退社することにしました(2)

妻からの少し待って

自宅から単身赴任先に帰り、やはり自宅を出るときの物悲しさは今までに経験した事のないような胸の痛みで、悪阻で苦しむ妻を置いて自宅を出るのは本当につらい事でした。自宅で妻と話したときは、後悔しないならいいんじゃない。という僕の選択を後押ししてくれるものでした。単身赴任先へ戻る新幹線の中でもいろんな思いが頭の中を駆け巡り、辞めると決心したものの、まだ一時の気の迷いではないかとか、家族をどう養う。産まれてくる新しい命を守れるのか。など、ビールを飲んでもまったく酔わない時間でした。

単身赴任先のアパートに付いてから、妻から「せめて安定期に入るまで待って欲しい」とのメッセージが届いていました。産まれてくる赤ちゃんや今後の生活が不安なのは当然です。辞めると言った僕も不安です。先延ばしにしても何も解決できないし、やはり一度気持ちが切れるとどう職場に向き合っていいのかも分かりません。ただ妻の気持ちが大切なので、もう少し考えようと返信して眠れない夜を過ごしたのでした。

翌朝、妻から不安で眠れなかった。とのメッセージ。今の時期、あまりストレスを妻に与えるのは良くないし、やはり赤ちゃんのことが一番心配になります。家族のことを一番に考えているハズが、家族に一番心配をかけているというこの悪循環。出社前から自分が本当に情けなくなり、少し感情が高ぶり、涙がこぼれてきました。妻に、赤ちゃんに申し訳なくて。なんとか気持ちを立て直して出社できたのはよかったと思います。

上司へ相談

出社後、頃合いを見て上司と会議室に。前半は業務報告と業務指示を受け、雑談をして切り出します。ただ妻の気持ちを最大限尊重したいので、退社する報告ではなく、相談という形にしました。

「こっち異動してきて判明したんですが、実は妻が妊娠しました。不妊治療を何度も何度も繰り返しやっと授かりました。今回は自然妊娠ですが、妻の年齢もあってこれが最後のチャンスとの思いです。絶対に後悔したくありません。今、悪阻で妻の体調が悪く、先日も連絡が取れない事態があり、本当に焦りました。悪阻でトイレに籠っている妻の横で自宅を出るのは本当につらく、妻がこっちに来るという選択肢もあるのですが、高齢出産のリスクもありなかなか踏み切れないのも事実です。今後の推移にもよりますが、私が会社を退社して自宅に戻ることも選択肢としてあり得ます。」と包み隠さず話ました。上司は辞めるなんて言うな。今まで積み上げたものが全くなくなる。私も隣の課に人もいるからなんとかみんなでサポートするから無理はするな。と。ご自身も末の子が高齢出産奥様がご出産されたことや、やはりリスクの観点などの理解をいただいて、いろいろなアドバイスをいただきました。いい上司に巡り合いました。その場はそれで終わり、同じ車で異動する際など少し気にかけていただいているし、忙しい中でも自宅に帰るのに休暇の許可を頂いたりと本当に迷惑かけっぱなしで申し訳ない思いでいっぱいです。

さて、退社する(かもしれない)意向だけは示したものの、僕の心の中では中途半端な状態になってしまいました。辞めるのか続けるのか。妻は相変わらず悪阻が苦しそうです。メッセージでは明るく振舞っているものの、本当はもうしんどくて仕方ないんだろうと感じています。ちゃんと食えているのか、飲めているのか。心配は尽きません。この頃、業務でもいろいろあって本当にしんどい毎日で、夜はほとんど眠れず、朝方は少し感情的になって涙ぐむとか、今までの自分が嘘のようで、こんな気持ちも初めてでもう何もかも嫌になってきていました。

とんぼ返りで自宅へ

週末は輪番があるので赴任先にいないといけないのですが、金曜夜~土曜朝までなら自宅に戻っても問題ないだろうと判断し、自宅へとんぼ返りしました。案外と妻は元気で、駅で合流してイタリアンを少し食べたりしていたので少し安心し、自宅に戻り少し話を続けます。妻はやはり今後の生活は心配になるけど、僕の体調も心配。とのこと。僕自身は妻の顔を見ると頑張らないとな。と思いながらも、切れた気持ちでいつまで持つのか分からないと隠さずに伝えました。あと、妻には言いませんでしたが、たぶん妻の日常は会社から帰ってきたらそのまま布団に包まっているのでしょう。やはりお風呂・トイレ・キッチンなどが。。。洗濯物もそうです。私が傍にいれば全部するのにな。。。と思いますが、明日の朝には赴任先に帰らないといけません。妻は一週間の疲れと体調不良で早々に休んだので一人で少し考えつつ、また眠れぬ夜を妻の横で過ごしたのですが、明け方に凄い寝汗で目が覚めました。額からダラダラと汗が流れ、シャツにも染みができています。こんなのは初めてです。エアコンを少し入れますが、寝汗は止まりません。僕の体はどうなっているのでしょうか。。。

朝になり、相変わらず悪阻で苦しむ妻に見送られ自宅を出て赴任先へ異動します。つらい時間です。新幹線の中でいろいろと思いを巡らせますが、一番ダメなのはこの中途半端な状態を続けていくことだろうとは思いました。ダラダラと勤務先にも妻にも心配や迷惑をかけ続けるのは僕の本意ではありません。早く決着付けないととは思いながらも悩む僕。ほんとツライ。。。

実家から

この時期、実家は農繁期で忙しく、毎年帰省しては手伝っていましたが、今年の夏まではコロナで。今は単身赴任したことで帰省できませんでした。彼岸にもお盆にも帰らないバチ当たりな長男です。実家へ用事がありお袋に電話して少し話しましたが、天候不順で出来が悪いと言っても忙しいことには変わりなく、親父と2人でなんとかやっているとの事。本音は少しでも帰省して手伝って欲しいとのど元まで出かかっているだろうに、心配かけまいと努めて明るく振舞うお袋の声を聞いてまたツラくなってきて、申し訳ない思いでいっぱいです。異動さえしなければという思いです。特にお袋は小さい頃に父(僕の祖父)を亡くし、親父と結婚前に母を亡くしています。小さい頃に稼ぎ頭の父を亡くした母は本当に苦労しています。体の弱い母に仕送りをし、勉強したかったでしょうが定時制高校も中退し働いていたそうです。よく兄弟喧嘩をする僕らを叱るときにその苦しかった時の話をして僕らはいかに恵まれているかを諭してくれました。僕はその母を楽にさせたいというか、笑顔でいて欲しいとずっと思っているので、あまり心配をかけたくないのですが、今の状態は僕の理想とはかけ離れてしまっています。これがまた思い悩む原因の一つでもあるのですが。

これからのこと

退社するとは言ってもなんかズルズルと時間だけ過ぎてしまっています。こうやって誰も見ないところで今考えていること、声に出して言いたい事を文章にしてみると、少し自分の考えが整理された感じがします。今までは感情の波があって、何ともないときは何ともないのですが、少し考えると底なしに不安になって涙が出てくるような事が多く、自分でもなんかアンバランスで大丈夫かなと思うときがよくありました。まともではない状態で悩むのも負の連鎖なのかもしれません。ただいったん気持ちが切れてしまっていることも事実で、このまま仕事を続けても何の解決にもならず、アンバランスな状態が延々続くのもつらい。やはり大きいのは単身赴任をしていると出産前後に妻の傍にいることはできないし、産まれてからも単身赴任で赤ちゃんの成長を毎日感じられないのは僕の思い描いていた家庭像とはかけ離れています。お袋や親父にも孫は抱いて欲しい思いもあります。そう考えると結論は一つしか無いように思えますが、退社後の生活を考えると戸惑うのが本音です。この記事を書いている時点ではまだ迷っている僕ですが、なんにせよ自分にも妻にも会社にも家族にも一番良くない事は現状のままでダラダラと迷い続けることだと思いますし、やはり一番に考えないといけないことは産まれてくる赤ちゃんの事を一番に考えないと。

それは分かっているんだけどねぇ・・・・

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