見出し画像

Rickenbackerの魅力について【仕様とインプレ編】

前回はRickenbackerの歴史について書きましたが、今回は仕様と、自分なりの感想を書いてみたいと思います。

1.仕様
(1)ネック周り

ギターやベースの木材は、主にネックとボディがメイプル、指板はローズウッドです。ギターの指板のフレット数はもともと21で、70年代の後半に24に変更され、それがずーっと続いてたのですが、2024年モデルはまた21に戻されました。ベースのフレット数は今も昔も20。
ギターのネックスケールは、330、360、620といった主力モデルはギブソンと同じ628mm(24.75インチ)、指板のラジアスは254mm(10インチ)です。
なお、超ショートスケールといわれる625は20.86インチ。ジョン・レノンはよーこんなん弾いてたなと思いますが、現在も愛用してる人はたくさんいるので、慣れの問題なのかもしれません。

ギターのネック

ベースのネックスケールは845mm(33 1/4インチ)で、Fenderの864mm(34インチ)よりやや短くなっています。
指板のローズウッドには、なぜか透明のクリアラッカーで塗装が施されます。通常、メイプル指板にはラッカー塗装がされますが、ローズにされることはありません。これはRickenbackerにしか見られない仕様ですが、メリットとしては指板の保湿をしなくていい。ただ、人によっては弾いてるときに違和感があるとして剥がしてしまう人もいます。
指板のポジション・マーク(インレイ)は、機種によりドットかトライアングルのいずれかで、機種によりネックやボディにバインディングが巻かれています。

あと、普段は目に見えない部分ですが、ギターやベースのネックには反りを修正するためのトラスロッドが入っています。有名な話ですが、Rickenbackerのネックにはこのロッドが2本入っています。意味あんの?と思うのですが、もしネックがねじれても修正できるというメリットがあります。ただ、そもそも2本のロッドに触る機会が少ないのでプロのリペアマンでも調整に苦戦する(爆)。
(補足:2022年のモデルからはトラスロッドが1本になったそうです)

(2)塗装
ボディとネックの塗装は年代によって異なりますが、昔はラッカー塗装、2000年代後半から現在はポリウレタン(あるいはポリエステル)で塗装し、UV(紫外線)を当てて一気に乾燥させる手法を取っています。UVで乾燥させると工程の大幅な短縮が可能になるので、実は採用しているメーカーは多いそうです。
かつて使われていたラッカーは他メーカーとは異なっていて、時間がたつとベタついたり、白濁してくる特徴(欠点?)があります。こまめにポリッシュで磨くのが正解なのですが、結局繰り返しになったり、力を入れると塗装面に傷がついてしまうこともあるので、めんどくさがって塗装を剝いでしまう人もいます(現行モデルはその心配はなし)。
ラッカーとポリ、ギターの塗装としてはどちらの音がいいのか?という長年議論されるテーマがありますが、現在のCEOであるJ.C.ホールさんは「塗装で音の違いなんてわかるわけがない」と断言しています。

J.C.ホールさん(現CEO)

(3)ピックアップ
ギターの心臓部とも言えるピックアップは、かつてトースターと呼ばれるものが載っていましたが、1969年ごろから現在のハイゲインと呼ばれる出力の高いものに変更されました。トースターもハイゲインもシングルコイルで、GibsonのP-90やFender Jazzmasterのピックアップに近い構造と言われています。現行のモデルに載っているのはすべてハイゲインで、現在、トースターが搭載されるのは68年以前モデルの復刻版のみとなっています。


ハイゲイン・ピックアップ


筆者はどちらも弾いたことがあるけど、トースターはジャキッとした歯切れのいい音で、パワーが弱くてサステインが短いので、リードよりもバッキングに向いています。例えばBeatlesの音が出したいなら、トースターで間違いないと思われます。本人たちが使ってたのがそれなので。
一方、ハイゲインはもうちょっとロー・ミッドに寄っていて、トースターよりはサステインが向上しています(それでも長いソロを弾くのはお勧めしないけど)。
ベースのピックアップは時期や機種により異なりますが、ジョージ・ビーチャムが開発したホースシュー・ピックアップがスチール・ギターからそのまま流用されたり、トースター・ピックアップをベース用に改造したものだったり、ハイゲインのベース用、ハムバッカー構造のものが載っています。

ピックガードの材質も独特で、ほかのメーカーが概ね塩化ビニール(昔はセルロイド)を使用しているのに対し、リッケンのものはアクリル製で、ボディの1/3くらいの面積を覆う形状になっています。こいつがなかなか衝撃に弱くて、ぶつけたりすると割れます。ちなみに筆者のも割れてます(ええ加減新しいの買おう…)。

 

(4)ブリッジ
ブリッジはオリジナルのものが搭載されていますが、こいつもサステインが短い一因となっています。Rickenbackerのオリジナルのブリッジは、下の金属板と上の台座(弦を乗せるパーツ)の2つに分かれていて、上の台座は固定されてるわけではなく、単に弦が乗っかってるだけの状態です。つまり、弦を外すと台座もポロっと外れます。
リプレイスメント・パーツとして、マスタリー・ブリッジが発売されています。マスタリーはFender JaguarやJazzmasterの弦落ち対策として有名ですが、Rickenbackerのオリジナルのブリッジに弦落ちの心配はまずないので、サステイン向上を目的にしたものと考えると良いと思います。上の台座もボディに固定されるようになっています。メーカーいわく「弦振動が直接ボディに伝わり、サステインを稼げるようになる」そうです。
ちなみに、マスタリーを着けると音は変わります。ハイ・ミッドが強調され、ローの成分がカットされるので、他の楽器とのアンサンブルではよく聞こえるのですが、アンプによってはハイがうるさく感じるかもしれません。
筆者も1本にマスタリーを装着していますが、確かに音は変わりました。個人的には、アンプを繋がない生音はオリジナルのほうが好き(低音が出るほうが聴感上は気持ちよく聞こえるものです)。

(5)電装系
コントロールは3wayのトグル・スイッチ、2ヴォリューム、2トーン、そして5thコントロールと呼ばれる小さなツマミ。ヴォリュームとトーンのノブはGibsonと効果が異なり、音の帯域(トレブルとベース)を調節するためのものです。
そして5thコントロール。これもリッケン独自の仕様です。
何かというと、リッケンバッカーのピックアップは構造上リアとフロントの音量に差がつけられていて、その差を調節するためについてるのがこのツマミ。リアとフロントのハーフトーンを使うときに作動し、ツマミの位置に寄ってはほとんどリアだけに近い音からフロントだけに近い音、あるいはほぼ半々の音まで得ることができる、という仕様になってます。
最初はこれ要る?と思ってましたが、今はめちゃくちゃ触ります。曲によっても触るし、弾く場所(スタジオとかライヴハウス)でも頻繁に触ります。高音や低音を調整するためにヴォリュームのツマミも結構触りますが、トーンはほぼフルで固定です。

そして最後はアウトプット・ジャックですが、前回の記事に書いたので今回は割愛します。

2.使用感
さて、Rickenbackerを10年使った自分の感想なんですが!
(自分はいわゆるセミ・ホロウ構造のギターを使っているので、そのタイプのギター限定での感想です。ご容赦ください)

音に関しては、ボディがメイプルだからかやや硬めの音がします。先述のとおりサステインは短い。チープな音という人もいます。
筆者はセミ・ホロウ構造の360を所有していますが、ボディが薄いからか意外と箱鳴り感は少ないです。箱鳴りがたっぷりあるエレキギターを求める場合は、素直にフル・アコースティック構造(Gretschや他社のジャズ向けのギター)のものや、セミ・アコースティック(例:GibsonのES-335など)を選ぶことをお勧めします。

Rickenbackerは弾きにくいとよく言われますが、それはFenderの楽器に見られるボディバックのコンター加工がないことと、音作りが難しいことがその理由と思います。Fenderのバックコンターは体にフィットするように設計されているので、これは技術者レオ・フェンダーの目の付け所を称賛するほかありません。

音作りに関して言えば、クリーン・トーンはだいたいどんな設定やアンプでもいい音がします。ただ、問題は歪みの音です。低音域がもっさりしていて、他のギターからそのまま持ち替えても全然いい音しねえじゃん、という問題に直面するかもしれません。
これは材とピックアップの構造の問題と思うのですが、筆者も納得する音が鳴らせるようになるまでずいぶん時間がかかりました。EQをいろいろいじったり、アンプやペダルを替えたり。
フィードバックやハウリングが気になる人もいるでしょう。自分は全然気にならないけど、Gretschと同様、ホロウ構造ゆえに避けて通れません。

決して融通の利く楽器ではありません。
ただ、見た目の存在感だったり、一筋縄ではいかないところだったり、独特の魅力を持っているギターだと思います。
じっくり向き合えば応えてくれるギターではあると思うので、もしリッケンバッカーを使おうと思っている人は、根気よく付き合ってほしいなと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?