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2023年11月に読んだ、おすすめの本 その2

11月に読んだ本の中で、おすすめの本を紹介する第2回です。今回は、発売済みの『絵本/児童文学/JA文学 等』から5冊を紹介します。

🌟発売済み『絵本/児童文学/JA文学 等』

「よるのあいだに みんなをささえる はたらく人たち」 ポリー・フェイバー 著 中井はるの
 子どもの私が寝てから仕事に出かけるママ。そこから始まり、夜に働いて昼の生活を支える人々の様子が連なって描かれていく。大胆でカラフルな色使いのイラストも、優しい訳文もすてきな絵本。
 NetGallyでは一部のみの公開だったが、出版されてから改めて、幅が28.6cm、高さは29.6cm(こちらはA4版の長辺と同じ長さ)という、変版の大きな絵本で読んだ。紙に印刷された色は、PDFよりも本当に味わいがあるとつくづく感じた。

「ヨルとよる」 あさのますみ 著 よしむらめぐ
 家から出た事がない黒い子猫のヨルは、家で暮らした事がないネズミに誘われて、夜の街に向かう。初めて見る満月、賑やかな夜の大通り…… そのお礼に、ヨルはネズミを静かな夜へと案内する。 文と絵が、素敵にマッチした絵本。
 文を書いたのあさのますみ先生は、声優やナレーター(『浅野真澄』名義)もなさっている、多彩な方。機会があったら、ボランティアでしている「絵本の読み聞かせ」でやってみたいなぁ。

「晴れた日は図書館へいこう 物語は終わらない」 緑川聖司 著
 とうとう6年生になったしおり。今までの登場人物も顔を出す中で、今までよりも大人との関わりが更に深い〈日常の謎〉を体験していく。そして最後に、しおりは自分のやりたいことの第1歩となる『言葉』を書く。それは勿論……
 緑川先生は「晴れた日は図書館へいこう」(児童書版 2003)でデビューし、同年に第2部「晴れた日は図書館へいこう ちょっとした奇跡」(同じく児童書版)も出版。この2冊が 日常のミステリとして評価されて、2013年に表紙を児童書風から現在のものに変えて文庫化。なお、第2部はこの時に副題が「ここから始まる物語」と変わった。そして第3部「晴れた日は図書館へいこう 夢のかたち」が7年後の2020年に出て、とうとう最終巻の本作「晴れた日は図書館へいこう 物語は終わらない」が2023年に出た。足かけ20年、緑川先生、本当にご苦労様でした。

「その本の物語」上/下 村山早紀 著
 子供の頃ふたりが大好きだった児童書「風の谷のルルー」シリーズを、眠り続ける沙綾に読み聞かせする南波。上巻では、「読み聞かせ」という形でその第1話と第3話がそのまま収録それている。その幕間劇でルルーの話にだんだんとシンクロしていくふたり。
 下巻では、第4話と第5話が語られる。さらに幕間劇では、沙綾とこのシリーズとの関わりが……  そして、南波が上巻からずっとずっと続けてきたルルーの物語の「読み聞かせ」は、願いが込った呪文にまで昇華して、2つの世界に架け橋を渡す。
 感嘆すべき発想の「風の丘のルルー」総集編で完結編。ルルーが好きであればあるほど心にグッとくる作品。読み終えて下巻の装画を見直し、このシーンの意味がわかった時には感無量だった。このような素晴らしい形で、改めて「ルルーの物語」を終わりにして下さった村山先生には、本当に感謝の念しかありません。

「コケシちゃん」 佐藤まどか 著
 両親は日本人だがスイス育ちで、今回初めて日本の小学校で体験入学を行う京。彼女と4年生の子どもたちとのやり取り。その中で、文化や生活には違いはあっても優劣はない事や、互いの気持ちを知る大切さを知っていく。そして、個性と協調と主張、その関係を探る群像劇へとなっていく。 国際化の第一歩は、互いを認め合うことからだと感じた。
 和風の書名と装画。その印象とは異なる物語が語られる。でも読み終わった時、スイス育ちの京のイメージが正にこれだった。 イタリア人と結婚し、娘を日本に体験入学させた経験のある著者ならではの、必要感あるストーリーと俊逸な人物造形だった。


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