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【所感】2023年度特定行政書士考査について

先日、2023年度の行政書士試験が行われたそうで、受験生の皆さまは大変お疲れさまでした。
私が受験したときは、記述の採点次第で合否が決まるという状況で妙にソワソワしていたのを覚えています。

行政書士試験に先立ち、行政書士界隈では特定行政書士法定研修の考査が行われておりました。 研修費用が8万円かかる(テキスト代・受験費込)ので、とりあえず支払ってしまったからには合格せねばと焦る気持ちでしたが無事なんとか考査に合格することができました。

備忘録的にというか、今後どこかの誰かの参考になればと思って考査受験の所感をなんとなくまとめています。

簡潔にまとめると「行政書士試験を受けてすぐに特定行政書士の研修・考査を受けるのをオススメする」の一言に尽きます。(先輩の先生方が口を揃えておっしゃっていたのは正しかった・・・)
行政法分野については行政書士試験そのままの知識が問われる問題が多くあるので手元に参考書が残っていれば役に立つかもしれません。(法改正や最新判例には要注意ですが)


2023年度の特定行政書士法定研修・考査について

2023年度の特定行政書士法定研修

研修費用:8万円(テキスト代・考査受験料込み)
申込受付:4/3(金)~6/23(金)
研修受講:8/1(火)~9/20(火)にオンラインで各自視聴【全18時間】
考査実施:10/22(日)14:00~16:00 【全国一斉実施】
※考査開始から1時間経過で解答用紙を提出して退室可能となりますが、終了時刻まで残っていれば問題用紙を持ち帰ることができます。


合格率

2023年度の合格率については65.8%と例年と同程度でした。
自己採点結果が20/30と、ギリギリと言われているラインで合格できたので例年通り合格点は6割前後だったのではないかと思います。


特定行政書士考査のココが厄介

過去問が公開されていない(2023年度から公開されるようになりました)

過去問が公表されていないため、「過去問をひたすら回して勉強する」ことができません。(※)
このような学習方法に慣れている方にとっては全てが手探り状態で不安を抱えたまま突き進むことになります。(私もそうでした。)
過去に問われた論点・条文等については、後述する参考書においてまとめられているため、試験で問われる重要条文については把握することができます。
※2023年度から問題・解答が公表されるようになりました。
行政書士登録をしていれば日行連の会員ページから2023年の問題を閲覧することができます。

考査(試験)と研修内容があまり直結していない

特定行政書士法定研修は全18時間のカリキュラムで行政法全般(不服申立制度の実際の流れや行政事件訴訟法など)や、要件事実・事実認定論、行政書士倫理などを学習するものとなっています。(2023年度は事前録画された講義をオンライン上で受講)
一方、考査問題については、研修でサラっと流されがちな法令・条文の内容を問うものが多く、実例や手続きの流れなどを問うものは殆ど見受けられませんでした。 馬鹿正直に研修資料だけを使用して対策しようとすると足元を掬われる恐れがあります。


使った書籍・参考書

実際に使ってみて役に立った書籍・参考書について3段階で評価しています。
日行連中央研修所サイトでは追加の講義動画が購入できるようですが、私は買いませんでした。

★★★:役に立った、めっちゃオススメ
★★☆:対策に不安がある人にはオススメ
★☆☆:時間があれば読んでおくといいかも

【★★★】特定行政書士法定研修考査 合格対策 要点解説と模擬問題(第2版)(税務経理協会)

おそらく唯一の特定行政書士考査の参考書?めちゃくちゃ役に立ちます。
2023年7月に第2版が刊行され、最新の内容にバージョンアップされています。
過去に問われた条文や論点が出題頻度と共にまとめられているため、後述する行政書士試験六法や要件事実論の解説書を併用してチェックすることをメインに勉強をしていました。
また、要件事実・事実認定論についても簡潔にまとめられており試験前に読んでおくと良い対策になります。


【★★☆】行政書士試験六法(早稲田経営出版)

条文の確認だけであればeGovで十分なのですが、行政書士受験時のものを手元に残していたので使用しました。
おもに**「特定行政書士法定研修考査 合格対策 要点解説と模擬問題(第2版)」でチェックした重要条文の確認用**です。
条文ごとに、判例や行政書士試験の過去問がまとめられているので、条文チェックと問題演習が一度にできる点が非常に役立ちました。
考査で問われる行政法の知識は行政書士試験と同程度だと感じたので問題集としてもオススメ。


【★★☆】行政書士のための要件事実の基礎 (第2版)(日本評論社)

特定行政書士法定研修を申し込むとテキストの一つとして郵送されてくる事実認定・要件事実論の入門書です。
時間をかけて一通り読んでおくのがベストですが、時間がない場合は考査で頻出のテーマ(弁論主義のテーゼ、主要事実・間接事実・補助事実、証拠能力と証拠力の違いなど)と、類型別の要件事実(売買、消費貸借、動産・不動産明渡など)だけでも読んでおきましょう。


【★★☆】<特定行政書士プレ研修>確認テスト①(行政法分野)

日行連中央研修所WEBサイトで購入できるオンライン問題集その1(1,100円)
問題数30問、本番に近い形で出題されるため、問題演習の量に不安があれば購入をオススメ
解説は一切無いため、わからない部分はすべて自分で調べる必要がある。 (逆に言えば調べるところまでしっかりやれば知識は身につくと思います。)
全問正解してしまうと再回答できなくなるため、繰り返しチェックしたい場合は出題ページをコピーして保存しておくのをおすすめします。
自分は解答・解説を加えたものをテキストエディタで自作して繰り返し読み直しました。

【★☆☆】<特定行政書士プレ研修>確認テスト②(要件事実分野)

日行連中央研修所WEBサイトで購入できるオンライン問題集その2(1,100円)
問題数30問、事実認定・要件事実分野のみ出題されるものとなっています。
こちらも解説は一切ないため、わからない部分は自分で調べる必要があります。
考査対策においては、要件事実論の出題数自体は全30問中5~6問程度なので、購入の優先度はあまり高くありません。問題演習量に不安があれば購入を検討する程度でいいと思います。

【★☆☆】司法書士 山本浩司のautoma system (8) 民事訴訟法・民事執行法・民事保全法

司法書士試験独学受験生のマストオブマスト、オートマシステム。
手元にあったので民事訴訟法の章を一通り読み直しました。要件事実の基本部分についてわかりやすく解説されています。
要件事実論の対策については、上で挙げている「特定行政書士法定研修考査 合格対策 要点解説と模擬問題(第2版)」、「行政書士のための要件事実の基礎 (第2版)」があれば事足りるとは思いますが、話し言葉でわかりやすく解説されていますのでどうしても理解が進まないような場合にはオススメします。



スケジュール・勉強方法

2023年度は10/22に考査実施とのことで、考査対策としての勉強は10月に入ってから開始しました。(研修自体は9月中頃までにオンライン受講(視
聴)を完了する必要があります。)
勉強期間としては3週間、1日の勉強時間はだいたい30分~1時間程度の学習で合格することができました。

まずは下の2冊を使用して、頻出の重要条文をチェック
「合格対策」には模擬問題もついているので問題集として数回解き直しました。

  • 特定行政書士法定研修考査 合格対策 要点解説と模擬問題(第2版)

  • 行政書士試験六法

試験日1週間くらい前になって、なんとなく問題演習の量に不安があったので「<特定行政書士プレ研修>確認テスト①、確認テスト②」を購入する。(日行連中央研修所WEBサイトにて)
テキストエディタで問題を一覧にまとめ、紙に印刷し、「解く&誤っている選択肢を正文化」を繰り返して知識の定着を図った。

なお、要件事実論については「合格対策」と、手元にあったオートマシステムでざっくりと見直す程度でした。

行政書士試験で学習した行政法の知識が残っていればそれほど難しくはないと思います。 行政法と行政書士倫理の部分で合格ラインをクリアする意識で臨みましょう。(ぜひ行政書士倫理の部分は満点を取ってください。)


所感

考査自体は、合格率6割強というところからも表れていますが、「対策すれば難しくはないが、全くなにもしない場合は合格は厳しいかな」という感じです。
現状、行政書士業として行政不服申立を行う機会は現状そこまで多くはないようですが、元行政職員の感覚として「スキームの組み方次第だけど申し立てでメシ食っていけるくらいの可能性はあるんじゃないかな~」とも思います。行政庁を正して住民の権利利益を守るという社会的な意義ややりがいもありそうですし。
「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保する」ために行政書士がどのような形で貢献できるのか今後も考え続けなければなりませんね。

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