闘病記(4) 「錯覚」
「低周波治療器を体から外してください。」そう看護師さんに頼むとその人は
「…。」首をかしげて去っていった。全身にびりびりと振動が走って止まらない。脳出血で倒れた直後、病院に運ばれた時に低周波治療器を手足に取り付けられた記憶があったのでそのせいだと思ったか。その後、何人かの看護師さんに同じことを頼んだ。みんな怪訝そうな顔をする。しばらくすると、体格の良い男性看護師さんが「やれやれ、しょうがないなぁ。」といった面持ちでラスボスのように登場し、
「赤松さん、大丈夫?何のことかわからんよ。」
と尋ねた。
「肩甲骨、お尻の大きな骨、あとかかとかな、、全部右側の骨のところに
低周波治療器みたいな機械が付いているはずなんです。はずしてもらえませんか?ブルブル震えてとても気持ち悪くて…お願いします。」
看護師さんが答える。
「じゃぁ一緒に上から触って行ってみようね。行くよ、肩甲骨。うん。次、お尻の所ね。じゃあ次、かかとね。」看護師さんは僕の左手を持ち、手のひらで一つ一つ確認できるように、無理な体勢を取らなければいけないところはゆっくりと一緒に確認をしていってくれた。
何もなかった。
「・・・何もついてない…?」
「そうやね…。そういうことになるね。」
叫び出しそうになるの必死で堪えた。感覚がなくなる=麻痺することだと勝手に解釈し、自分の体に起こる変化を「何かを感じにくくなる」くらいにイメージしていた。現実に起きているのは、「ないものあると感じてしまう、それも相当強烈な強さで感じる」というものだった。感覚が完全に混乱している。「これが、後遺症として残ってしまうのか?」「後遺症になってしまったらどうやって生きていこう?」怖くて怖くてたまらなかった。
気の毒そうに見ていた看護師さんは、
「まぁ、今はいろんな症状が出てくる時やけん。また、何かあったら呼んでよ。」
そう言って、去っていった。
そこに、主治医がやってきた。多忙な中、何度も足を運んでくれ、いま自分の身体がどういう状況にあるのか、今後どういった展開が予想されるかなどを丁寧に説明してくれる人である。(そしてイケメンでもあった。イクメンかどうかはわからない。)主治医の説明は、また次回に。
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