株式公開と会社経営の違い

 本が売れたおかげか、最近は起業家セミナーや経営者向け講演会などからお声がかかる事が多くなりました。先日、ある経営者から「将来、株式公開したいんですけど、どうしたら良いでしょうか」という質問が来ました。

 実は株式公開つまり上場を目指すことと会社経営はぜんぜん違うんです。真逆と言って良いかもしれません。
会社経営の目標は「利益を出すこと」
株式公開の目標は「上場すること」です。

 会社を経営する場合、利益を出さないとそもそも会社が倒産してしまいますし、銀行からお金を借りることもできません。だから無駄な経費を削減し、人もなるべく雇わずに売上を伸ばし利益を出さなければなりません。

 一方、株式公開を目指す場合は、損しても良いから売上を毎月どんどん伸ばしていくことが重要になります。だからとにかく広告宣伝費をかけ、人を大量に雇う事が求められます。そうでないと上場はおろかVC(ベンチャーキャピタル)からも見放されてしまうからです。

 あるクラウド会計システム会社は、アフィリエイターたちに1アカウント作ると千円あげますという作戦を考えました。アフィリエイターたちは無料のメールアドレスを大量に取得し、会計システムへ登録を行いました。1アカウント作るだけで千円もらえるというのは彼らにとっては願ってもない良い話です。ある人は1ヶ月で1000アカウント登録し100万円を手にしたそうです。会計システムメーカーはユーザーが急激に増えたことでVCからさらにお金を引き出しました。実際には使われないアカウントなので大赤字です。しかしそれで良いのです。

 メディアに取り上げられるようにお金を湯水のように使い、派手な宣伝をやり続ける。とにかく売上を上げる事。これが株式公開を目指すということです。もちろん上場できなければ自己破産です。期限は最大10年(本当はもっと短いですが)です。

 このように会社経営と株式公開は、真逆の関係にあります。会社経営の延長線上に株式公開はありません。どちらを選ぶかは貴方次第です。

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