米ロ、新冷戦に突入か

今日は米ロ関係の動向について解説していきます。

最近、アメリカは中国と新冷戦に突入したという風に表現されます。冷戦という表現は一昔前、戦争には至らないものの、高い緊張が続いていたアメリカとソ連の間の対立関係のことを差していた言葉です。そして、現在の米中関係も同じような状況に陥ってしまっているというのが多くの識者の見解です。

しかし、アメリカは中国に加えてもう一か国と冷戦状態にあると言われています。皮肉にも冷戦という言葉が生まれるきっかけとなった国、ロシアとです。

現在の米ロ関係は1989年に米ソの間で冷戦終結が宣言されて以降、最も険悪な状態にあると言われています。

なぜそのような状態に現在の米ロ関係があるのかを知るためには約30年前に戻る必要があります。冷戦が終わって、ソ連の脅威が消えたことでソ連に対する抑止の一環で誕生したアメリカを主軸とした軍事同盟である、北大西洋条約機構、通称NATOの存在理由は無くなったかのように思われました。しかし、NATOは旧ソ連の衛生国を取り込む形で規模を拡大させていきました。また、冷戦中一回も軍事行動を行っていなかったのにもかかわらず、1999年のユーゴ紛争への介入を皮切りに、多くの紛争に関わるようになりました。そして、このNATOの発展に困惑し、脅威を覚えたのが現ロシアです。ロシアとしては自分たちといざという時に戦争する組織が未だに残っており、且つ冷戦中よりも大きな組織となっていることが信じられず、自らの身が危害が加えられるのではかと恐れるようになりました。

そして、その恐怖心を打ち消すためにロシアも同じく軍事行動を活発化させます。NATOに入る気配を匂わせたグルジアに2009年に介入、2015年には同じくNATO加盟国になろうとしたウクライナの領土であるクリミアを併合し、NATO加盟国が国境と接することがないようにしました。

また、ロシアは軍事的な手段だけではなく、非軍事的な手段を用いても自らの最大の敵対国であるアメリカの力を弱めようとします。2016年の大統領選への介入です。ロシアの見解によると民主党の大統領候補であったクリントン氏はロシアに対して批判的で、もし彼女が大統領となればロシアの国益が損なわれるであろうという見立てがありました。そのため、孤立主義を訴えアメリカの対外関与を弱めることを訴えていたトランプ氏が有利となるような情報を流し、大統領選の結果を左右しようとしました。しかし、ロシアの選挙介入は結果的には多くのアメリカ人が知ることになり、神聖な民主主義のプロセスが侵されたことに憤慨しました。その憤りを受けて、バイデン大統領は強い言葉でロシアをけん制し、新たな経済制裁をロシアに課すことが表すように非常に厳しい態度でロシアに対して臨んでいます。そして、その姿勢も当分は揺るがないと思われます。

東は中国、西はロシアと二つの新しい冷戦に突入しているアメリカは両方を両立させられのか、はたまた中途半端な状態に終わってしまうのか?中国の脅威に直面している日本に住んでいる身として、あまりロシアとの関係をこれ以上悪化させて欲しくないと思ったりもします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?