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【娘と父親】


昨日は4月から神戸で過ごす、娘の荷物をパッキングした。同伴して引っ越しを手伝う日まで
いよいよ一週間後か‥ 

ここ数週間妻と娘は生活に必要なモノを
買いそろえてきた。僕はといえば早めにPCや
モニターや周辺機器を買い揃えて、3週間くらいは
毎日使用して慣れなさい、と。
本体とSDカードの保存の仕分け方や、保存ファイルの
階層の構築やショートカットキーの表を印刷して、
できるだけマウスを使わないで作業することを教えた。

PC内の画面表記を英語表記に変えて、大学が始まる時には、見慣れた習慣になっているようにと。

しばらくすると、靴も仕立てたスーツやブラウスも到着した。どんどんと彼女の新しい門出ための品々が到着する。その度に僕は嬉しいようで、寂しい気持ちに陥り
複雑な心境を抱えながら、落ち着かない日々を繰り返し、
様々な事が上の空だ。

まるで爽やかな綺麗な夏の海辺で、
ヒトリだけ漂流しているような気持になる。

和室に荷物を広げて、慣れない手付きで段ボールに
収納する姿がとても幼く見えて、再び胸が締め付けられる。

大学敷地内の寮に入るとはいえ父親として不安ではあり、こんな日はいずれ来ることであり、早いか遅いかだけなのだと意味不明に焦っている自分へ言い聞かせる。

寮の規則の書類を確認をしたがかなり厳粛だ。門限は当然のことながら厳守であり、礼拝や委員会、そして月に2回の室内の舎監によるチェック。重要文化財である学舎内は、床の保護の為にも靴裏は柔らかい素材であること。自分は事前にこうした厳粛な大学であることは知っていたから本人の申し出に間髪入れずにOKを出した。

それでも、自分のカラダの一部が喪失していきそうな例えの様ない心境が年明けから続いている。

英樹、子離れする時なんだよ。
オマエは十分な愛情を分け与えのだろう?
それはいつまでもどこまでも変わらないのだから、
笑顔で送り出して、笑顔で迎え入れやれよ

先日飲みに付き合って頂いた一回り以上の大先輩にそんな言葉を頂いた。個室だったこともあり、久しぶりに人前で嗚咽するほど泣いてしまった。

良かったな、イイ親父になれて。オマエはよくやってるよ、それは娘にも伝わってるさ。

別れ際の先輩から頂いた言葉が、心に染み渡っている。

そんな事を回想しながら段ボールの蓋をテープで止める娘に声を掛けた。
一緒に最終チェックをして蓋をしようと。

娘よ、4月からの不慣れな環境の中で踏ん張れ。世の中がどんな風潮になっても自分を見失わず、後悔なくしっかりと生き抜け。

何事も前向きに

何時も楽しく

何人にも優しく

謙虚と感謝を大切に

この理念を、これまでのお前に渡したはずだ。
強く逞しく、優しく世の中を渡っていけ。

頭の中のカウントダウンが薄れつつある。
子離れを受け入れる時がきたのだ。

最後の段ボールにテープを掛けて蓋をした。
親父の嬉しさと寂しさの想いをこっそりと詰めて、
そして将来への期待と、もう一つ言葉を箱に詰めておいた。

道に志し、徳に拠り、仁に依り、藝に遊ぶ。

嘉永元年から代々続く、吉田家の志を引き継いで、
徳をよりどころにして、私利私欲無く仁の心に
沿って教養の幅を広げて楽しんでいけ。
子離れした父さん達は、より一層人生を楽しむよ。

最後に…
月穂、忘れ物はないか?
もう一度チェックをしていけよ。

いってらっしゃい。たまには帰って来いよ。

いってらっしゃい。

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