初めて手を繋いだ日
6月、夜の公園。君が友達に戻りたいと言った日。
つまり、別れ話をした日。彼女最後の日。
最後のお願いをした。
「あのさ...手、繋いでくれん?」
君が私と手を繋いだくらいじゃ揺らがない人だと分かっていたから。
最後の想い出が欲しかったから。
手を繋げば心も繋がると思ったから。
だから。そんなことを言ってみた。
そっと重ねて、ぎゅっと握る。
繋いだ手は思ったより温かった。私とはそこまで大きさが変わらないけれど、分厚くて、ごつごつしていた。
手を繋いだのは、これが初めてだった。
初めて手を繋いだのは、別れ話をするときだった、なんて、なんかエモいなぁと思う。
夜の公園で、まだ大好きな彼氏と、恋人最後の日、初めて手を繋ぐ。そんな、非現実的で現実的な時間が、幸せだった。本当に。
「ありがとう」
最後に言えてよかった。
「じゃあね」
そっと手を離す。寂しい。
私の右手に残る温度が、匂いが、私の胸を苦しめた。
その瞬間に思った。まだ好きだなぁって。嫌だな、もっと一緒にいたかったな、って。
もう、遅いのに。