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Ref:rain

 チルなミュージックと共に読書をするのも悪くないが、雨垂れの音を聴きながら本を読むというのはそれはそれで別の趣深い味わいがある。

 もともと雨でテンションが下がる方ではない。むしろ晴れている時の方が「こんなに天気が良いのに何も外出の予定がない」という厳然たる現実を突きつけられて鬱屈とした気持ちになる。雨ならばどこかへ出かけなくとも雨だから仕方ない、という風になる。

 中学生の頃、図書館で借りてきた伊坂幸太郎の『死神の精度』を雨が降りしきる日曜日に読んでいたことを覚えている。あるいは、小学生の頃に読んだ『デルトラクエスト』の記憶……下手をすればもう20年近く前の話だ。

 あの頃はよかった。余計なことを考えずに済んだ。数年後、ここまで心を病んだ人間になるとは知らずに……

 雨音は追憶を呼び覚ます。


おわり

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