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words

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時に詩のようであったり、時に超短篇のようなコトバを集めています。
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ツブヤキハナビ

きみと見上げた あの夏の花火は
綺麗に夜空を彩って
あっという間に散ってしまったね

それから次の花火が上がるまでの
わずかな間に
きみは『さよなら』を呟いたよね
聴こえないほどの小さな小さな呟きだったけれど
ぼくには確かに聴こえたよ

いつかぼくに言うための
台詞だったってことに
気づいたよ

金魚すくい

金魚すくいのポイが破れた瞬間、
この恋は叶わないと気がついた。

summer and winter

ぼくがきみを 夏へとつれだすから
きみはぼくを 冬からつれだしてよ

思い返せば

思い返せば
最初から不意を突くのが
上手な人だったね

だからさっき
「さよなら」を突然 言われても
そんなに驚かなかったよ

思ったのは
「最後まで不意を突くのが上手な人」
ただ それだけ

次の不意はないんだな、って
ただ それだけ

教えて

ねぇ あの時「好きだ」と
言ってくれなかったのは
ざんざ降りの雨だったから?

それとも
私が違う誰かを好きでいることに
気づいていたから

「好きだ」と言ってくれていたなら
今日は違う一日になっていたのに

バカだね あなたは

ポケットの中には

そのとき、ぼくらは
ビー玉みたいに恋を転がしては
ただ 笑い合っていた

それから、ぼくらは
おはじきみたいに気持ちをはじいては
ただ ふざけ合っていた

あれが恋というものならば
そこでおしまいにすればよかったのに

やがて、ぼくらは
愛というツールを手に入れた
とても便利で気持ちがよくて
よく 持ち歩いていた

「いつかは別れがくるものよ」
きみが好きだという作家の小説の
あてにならないフレイ

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七夕に、バタバタ。

人もまばらな空港に向かうJRの中で、小さく声に出して呟いてみる。
「よりによって、なんで今日なんだよ…」
仕方ない。北海道では、七夕と言えば8月7日が“標準”なのだ。
だから誰も意識していない。気にもしていない。
ただの7月7日。
けれども彼女、そして自分にとっては違う。
七夕は7月7日。
搭乗する飛行機は新千歳発羽田行の最終便。そこから乗り継ぎを重ねて、目的の街へ着く頃には日付がもう変わっている

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