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聖戦士ダンバイン考:地上製オーラマシン

ダンバインの世界観、設定についてアレコレ考察する。


オーラマシンの設計思想

オーラマシンとは、一種のサイボーグ兵器である。
生体部品を素材とし、それらを電子回路で制御する半生体ロボットであり、ファンタジー要素はまるで存在しないどころか、ファンタジーを科学で塗り潰す冒涜的機械だ。
開明的なドレイク陣営は騎士道といった古い精神論や戦術からいち早く脱却し、その思想はオーラマシンの設計にも反映される。
操縦者の技量に左右される剣戟よりも火力を重視し、最終的には「人型兵器」という固定観念すらも捨てたオーラボンバーやオーラファイターに行きつく。
一方、コモン人中心の保守的な反ドレイク陣営はオーラマシンの設計も旧態的な考えから脱却できなかった。
ボゾンは携行型オーラショットすら装備されず、狩猟用のガッシュ(火砲ですらないボーガン)を転用する有様の低火力機。
ボチューンに至っては乗り手の技量とオーラ力に大きく依存する高機動格闘戦機であり、近代戦においては特攻機も同然といえる。
反ドレイク陣営の最終目標は「全オーラマシンの廃滅」なわけで、自軍の損害を増やすのも、オーラマシンの発展に消極的なのも、そのバイストン・ウェル的「善き価値観」に因る可能性すらある。
そんな中、突然変異的に生まれたのが──ビルバインだった。

リビルド・ダンバイン

ビルバインは設定上は、ダンバインを参考に開発された機体だが不審な点が数多い。
それまでオーラバトラーを独自開発したこともないナの国が、唐突にこんな高性能機を生み出した。
しかも時系列的にギブン家がダンバインを鹵獲して、その実機と解析データをラウの国に持ち込んでから半年と経たずにボチューンやビルバインがロールアウトする。
いくらなんでも早すぎる。
オーラバトラーの開発ノウハウはショット・ウェポンが意図的に敵国に流出させている節があるので、ある程度の研究はナの国でも行われていたのだろう。
そこにラウの国とギブン家のエンジニアが合流し、ビルバインはボチューンと並行して開発された可能性が高い。
一見、繋がりの薄そうな両機だが、ボチューンの機体をうつ伏せの形にすると意外にもビルバインのウイングキャリバー形態に酷似している。
ボチューンを素体に聖戦士用の高出力コンバーターを装備し、オーラキャノンによる重火力も追加した高級機がビルバイン──と考えると納得がいく。
だが、まだ不自然な点がある。
他のオーラマシンには存在しない、脚部のロケットエンジン。
オーラビームソードなる、あまりにも突飛な他に類をみない武装。
なによりウイングキャリバーに変型するという異質すぎる発想。
技術的にもアイデア的にもコモン人離れしている。
かといってショット・ウェポン的でもない。
以上から、ナの国が地上人の技術者を召喚していた可能性が非常に高い。
しかし、ビルバイン以降は新型機の開発は途絶え、技術者自身も登場しないことから、件の技術者はアッサリと地上に帰還させられたと思われる。
それは、オーラマシンの技術が地上界に持ち帰られたことを意味している……。

リビルド・オーラバトラー

物語後半、全てのオーラマシンは地上界へと浮上する。
これ以降、恐獣由来の部品の供給は途切れ、パーツは次第に地上製に置き換わっていくと放送当時の富野監督がインタビューで語っている。
装甲材質の強度や重量が変わると設計変更が必要だが、デリケートな地上の戦闘機と異なり、気密性と剛性を兼ねるオーラバリアとコンバーターの推力を以てすれば多少の融通が効くものと思われる。
一方で電子装備は高精度な地上製のものが手に入り、性能が格段に向上する。
こうしてオーラバトラーの中には、さながらテセウスの船のように大半が地上製に置き換わった機体もいたのだろう。
つまり、地上の技術でもオーラバトラーは再現できる。

最終話で全てのオーラマシンは破壊されたが、整備に協力した地上の施設、部品を製造した工場、そして外部の観測データにはオーラマシンの痕跡が残っている。
オーラマシンを用いた戦争の凄惨さは地上人の心に深く刻まれたが、恐怖も戒めも時と共に薄れる。
「もし、誰かがまたオーラマシンを開発したら……?」
そんな疑心暗鬼と
「我々ならもっと上手く力を扱える」
そんな驕りを繰り返すのが人の愚かしさである。
地上人が新たなオーラマシンを作り出すのは、時間の問題だろう。

余談・地上製オーラマシンの意匠

メタ的に、ダンバインのオーラマシンデザインは二系統に分かれる。
一つは宮武氏によるサイボーグ兵器としてのオーラバトラー。
一つは出渕氏によるオーラファンタズムのファンタジー色の強いオーラバトラー。
後者はコモン人のセンスが色濃く出たものと解釈できる。
一般的に、オーラバトラーのイメージとしてはオーラファンタズム系が強く、人気も高い。
純地上製のオーラバトラーが生まれるとしたら、そういったコモン人のセンスの薄い、よりメカニカルな意匠になるだろう。
地上的で、かつ先進的な技術を反映した──ビルバインが最も近いかも知れない。
「ダンバインの世界観に合わない」と揶揄されたビルバインだが、地上技術の濃厚な血脈を感じさせるハイブリッド・デザインとして最適解といえる。

#聖戦士ダンバイン
#ロボットアニメ
#アニメ感想

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