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GⅠフェブラリーステーク


序文 最低からはじまった最強の伝説

今年で41回目を迎えるGⅠフェブラリーS、歴代の中でも最大の番狂わせとなったのが今からちょうど10年前の第31回大会。
勝ち馬は最低16番人気からの勝利。JRAの平地GⅠレースでは、エリザベス女王杯サンドピアリス、スプリンターズSダイダクヤマトに続き、史上3頭目の快挙だった。

コパノリッキー
33戦16勝、引退までの獲得賞金はおよそ9億5千万。
ダート競馬史に残る金字塔を打ち立てた。

主な勝ち鞍は14・15年のフェブラリーS連覇他、JBCクラシック連覇、かしわ記念3勝、16年帝王賞、マイルチャンピオンシップ南部杯連覇、17年の東京大賞典。日本調教馬として最多となるGⅠ・JPNⅠ競走11勝を挙げた。
所有馬主はDrコパこと小林祥晃氏。日本における風水の第一人者であり、タレント・実業家等幅広く活躍する、競馬ファンにはお馴染みの名物馬主である。

コパノリッキーは2010年、日高町のヤナガワ牧場にて誕生した。この馬を語るうえで外せないのが母・コパノニキータの存在だ。コパノニキータは1歳の時「脚が曲がっていて使えない」という理由から、早々に処分にされる予定だった。その事情を知った小林氏が購入を決断。価格はわずか10万円だった。
美浦・緒方厩舎に預けられたニキータは、04年1月に新馬デビュー。3戦目で初勝利を飾ったが、喜びも束の間、今度は心房細動を発生してしまった。小林氏の懇願によりどうにか現役を続行、下級条件までだったが22戦3勝という結果を残し、奇跡的に繁殖入りを果たした。

そのコパノニキータから生まれたのがコパノリッキーである。
リッキーは12年12月阪神の新馬戦でデビュー、初戦こそ8着に敗れたが、その後下級戦を連勝、OP戦3着・1着と結果を残し、翌年園田で行われた兵庫CSで重賞初制覇を飾った。
名馬だった父・ゴールドアリュールの血統だろうか、母とは異なる順風満帆ともいえるスタート。しかし、そこからリッキーは低迷期を迎える。
兵庫CS後は日本ダービーへ向かう予定だったが、右前トウ骨の骨折が判明、長期休養を余儀なくされ、大井のジャパンダートダービーも断念せざるを得なくなってしまった。

11月、復帰初戦の霜月S(OP)10着、翌月のフェアウェルS(OP)9着と以前とは程遠い走りで大敗。翌年、フェブラリーSから始動したが、前2走ですっかり人気を落としていたリッキーは、16頭立てで最下位の16番人気とまったく期待されていなかった。

レースはスタートダッシュを決めると2番手を追走。終始馬なりで進み、余力を残したまま直線へ侵入した。後方には1人気のペルシャザール、すぐ後ろには2番人気で、後に終生のライバルとなるホッコータルマエが迫っている。ゴールまではまだ400m、観衆は人気2頭の差し込みを疑いもしなかった。リッキーはハナを切っていたエーシントップに代わり先頭に躍り出ると、後続の人気馬たちがそれを猛追。脚を余していたリッキーは鞭を入れられさらに加速。後続を突き放しにかかる。…客席の歓声は、次第に悲鳴が混じり、嘆息が混じり、形容し難いどよめきに変わっていった。
ラスト200、ホッコータルマエの追撃を振り切り半馬身差で先着。GⅠ初参戦にして、最下位人気から奇跡の初勝利を飾った。
また、このレースから騎乗していた鞍上の田辺裕信は、デビューから13年目、挑戦すること25戦目にして初のGⅠ勝利を達成したのだった。
レース後のインタビュー、田辺はGⅠ制覇をプレゼントしてくれたリッキーに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えたが、こうも語っている。
「強い馬なのはわかっていた。小細工なしの、正攻法で挑んだ。」
余談だが、田辺がテン乗りでリッキーに騎乗したのにはいくつかの偶然が重なっていた。フェブラリーの前哨戦、根岸Sは同じ村山明厩舎のテスタマッタに騎乗していた田辺だったが、レース直前に屈腱炎を発症し引退。騎乗馬が空になっていたところ、村山調教師を介し、小林氏からの依頼を受けることになったのだ。

同年かしわ記念とJBCクラシックを制しGⅠ3勝、翌15年から鞍上を武豊に代えGⅠ2勝、史上初のフェブラリーS連覇を達成した。
しかし後日レース中に骨折していたことが判明、再び6か月の休養に。
復帰した翌16年GⅠ3勝を挙げ、17年12月、引退をかけた東京大賞典で悲願の初制覇、GⅠ・JPNⅠ全11勝の快挙をもって有終の美を飾った。

引退レースとなった17年の東京大賞典は、4度目の挑戦にして初の優勝となった。そしてこの時の鞍上は主戦の武豊ではなく、かつて府中の舞台でGⅠ初勝利を成し遂げた、田辺裕信その人だった。
当時大きな落ち度もなく、田辺から武へと主戦騎手替えを行った小林氏に対する批判は少なくなかったが、後に小林氏はこう述懐している。

あとで武さんにスイッチしたのは、リッキーの引退式の時に本人も「自分が一番つらい時期に支えてくれた」って言ってくれてたけど、やっぱりその気持ちがあってね。日本の競馬って、武豊じゃないと引っ張れないところがあるんだよ。それで2人で飲んだ時に「武さん、リッキーに乗ってくれない?」って俺が頼んだら、「田辺がいるじゃないですか」「田辺の方には俺から話しとくから」って。その後、田辺の方にも「田辺、悪い。ユタカを勝たせたいんだ。俺達個人オーナーは武豊でG1獲るのが夢なんだよ」って言ったら、田辺も「はい」って言ってくれてさ……。いいやつだよね。田辺とは今でも仲良いけど、G1初制覇も「コパさんのおかげ」って、いつも言ってくれるしね。
引用元:
https://g-journal.jp/2018/04/post_6306_2.html
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物語の始まりは、処分されるはずの牝馬だった。馬主が憐憫の情から引き取った馬は、わずかな勝利とダートの遺伝子を継いだ一頭の牡馬を残した。
いくつかの偶然が重なり鞍上となった騎手は、不退転の意志で歴史的な大波乱を演じて見せた。そして乗り替わったレジェンドは、思いを受け取り馬をさらなる高みへと導いていった。
馬から馬、人から人、そして人から馬へと、いくつものバトンの受け渡しをしながら辿り着いたゴール。振り返るとそこには、何者にも真似することのできない、前人未到の大記録が打ち立てられていたのだった。

2024年、今年のフェブラリーSは主役級の馬が不在とあって、芝の重賞路線、地方競馬の雄、そして王道ダートのあがり馬たちと、混戦ムード一色だ。

人気に惑わされてはならない。
"競馬は何が起こるかわからない"。

今はまだ誰にも知られぬ使命を、
誰にも支配されることのない運命を、
人々の思いを背負った一頭が
あの時のような狂騒を巻き起こすかもしれない。

冬の東京砂漠。
蜃気楼の先に現れるのは期待の一頭か、波乱の使者か。
「フェブラリーステークス、まもなく出走です。」

今年で22年目を迎えた田辺裕信騎手
2/14現在 通算勝利数1171勝
GⅠは中央、地方交流合わせて10勝

はじめに

ドバイにサウジと、海外遠征組の不参加により年を追うごとにフェブラリーSのレベルは下がってきています。今年はレモンポップ、ウシュバテソーロが揃って不在、そこに加えてドライスタウトが戦線を離脱、とGⅠとしての格が危ぶまれる状況に…。そんな中、今年はターフ路線から参戦を表明する馬や、地方で無双した馬が名乗りを挙げています。こうなってくると過去10年でデータを収集する森タイツ式の予想も、もはやデータ自体が意味をなさなくなってしまいそうです笑。
しかしながら、あくまでも過去例に倣ってこの砂のGⅠを取るに足りる、必須5か条と過去の好走データ集を、愚直にもまとめてみました。また戴冠候補の有力馬たちを、各路線別に紹介しますので、今回も予想の参考にしていただければと思います。どうぞ最後までお付き合いください。

コース攻略

2コーナー奥の芝の上からスタート。芝を長く走れる外枠の馬はスピードに乗りやすいですが、内枠の馬はスタートダッシュが利かないと厳しくなります。広く長い直線は能力が反映されやすく、底力が問われます。雨で馬場が渋った場合は脚抜きが良くなり、スピード勝負に。

いざ砂の王者へ、勝利への必須5か条

📝4~5歳馬である

過去10年8頭が該当。ダート重賞は脂ののったベテラン馬の活躍が眼立ちますが、府中マイルダートに至ってはスピードと追走力が求められ、若い馬が有利に。4歳馬もしくは5歳馬が中心となるでしょう。7歳以上は過去勝利していません。

📝1年以内にダート重賞での勝利経験があった

過去10年全馬に該当。JRA主催のダートGⅠは年2回のみ。そもそも重賞自体が少ないです。海外に活躍を求めるトップ層を除いても、ダート馬たちにとってこの重賞は狭き門。下級条件で活躍しただけの馬にはチャンスなしとみて差し支えないでしょう。地方交流も含めて直近1年以内に重賞で実績を残している人馬に、白羽の矢を立てるべきです。

📝府中ダート1400~1600mでの勝利経験

過去10年9頭が該当。直線の長い東京競馬場、他場とは異なる適性が求められるのは言うまでもなく、ここでの実績・勝利経験は優先すべきでしょう。ちなみに、非該当馬のインティは19年にこのレースを制しましたが、ダート6連勝で初の府中へ乗り込んできました。同様の勢いがなくては厳しいと思われます。

📝前走1~3番人気、もしくは1着だった

過去10年9頭が該当。基本堅めの決着が多く人気馬(実力馬)が勝っています。前哨戦時点で評価を高めている馬、もしくは前哨戦で結果を残した馬が、本番の順位に直結しやすいです。

📝非サンデーサイレンス系の血統である

過去10年7頭が該当。非該当の3頭は全てゴールドアリュール産駒で、同産駒が出走しなくなってから勝ったのは、全て非サンデー系でした。有力馬の血統表にはよく目を通しておくべきです。昨年王者のレモンポップは外国系の血統でしたね。

以上の5項目に加え当日1・2人気だとやはり好走率は高いです。
また当日の馬体重にも注意が必要で、マイルダートではパワー(=馬格)求められます。過去10年8頭が500㌔超の大型馬でした。

砂に埋もれた千金好走データ集

それではここで、恒例の過去10年好走データを見ていきたいと思います。

1、2番人気は必ず連対

過去10年必ず2番人気内の馬が連対中。人気薄から連対した馬は全て関西馬。6番人気以下で【1-2-4-76】、関東馬は【0-0-0-16】でした。
人気馬に人気薄の関西馬を絡めていく馬券作戦が効果的。

穴党は最低人気に注目

人気薄3頭の連対馬は9,16,16人気でした。コラムで書いたコパノリッキー以外では20年ケイティブレイブ、21年エアスピネル。両頭ともに7、8歳の高齢馬で前走がGⅠでした。ロマン派なら、大波乱狙いで前走GⅠで敗けた高齢馬を狙うのが面白いかも。

ダートGⅠ馬&リピーターに注意

連対馬20頭の内11頭にダートGⅠ勝ちがありました。21年以外の9年でGⅠ馬が連対中、芝GⅠ馬であるシャンパンカラーの扱いは…?
またリピータの好走も多くみられるので、昨年連対したレッドルゼルは要注意です。

ターフ組の扱いをどうするか?

前走芝出走馬にも前例はあり【0-0-0-3】で馬券内ゼロ。牝馬は【0-0-1-12】で4番人気だったソダシの3着が最高。通用はしていません。前走芝のターフ組、あるいは牝馬は、人気馬でも過信禁物です。

関東馬VS関西馬

関東馬【4-1-0-21】、関西馬【6-9-10-97】
地方馬【0-0-0-9】、関西馬が活躍中です。
地方馬から勝ったのは歴代一頭のみ、
99年メイセイオペラだけですね。

2024 ダートマイル王者の候補たち

ここからは、森タイツが期待する戴冠候補馬たちと、面白そうだなあと思っている穴馬を解説。ダート、地方、ターフと各路線別に2頭ずつ計6頭紹介させていただきます。

王道ダート編

🏇オメガギネス🏇

「オメガ」は馬主の原禮子氏の馬の冠名ですが、真っ先に思い浮かぶのが東京大賞典を4連覇したオメガパフュームです。JRAのGⅠには縁がなかったものの、パワーとスタミナを求められる大井右回りを最も得意としていました。本馬、オメガギネスは同じ冠名を擁しますが競走馬としては真逆、左回り巧者で、スピード勝負となる馬場を得意としています。
昨年10月の府中グリーンチャンネルCは脚抜きの良い不良馬場のなか、1分34秒3の快速タイムで勝利。雨降りのダートで好タイムが出るのは当然とはいえ、後続のベルダーイメル、ぺリエールといった強豪を突き放しての勝利は素直に評価できるでしょう。
オメガギネスはロゴタイプ産駒ですが、この産駒のデビューは21年からとまだ日が浅く、確固としたデータもまだ少なく、馬券的な期待値は現時点ではかなり低めです。ラブリイユアアイズ、シカゴスティングらをみると牝馬は芝適性が高そうですが、牡馬はオメガギネスの他、兵庫CSを勝ったミトノオーなどがおり、ダート短中距離の適正は決して悪くないと思います。ロゴタイプは若駒時代に朝日杯、皐月賞、スプリングSを勝っていましたが、6歳時に安田記念を制するなど古馬になってからの活躍も目立った一頭です。クラシックの皐月賞では追込みもみせましたが、連対時は基本前目の競馬で結果を残すことが多かった印象です。
初重賞制覇をかけた一戦、オメガギネスには父譲りの強い競馬を期待したいですね。
前走東海Sでは得意の重馬場、と思いきやゲートの出が悪く道中も掛かり気味に。直線ではウィリアムバローズに競り負けて、1馬身差の先着を許してしまいました。このレースを見た限りでは右回りの京都よりも、府中1ターンの方が適性が高いのは明らか。胸板が厚く馬格がある体型も、1800mよりマイル向きなことを示唆しています。
GⅠレースらしいスピード勝負になればこの馬にとっては追い風。東京マイルを得意とする戸崎騎手で見たかった気もしますが、ルメール騎手でも当然問題はないでしょう。むしろ陣営の本気度を感じます。
調整も問題なく、ここは◎の印を打ちたいですね。

🏇ウィルソンテソーロ🏇

昨年末、チャンピオンズC、東京大賞典と連続2着で好走を続けていた俊英、ウィルソンテソーロが待望のGⅠ制覇を狙います。
21年8月新潟の芝新馬戦でデビュー、4戦目でダートに転向すると転機が訪れます。未勝利戦から破竹の4連勝、中京で行われたOP戦こそ落としましたが、地方交流へ舞台を変えるとさらに覚醒。川田将雅騎手を背にJPNⅢ3連勝を飾りました。以降はJBC5着、チャンピオンズC、大賞典2着と、GⅠ勝ちまであと一歩のところまで来ています。
ウィルソンテソーロはキタサンブラック産駒、言わずと知れたイクイノックスの父牡馬ですが、ソールオリエンスら芝重賞で活躍する産駒を輩出しています。ではダートでの実績はどうでしょう?
ダートで重賞勝ちを収めたのはウィルソンテソーロのみですが、2~3勝クラスまではマリオロードなどが比較的優秀な戦績を残しています。また新潟・中京・東京と左回りでの好走が顕著で、東京マイルは昨年末までの連対率が通算31%と適性の高さが窺えます。距離延長時の方がより良い成績に直結していますが、母チェストケローズの北米血統はスピード・パワーを併せ持ち、東京マイル向きな気はします。
前2走は、台頭目覚ましい原優介騎手の手腕が光りました。チャンピオンズCでは出遅れながらも後方一気の差し込み、東京大賞典では意表を突いた単騎逃げ、と大胆な奇策が功を奏しました。今回は2番人気での出走と、周囲のマークも厳しくなり、鞍上の松山騎手には奇策よりも正攻法でライバルたちを倒す技量が求められます。また高速馬場になってしまうとスピード負けが懸念されます。乾いた馬場で持久力が問われる展開になれば、勝ち負けまで持ち込めるはず。
芝スタートもこの馬にとって好条件、外枠を引ければさらに激アツです。

地方からの刺客編

🏇イグナイター🏇

兵庫所属の地方馬イグナイターが、GⅠ制覇の勲章を引っ提げて中央G1へ挑んできました。
デビューはおよそ3年前、奇しくも今回と同じ府中マイルの舞台で新馬戦を勝ちました。その後、中央競馬に早々に見切りをつけて地方へ転厩。大井から園田へと、エリート街道を外れたアウトサイダーは着実に力をつけ、交流GⅢ2勝、GⅡを1勝、そして昨年11月にJBCスプリントで悲願のGⅠ制覇を成し遂げました。
父エスポワールシチーはフェブラリーS他、JBCスプリント、チャンピオンズCダート等を制したダートの名馬。NAR(地方競馬)の年度代表馬にも選ばれました。産駒にはイグナイターの他、ペイシャエス、スマイルウィ、ヴァケーションら、近年地方の重賞クラスで活躍する馬が多いです。
ほぼダート専用の種牡馬として、1200~1800mまで幅広い距離で実績を残しています。福島・新潟での好走率が高いですが、府中・中山でも通用、東開催では比較的高い複勝率を記録しています。
特筆したいのは2走前の盛岡マイルチャンピオンシップ、レモンポップの2着に敗れ、着差も2秒差と、惜敗ともいえる内容でしたが、現ダート王者へ正攻法で挑んだ勝負根性は称賛に値します。
今回は調教も良く、陣営からは自信のコメントが出ています。当初は海外遠征も視野に入れていたようですが、事情により断念。主役不在の府中GⅠへ全力投球。
マイルはこの馬にとってやや長いのでは、という懸念点も上げられます。切れ味は抜群でも一瞬。スタミナがどこまで持つか、できれば乾いた軽い馬場で勝負したいところ。また相棒の笹川騎手は規定により出走できないため、テン乗りで西村淳也騎手が代役を務めます。
イグナイターは「点火薬」の意。一度火が付くと抑えが利かないことから名付けられました。帰ってきた府中の舞台で再び、この馬の大爆発に期待しましょう。

🏇スピーディキック🏇

島根が生んだ孤高の天才、御神本訓史が鞍上。地方の女傑スピーディキックが今年も参戦です。
デビューは21年6月の門別、初戦から連続2着と素質の高さを見せ3戦目で快勝。惨敗はGⅢ JBC2歳優駿8着のみで、8戦して7連対、内地方重賞2勝という好成績で1年目を終えました。
翌年南関浦和の藤原厩舎に移籍すると、御神本騎手を背に連勝街道を爆走。南関重賞5勝、交流GⅡ3着1回と、まさに地方では敵無しの状態に。明け23年は満を持してフェブラリーSに参戦、6人気と期待を集めましたが、結果も6着と残念な結果に終わりました。今回1年越しの参戦で、その真価が問われそうです。
スピーディキックはJRAでは希少ともいえるタイセイレジェンド産駒。父キングカメハメハ、母父メジロマックイーンと良血統で、中央地方通算9勝、12年にはJBCスプリントを勝っています。
産駒には中央で3勝を挙げたタイセイスラッガーが、地方ではティーズハクア、クラルージュ等、OPクラスで活躍する馬が多数います。
中央での産駒数は極端に少ないため、府中マイルへの血統適性はいまだ疑問符ではあります。
しかしながら去年の参戦時は、直線で不利がありながらも6着の大健闘。陣営もリベンジに向け虎視眈々でしょう。なにより鞍上の御神本騎手が、もう一頭の地方勢有力候補、ミックファイアではなくこちらを選んだという事実。
昨年の反省も踏まえ、おそらく最後の直線は大外からの差し切りを狙ってくるはず。できれば外枠を引きたいところ。

この砂のGⅠにおいて、最下位人気が穴をあけてきた点はすでに触れています。展開次第では馬券内もありえる…。いや、南関競馬ファンは幾度となく、天才騎手が奇跡を起こす場面を目撃してきたはず。競馬史上初、地方馬で牝馬による中央GⅠ制覇に夢を見ましょう。

ハイブリットターフ編

🏇ドゥラエレーデ🏇

22年ホープフルS王者にして、ターフとダートの二刀流をこなす異端児がGⅠ2勝目を狙いに来ました。
デビューは22年6月の阪神新馬戦、芝1800mでした。3戦目の札幌ダート1700mで初勝利を飾ると、GⅡ東スポ2歳Sを経てGⅠホープフルSへ、11番人気からの戴冠を果たしました。その後のUAEダービーはダート、帰国後は国内クラシック戦線へ。昨年末にダート2戦、チャンピオンズC・東京大賞典でそれぞれ3着と、まさに紆余曲折のキャリアを積んでいます。24年最初の照準を、引き続きダート路線でGⅠに挑んできました。
ドゥラエレーデはその名が示す通りドゥラメンテ産駒、リバティアイランド、タイトルホルダーなど、決して長くなかった種牡馬生涯の中で多くのGⅠ馬を輩出。母マルケッサは目立った活躍がありませんでしたが、祖母マルペンサの産駒にはサトノダイヤモンドがいます。母父オルフェーブルの血筋も相まって、パワーと機動力に長けた中距離馬という印象です。
今回ドゥラエレーデにとってダートか芝かは大きな問題ではなく、初の府中、初のマイル戦という点が最大の障壁であり、ワンターンの府中ダートにどこまで適合できるかが、勝負の分かれ目になりそうです。
また最終追い切りは、坂路でムルザバエフ騎手を背に4ハロン49秒1の猛時計でかなりの仕上がりのようですが、一方で馬体重が+22㌔増と読めない部分もあります。…素直に成長分として受け取ってよいでしょうか。もちろん馬格はあるに越したことはないですが。当日のパドックまで勝負気配を注視した方がよさそうな気がします。
鞍上ムルザバエフ騎手とは数え4度目のタッグ、いまだに馬券内を外したことはありません。意外と人気しなさそうなので、ホープフル制覇の時のような激走に賭けてみても面白いかもしれませんね。

🏇シャンパンカラー🏇

昨年のNHKマイルカップ覇者が、8か月の沈黙を破りまさかのダートGⅠ参戦です。
22年デビュー時の新馬戦。戸崎騎手の鞍上で勝利しましたが、この時すでにダートへの転向が言及されていたようです。その後GⅢ京成杯6着、GⅡNZT3着を経て、重馬場のNHKマイルカップを9番人気から制しました。次走安田記念を14着で終えると長期休養、秋のマイル戦は体調不良で見送っていました。8か月となる休養期間を経て、初ダートGⅠでどこまでやれるのでしょうか?
シャンパンカラーは先述のドゥラエレーデと同じドゥラメンテ産駒、東京ダートマイルへの適正は高く、近年ではヘニーヒューズ産駒に次ぐ高成績を残しています。母メモリアルライフはあまり馴染みがありませんが、ミスプロのクロスを内包しており、ダートマイルへの適正はそれなりに窺えます。
一週前追い切りでは内田騎手を背にエンジン全開、6ハロン80秒8ー11秒1の猛時計をマークしました。最大の課題だったゲートの特訓も入念に、初ダートに合わせ砂を被る練習まで行い、陣営側にもかなりの工夫が見られます。
とはいえ、やはり長期休養明けからのダートGⅠへの挑戦は、かなり高難度のミッションと言わざるを得ません。おそらく今後の海外挑戦を見越してのことなのでしょうが…。
しかし今回のメンバーの中では、実績・血統・潜在能力といった点で決して見劣りしていないと思います。そして鞍上のベテラン内田博幸騎手は、かつてサクセスブロッケン、ノンコノユメでこのGⅠレースを制覇しています。…なんとなく波乱を呼びそうな今回のフェブラリーS、芝マイルでみせた"最上級の輝き"を再び放てば、より一層面白くなるでしょう。

終わりに

以上がフェブラリーSの攻略noteとなります。今回は今年1発目のGⅠ特集ということでかなりのボリュームになりましたが、最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
混戦模様のレースということで、本来であればまだまだ解説したい有力馬はいるのですが、現在16日午前4時、このくらいにしておきたいと思います笑
少しだけ追記しますが(するんかいw)、岩田望来騎手鞍上のキングズソード。前走東京大賞典は存外な結果でしたが、昨年JBCを制した実力に間違いはないでしょう、人馬共に得意の外枠を引けば一発あってもおかしくはありません。
また昨年、一昨年と好走をしているレッドルゼルですが、リピーターの好走が目立つのは先述した通り、8歳を迎えた今回も十分好走の目はあると思います。
最後に前走根岸S組、中でもタガノビューティーはそこそこ人気を集めそうですが、今回はあまり期待していません。近年前哨戦である根岸Sからの直行が、好成績を収めていることは間違いないですが、直近10年を見ると走破タイム1分22秒台がほとんど。今年は展開がスローになってしまったとはいえ1分24秒1でした。ましてや勝ち馬のエンペラーワケアら上位3頭が未出走となれば、大きな期待はできないでしょう。

主役不在の混戦GⅠになりそうな今年のフェブラリーS、本命が来るか穴馬が波乱を呼ぶか…。
どちらにせよ今年初のGⅠレース、存分に楽しみたいですね。
ではまた…。


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