政府は今回,オミクロン株の危険性がはっきりするよりも前に,国民を棄てた.次はあなたの番かもしれない.

海外に生きるというのは,いつその場所から理不尽に追い出されるかもしれないという不安を抱えながら生きるということだ.そして,周囲の「自国民」達は普通に週末に家族や恋人に会いに行っている中で,自分だけが何年も家族に会えない,苦境を周囲と分かち合えないその辛さ.それでも,自分の国が存在していて,何かあったら少なくとも自分の国には帰れる,と思えているということが,いかに心の支えになっていることか.
今回それを覆されて,私は傷ついているし,怒っている.


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