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景品表示法に関する消費者庁からの回答の考察


前回の記事の振り返り

https://note.com/freexpre/n/n3d3bfabe643a
▲前回の投稿

先日は、浜田議員の事務所の方とご相談をさせていただき、「諸派党構想・政治版」の取り組みを活用し、消費者庁へ景品表示法に関する質問をさせていただき、その後回答を頂いた。ということを説明させていただきました。
重ねての御礼となりますが、
今回、取り組みを活用させてほしいという不躾なご相談にも快くご返事をいただき、消費者庁へスムーズに質問をさせていただく機会を作っていただきました、浜田議員をはじめ、秘書の皆様や事務所の方々に深く御礼申し上げます。

さて、今回は内容について確認していきましょう

消費者庁からの回答を振り返り

前回も記載をさせていただきましたが、
改めて消費者庁からの回答を記載いたします。

1,広告における誤認の定義に関する質問です。誤認の程度と対象者の人数など具体的基準はありますか?ある場合は、その基準もお聞かせください。

(回答)

景品表示法では、商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく優良(又は有利)であると一般消費者に誤認される表示を禁止しています。

「誤認」とは、実際の者と一般消費者が当該表示から受ける印象との間に差が生じることをいいます。社会常識や用語等の一般的な意味などを基準に判断して、こうした差が生じる可能性が高いと認められる場合には、当該表示は「誤認される」ものに当たり、現実に一般消費者の誤認が生じたかどうかは要件ではありません。

著しく優良(又は有利)かどうかは、当該表示を誤認して顧客が誘引されるか否かで判断されます。その判断において、対象者の人数といった具体的な基準はなく、その誤認がなければ顧客が誘引されることが通常ないであろうと認められる程度に達していれば、優良誤認・有利誤認に当たります。

2,上記の広告などの表示に関する誤認について、民間企業において自主的に誤認を防ぐための数値的な基準があるか。ある場合はその基準をお聞かせください。

(回答)

回答1のとおり、実際に一般消費者が誤認したか(その数等)は優良誤認・有利誤認の要件ではなく、数値的な基準はございません。



3,優良誤認における、合理的根拠の基準はありますか? ある場合はその基準をお聞かせください。

(回答)

消費者庁は、商品等の効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、その事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。当該資料が期間内に提出されない場合、不当表示とみなされます。

この「合理的な根拠」の判断基準は、(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること、(2)表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること、です。

詳しくは下記「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」(不実証広告ガイドライン)の5頁(第3「合理的な根拠」の判断基準)をご参照ください。

(不実証広告ガイドライン)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_34.pdf

4,現在の景品表示法において民間企業を公平に指導する取り組みを教えてください。

(回答)

不当な表示の疑いがある場合、消費者庁は調査を行い、景品表示法に違反すると認められたときには、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。

どの民間企業に対しても、違反の事実が認められた場合は公平に措置を行っております。

消費者庁からの回答内容

4つの質問の意図

今回の質問の意図をご説明します。
筆者の見解としては、はじめからお伝えしている部分がありますが、
広告における誤認というのは定義がないまま進んでいることが問題であり、それによって民間企業が告知物の何が正しいのか分からないまま進んでいます。
さらに付け加えると、課徴金が導入されていますが、上記の分からない定義のまま金銭的なリスクもあることから、ますます萎縮をする状況が起こりつつあると考えています。
そのため、質問の1と2は、誤認の定義の確認と、それを指導する役所だけの基準ではなく民間からの基準を確認。
質問3は優良誤認の“誤認”を支える部分に根拠があるため、この根拠の確認。質問4は公平に指導する取り組みを確認しています。

基本的には「誤認」を整理することが目的であることと、「公平」の確認をしています。

表示における「誤認」とは? 質問1・2

質問1の広告における誤認の定義に関する質問では、誤認の程度と対象者の人数など具体的基準を質問しています。
回答の4行目に

「誤認」とは、実際の者と一般消費者が当該表示から受ける印象との間に差が生じることをいいます。

消費者庁からの回答より抜粋

とあります。
これは一般消費者が受ける印象に差が生じることが誤認の基本的(辞書的)な定義です。その上で、

社会常識や用語等の一般的な意味などを基準に判断して、こうした差が生じる可能性が高いと認められる場合には、当該表示は「誤認される」ものに当たり、現実に一般消費者の誤認が生じたかどうかは要件ではありません。

消費者庁からの回答より抜粋

と続いています。
これはつまり、本来は一般消費者が受ける印象に差が生じることが基本的(辞書的)な意味であるが、社会常識や用語の意味を基準に大きな差が生じると認められる場合は該当する。とあります。ここには主語がありませんが、この判断主体は現状消費者庁であることが事実ですので、
「誤認」の定義には、民間には判断をすることはなく消費者庁が判断すると大枠で主張しているといえます。
そのため補足的に、現実に生じたかは問題ではないことから定義は不要ということも記載されています。そして、著しく優良誤認かについても

対象者の人数といった具体的な基準はなく

消費者庁からの回答より抜粋

と記載があります。
このことからも、
誤認の基準には、「誤認が起きているか?」「その範囲が著しい(大きく顧客が誘引されているか)」という数値的な基準を作っていき民間企業としてもしっかりと基準を作って守っていくべき方法も作れるはずなのに、すべての判断は消費者庁が判断をしていくという回答となっているといえます。

「誤認」の定義は適正といえるのだろうか?

1つ目の質問への回答から、
一般的な誤認は商品とその表示から得られる印象の差が生じることであるが、それは消費者庁が判断するものであり、実際に誤認したかどうかは関係ないということです。
誤認の基準や条件、誘因が起きているという判断、著しいという数量の定義などがないため、だれか適正な判断者が判断しないと意味がありません。
あえてと思いますが、その判断をする「主体(主語)」が存在しません。ですが現状からも、今の体制からも
この場合の判断者となるべき主語には(消費者庁が)という隠れた主語があると考えて読み解くことで、今回の文章が読みとけるものだと理解しました。
「全ては、消費者庁が決める」というこの状況、本当に誤認の定義は存在していると言えるのでしょうか?

民間が誤認を防ぐことは可能か?

質問の2で質問している民間が自主的に誤認を防ぐ基準に関してですが、結論から言えば基準はありません。という回答ですね。
質問1の回答のとおり、一般消費者が誤認したかどうか?という事実は関係ないため数値的な基準がないのです。本来この質問2というものはなくても良かったのですが、質問1の回答が上記のようになることも想定していたので「民間企業において自主的に誤認を防ぐための数値的な基準があるか」と言う質問を付け加えた形です。

その回答が「民間が自主的に誤認を防ぐことはできません」という回答と言えますね。
もう少し付け加えて言うならば、今回の回答を見たときに、消費者庁が作られてから何年も経っている中において、民間側で行えることがない以上、「あなた達は判断しなくていい」とさえ言われているように感じますね。

優良誤認における合理的根拠の基準 質問3

質問3の優良誤認における合理的根拠の基準についての質問には、不実証広告のガイドラインがメインとなる回答でした。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_34.pdf

こちらに関してはこれまで消費者庁が回答をしてきた回答通りです。
実はこれか過去にあった部分ではありますが、ガイドラインに準じてエビデンスを集めてきたものでも、『重箱の隅をつつく』ようにNGを出してきた部分もあり、近年ビジネスの動く速度が上がり、サービス・商品の開発がスピーディに行われている状況においては、もう一段階踏み込んだガイドラインを示さなくては、どこに合理性があるのか不明なままビジネスをしなくてはいけないと言えます。
近年の消費者庁との裁判でも、結局はこのガイドラインがなかったゆえの結論であると言えるのではないかと思います。

私自身が研究者ではないため細かいルール作りの基準の方向性については明確なことまでは言えず恐縮ではありますが、広告開発の場にいると、製造に関わる方々からは「これだけでは新しいものは作れない」とご意見をいただくことが多くありました。

公平な指導は行われているのか? 質問4

これまでの質問に対するまとめとして、4では公平に指導する取り組みを伺いました。すると

不当な表示の疑いがある場合、消費者庁は調査を行い、景品表示法に違反すると認められたときには、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。どの民間企業に対しても、違反の事実が認められた場合は公平に措置を行っております。

消費者庁からの回答より抜粋

という回答でした。
これまでの1~4までを総括すると
「私たちが判断して、指導する。それが公平です。」
という内容と言えます。

公平とはどういう状態なのでしょうか

これは先程も記載いたしましたが、全体としては、
「消費者庁が判断をして、消費者庁が指導をして、それが公平である」と、平たく言えばそのような表現になります。

そして、これらは、指導に関して「監視をすることが現状できない」「官公庁の場合、課徴金がノルマになる可能性がある」ことから、公平に指導が本当にできているのか?今後もできるのか?が全く分からないことを問題視すべきだと思いました。

直近でも、機能性表示のエビデンスに関して、表示とのズレから指導に至り、その後、同一の表示を行っていた88社に対し「照会」(確認してください)という話となり、15社が機能性を取り下げという、流れとなっています。

ではなぜ、最初の企業が1社だけまず指導をされたのか?
はじめの1社というのはニュースにもなり社会的な影響を受けやすいです。この指導方法は「公平」だったのか?

機能性表示の問題は、ガイドラインの曖昧さと、公平さをチェックすることがない状態が招いていると言えます。それもこれも、「民間でしっかりと合理的根拠と誤認がわかる整備」がなされていれば、こんなブラックボックスにはならないわけです。

不明瞭な公平から見えたこと

これまでも同じ内容の表示をしても指導を受ける企業と受けない企業がありました。
この差は何だろう?と思うところから、最後の質問を付け加えさせていただいたのですが、公平とは、評価のしにくいものではありますが、民間側から見てもえこひいきがないようにする必要があり、今回の質問に対する回答が
「私たちが指導しているから公平」
だけでは不足していると思います。

基準なき消費者庁だけの判断

今回の回答としては、
「民間に判断する権利がない」ということでした。
これは以前の投稿にも書いたことではありますが、現状のような、
根拠の判断、誤認の判断、著しさ(程度)の判断、指導の判断というすべてをガイドラインがないまま消費者庁内部のみで行うということは、
時速60kmの道路が今日から時速30kmですと言われるようなレベルのことが起こってもおかしくありません。なぜなら、

社会常識や用語等の一般的な意味などを基準に判断して、こうした差が生じる可能性が高いと認められる場合

消費者庁からの回答より抜粋

という表現が、
言葉自体もアップデートされている世の中において、一つの省庁だけで全てを判断できるものなのか?と思うためです。
逆に言えば、この基準ができているのでしたら、今後全ての広告を事前にチェックして誤認はない判断していただけるのか?ということです。

これまで私は旧薬務課を含めて様々な確認をしてきましたが、
「これは大丈夫」「これは差はない」など明言を頂いたことは一度もありませんでした。

問題の根幹と今後の課題

今回の回答から、景品表示法では
誤認される可能性が高い低いなど判断する数値的な基準は存在しないと言うことがわかりました。ですが、この法律の運用は、消費者庁も回答している通り、辞書的に言えば消費者の印象や心象が重要であり、さらに、そこから生まれる行動が繋がってくるので、やはり数値的なガイドラインはあるべきだと私は思います。
むしろないことによって、不必要な指導を生み出し、課徴金を支払うことが起きているとも言えます。

そして、そのすべての判断を行政が指導できてしまうことによって、恣意的に運用できるルールになっていることが問題なのです。

前回から言っているように、問題点の根幹は恣意的に運用でき得ることであり、運用しているかどうかまでは言っていません。しかし、今回の回答からそこを改善する意思がないと感じられたので、やはり大きな問題点であると思います。
 
今回は、消費者庁からの回答と考察、そして所感を述べさせていただきました。

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