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レトロ座 2017年12月 2018年2月

①影なき狙撃者 (1962年)
②三人の狙撃者 (1954年)
③群衆 (1941年)

すべてTSUTAYAでレンタル。①②はフランク・シナトラ主演の犯罪もの、
③はゲイリー・クーパーとバーバラ・スタンウィックのロマコメである。
前から気になっていてよく混同していた①②をやっと見分ける事ができ、
狙撃が物語のテーマという共通点があるものの、二作は全く色合いの違う犯罪映画だと解った。①でシナトラは狙撃者ではなく狙撃を止めようと奔走する人物を演じている。②の場合、とある郊外の家庭に押し入り、その家族を人質にとり窓に狙撃銃を据えて列車の停車時に大統領を暗殺せむともくろむのがシナトラである。タイトルが三人の狙撃者と言っても、残りの二人はシナトラの子分なだけだったのは残念。三人三様の狙撃の緊張感を期待していた自分は拍子抜けだった。一方アメリカの良心をまとう保安官役のスターリング・ヘイデンは途中で腕を撃たれて三角巾姿だしシナトラに存在感で負けているのも脱力ポイント。
①はシナトラの元部下が大統領候補者を撃とうとする筋書きだが、朝鮮戦争下の東側による米兵への洗脳という恐ろしいテーマが隠されている。それを背景にジョン・フランケンハイマー(ドキュメンタリー色の濃い作風で知られる監督)が人間の愚かさや悲哀を重厚に描いた。なお偶然とはいえ【影なき狙撃者】の公開翌年にはケネディ大統領が暗殺されている。あの事件が永遠の謎であろうとする限り①②の影響を否定しにくいのと様々の憶測、邪推は消えないんだろうと思った。いずれにしてもシナトラもそのほかの出演者も鬼籍に入って久しい。
③の監督は【毒薬と老嬢】のフランク・キャプラ。バーバラ・スタンウィックは新聞社のライター、ゲイリー・クーパーは無職の元野球選手を演じている。センセーショナルな偽りの記事を書いた女と、彼女にプロデュースされ社会的な注目を集める男の対比が面白い。
①②③いずれもそれなりに見どころのある良い作品だけれども、この頁で特筆したいのは脇役ジェームズ・グリーソンの存在だ。【三人の狙撃者】でシナトラ率いる狙撃グループに家をアジトとして占拠されるお爺さんを演じていて、狙撃計画を憎みながらも壊れたテレビの復旧に苦心しているところが印象に残った。
その翌年に観た【群衆】ではバーバラ・スタンウィックの上司でフェイクニュースを本物にせよと指示する編集者役だった。偶然の再会に驚いていると、wikiには【毒薬と老嬢】にも出演しているというから再度観てみるとラストに現れる刑事が彼なのだった。ここまで来ると彼が助演する他の作品も観てみたい気がする。