見出し画像

GⅠジャパンカップ


序文 「未来の中に生きる」


いきなりだが問題。
1981年創設「第1回ジャパンカップ」優勝馬の名前は?


この問いに即答できる方がいたとすれば、古参の競馬ファンか余程の競馬オタクのどちらかだろう。はたまたその両方か…。

正解は「メアジードーツ
あまり聞き覚えのない馬名だがそれもそのはず。
メアジードーツは、母国アメリカでもさほど活躍をしていないマイナーな牝馬だったからだ。
この、本調子とはいえない牝馬の、東京芝2400mコースレコードを叩き出しての勝利は、当時の日本競馬界にそれは大きな衝撃を与えた。
「このままでは永遠に、日本馬が勝つことはできない」
日本が世界に誇る国際GⅠレース、第1回は暗澹として始まったのだった。

そんな憂鬱な思いを一蹴したのが3年後の第4回大会。
10番人気で出走したカツラギエースは、国内外の有力馬を抑え見事な逃げ切り勝ち。日本馬に初めての勝利をもたらした。一度も先頭を譲らない力強い走りには鞍上・西浦勝一の「このままでは終われない」という気持ちが込められているようだった。
日本競馬関係者と競馬ファンは、世界のトップに対し溜飲が下がる思いだったろう。

時は流れ1999年第19回大会。「欧州最強」モンジューを筆頭にやって来た強豪たちを迎え撃つ日本勢。
結果は前年のダービー馬が勝利を飾った。TV実況はゴールの瞬間絶叫した。
「やはり日本総大将、スペシャルウィークが勝ちました!」
鞍上武豊は初のジャパンカップ制覇。多くの競馬ファンが涙を流した、歴史的名場面である。

そして2023年。競馬ファンの話題は目下のところ「どの日本馬が勝つか?」である。
イクイノックス、ドウデュース、タイトルホルダー、リバティアイランド…。外国からの刺客の名前を挙げるファンも予想家も殆どいないだろう。

いつからだろうか?
日本馬が外国馬を圧倒し、勝つのが当たり前になったのは?

今回で第43回大会。今日に至るまでの道のりの中に調教師、騎手をはじめとした多くの競馬関係者の辛酸、研鑚があったことを想像するのは難くない。

悔しい気持ち、勝ちたい思い、そこから始まる努力。

その努力こそがいつの日も未来を切り開き、
憧れた未来はいつしか、勝つのが当たり前の日常に変わっていった。

そして未来はこの先も変わっていくだろう。
いつか日本の馬があのロンシャンの、あるいはケンタッキーの、ゴール板を先頭で横切る日を夢見て…。

僕らは今、誰かの思い描いた未来の中で生きている。

「第43回国際GⅠ競争 ジャパンカップ、まもなく出走です。」

第4回大会優勝カツラギエース。
JCを逃げ切ったのはこの馬と03年タップダンスシチーだけ


「イクイノックスに勝てるのは?」

イクイノックス
4歳牡馬・キタサンブラック産駒 栗東・木村厩舎 鞍上・Cルメール

秋の大一番、ジャパンカップです。兎にも角にも今年のJCはイクイノックスに尽きると思います。
海外からの招待受諾が仏のイレジン1頭に反して、国内は有力馬がそろい踏み。3冠牝馬リバティアイランドを筆頭に強豪がひしめいています。
そんな中にあっても1番人気はやはりこの馬になるでしょう。
今更説明不要ですが少しだけ。昨年の天皇賞秋からGⅠを5連勝中。敗戦したクラシック2戦も2着と抜群の成績。昨年の秋天でみせた末脚、ドバイで見せた逃げ、宝塚記念の捲り、と脚質も自在。現役最強というより、長い日本の競馬史においても「最も理想的なサラブレッド」と形容してもいいかもしれません。まだ4歳馬で更なる成長もあるかもしれませんが、今回がラストランの噂も…。いずれにしろ優勝最右翼なのは間違いなく、今回のnoteではイクイノックスに勝てるとしたら…?をテーマに必須条件と3頭の有力馬をピックアップしていきたいと思います。最後まで何卒お付き合いください。

追記:お金の話になりますが、昨年に続き優勝賞金が1億増額で5億円になりました。さらに指定海外競争の勝ち馬には報奨金でプラス200万ドル、というルールが適応されるため、ドバイシーマC勝ちのイクイノックスが1着になった場合約8億円の優勝賞金が贈呈されます。他の馬と比べてもモチベーションが3億円分多いです(笑)。陣営・騎手にしてみればこれはやはり魅力的な話だと思いますので、参考までに。

「打倒!イクイノックス 必須の5か条」

今回、現役最強馬を倒すために必要な5項目をあげました。
早速見ていきましょう。

歴代優勝の名馬たち。JCでは馬の「格」も重要に

・GⅠ勝利馬である

8大競争ではないものの、格式のある国際GⅠ。やはりGⅠでの戦績がものを言います。過去を振り返ってみると歴史的な名馬が多数。
ここ10年での非該当馬は17年シュヴァルグラン、22年ヴェラアズールですが、この2頭にはノーザンF生産馬で、短期免許の外国人騎手が騎乗している、という共通点があります。

・父牡馬が日本ダービーを連対している

クラシックディスタンスと呼ばれる東京芝2400mでは血統も重要。過去10年非該当馬はロードカナロア産駒のアーモンドアイが2勝していますが、それ以外の優勝馬は父が日本ダービー、もしくはジャパンカップで好走をしている、良血統の馬が多いです。

・ジャパンC、日本ダービー、オークスのいずれかに出走

昨年覇者のヴェラアズールは昨年の出走時にはこの条件を満たしていませんでした。
昨年の優勝は本当に偉業だと思いますが、正直メンバーがそれほど揃っていなかった、という一面は大きいとも思っています。基本的には東京2400mでの経験は重要になってくると思います。

・クラシックレースでの実績がある

舞台は世界でも指折りの最高峰レース。世代の頂点を争っていない馬にチャンスはありません。過去10年9頭に該当で非該当馬はやはりヴェラアズール。クラシック経験なしの馬に白羽の矢を立てるのであれば、JCでの好走、もしくは国内GⅠかGⅡでの勝利経験は最低でも欲しいです。

・前走及び今回5番人気以内

過去10年全馬に該当の必須条件です。「異端児」ヴェラアズールでも外国人騎手に乗り替り人気していました。前走で仮に負けていたとしても今回人気を集めるような実績馬でないと厳しいでしょう。19年の勝馬スワーヴリチャードは前走で7着に敗戦。それでも当日は5番人気でした。

以上が現役最強馬であるイクイノックスに勝つための5か条になります。
ご自分の推している馬に当てはめてみて、チェックしてみても面白いかもしれないです。それでは上記条件を全て満たしている、森タイツ的対抗馬を3頭ピックアップしていきたいと思います。

「勝利を狙う、3頭の刺客」

上から
リバティアイランド 3歳牝馬 栗東・中内田厩舎
ドウデュース  4歳牡馬 栗東・友道厩舎
タイトルホルダー 5歳牡馬 美浦・栗田厩舎

・対抗筆頭は3冠達成の「お嬢さん」

「打倒イクイノックス」。まずはリバティアイランドを挙げたいです。当日はおそらく2番人気になるでしょう。
先日の秋華賞を制し、史上7頭目の3冠牝馬に輝いたのも記憶に新しいですが、新たな目標を古馬との大一番に設定。チャレンジャーとして出走します。
データ上有力視したいのが、秋華賞勝ち馬の次走がJCだった時の成績【2-1-2-1】で、
これを3冠牝馬に限定すると【2-0-1-0】と
かなり好走しています。これには斤量が有利だから、という明確な裏付けがあります。
決め手勝負になったときは軽斤量馬が有利なのは言うまでもなく、かつてのオルフェーブルvsジェンティルドンナの叩き合いのように3冠牝馬としての矜持を見せてもらいたいです。
秋華賞の勝ち方に対して不満を抱く方も少なくないようですが、鋭い末脚で迫ったマスクトディーヴァも見事でしたが、筆者は着差以上に2頭の力量差を感じました。危なげなく勝ったリバティアイランドにまだ余裕を感じることができたからです。
JC直前の記者会見では川田騎手と陣営側から「ここを目標にしてきた」という主旨の発言が聞けました。
決して簡単なレースにはなりませんが、唯一にして最大の逆転候補がこの一頭だと期待して印を打つ予定です。

・誰が為の”クラシックディスタンス”

逆転候補の2頭目は、イクイノックスを負かした2頭のうち1頭、22年ダービー馬ドウデュースを候補に挙げます。
引き締まった筋肉質な馬体をみてやはりマイラー向き、とジャッジする方も多いと思いますが、瞬発力だけでなくそれを持続させるだけのスタミナも擁している点が本馬の魅力です。
血統背景を探ると、父ハーツクライもまたこの国際GⅠに挑んできました。結果は3度挑戦して4歳時の2着が最高…。ただ産駒ではスワーヴリチャードとシュヴァルグランが勝っています。
また管理の友道厩舎はそれこそ昨年のダービーに象徴されるように東京芝2400mで抜けた成績を残してきています。過去5年厩舎の当該コースの成績は80戦以上あり連対率は32.5%を記録しています。これはライバルの木村厩舎、中内田厩舎を上回る実績です。
前走天皇賞では当日の乗り替りがあったことと、そもそもが長期休養明けというリスクも抱えていました。本来は叩き良化型。最強の敵を一度は下した舞台でもう一度輝きを放てるか…。見限るには早すぎる有力馬だと思います。

・主役の座へもう一度、今復活の時

最後の一頭にタイトルホルダーを挙げます。
今思えば昨年の春競馬、主役は間違いなくこの馬でした。
クラシックはスターズオンアース、ジオグリフ、そしてドウデュースがそれぞれ戴冠を果たしたましたが、古馬GⅠにおけるタイトルホルダーの活躍には及ばなかったように思えます。日経賞、天皇賞春、宝塚記念と立て続けに他馬を圧倒した走りを見せ「現役最強」と呼ばれました。
凱旋門賞の敗戦から調整に失敗し、今年の天皇賞春でまさかの競争中止。
再起を図ったオールカマーでは好走を見せるも2着と。ライバルたちに比べると現在のタイトルホルダーが見劣りしてしまうのも仕方のないことかもしれません。
また「専用機」と言われるほど阪神競馬では無類の強さをみせますが、今回の東京2400mは5着に終わったダービー以来の出走で不安が残ります。
しかしながら、この馬の最大の武器はペースメーク能力。自分自身で競馬を作ることができます。
昨年のダービーは前半58.9秒とかなりハイペースでした。結果ドウデュースとイクイノックスの叩き合いに向いた展開が生まれてしまいました。今回のJC、本馬が思い切って主導権を握ることができれば、前残りのレースになる可能性もゼロではないと思います。
怪物を倒すことができるのもまた怪物。
数々のドラマを生んできた東京芝2400mで奇跡の復活劇となるか。期待しましょう…。

ここまで挙げた3頭にはそれぞれに異なる長所が備わっていると思います。出方を伺う、マークする、という単純な戦法ではなく、己の競馬を突き詰めた先に勝利への活路が生まれるのではないか。そんな気がしています。
各馬の鞍上には恐れず大胆な走りを期待したいですね。

そして、どのような展開になるのか始まってみるまでは判りませんが、世紀の一戦になればと、今から胸を高鳴らせています。

終わりに

以上がジャパンカップ「打倒!イクイノックス」の記事となります。他にもビュイック騎手騎乗のスターズオンアース、稀代の逃げ馬パンサラッサ、競馬王国からの刺客イレジン等、面白そうな馬が並んでいます。
JCといえど、これだけの豪華メンバーが揃うことはなかなかないでしょう。
1番人気イクイノックスの人気・実力は揺るぎなく、今回は馬券的な妙味はあまりないかもしれません。穴馬に思い切って賭けるもよし、馬券は控えめに観戦を楽しむもよし、人それぞれに楽しむのが競馬ですが、この記事が読んでいただいた方の予想に少しでも参考になれば、素直に嬉しいです。

今回もかなりの長文になりました。最後まで読んでいただいた方、本当に感謝です。
このnoteは、レースの結果に関係なく無料で続けていくつもりです。
また馬券予想だけでなく、競馬に関する「読み物」としての力をつけていきたいと思っています。少しでも琴線に触れる方がいたら、いいね、お気に入りを何卒お願いいたします。
…ではまた。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?