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旅の思ひ出

 むかしの旅行を思いだした 夜便だったか、成田から飛んだと思う あいも変わらず、格安チケットで連休の合間の日本脱走だ 大好きなタイに向かった 夜便でビールを傾けながら、みんな気怠く到着までのひまつぶしをしている タイ人ばかり、外国人ばかり 英語も少なくなってくる 
 日本語はもう耳に響くことはない ある意味、安心した 仕事柄、相手が挨拶をしてからああお久しぶりですお元気でしたか、と声をかけるルールなので、日本人がいないのは心地よい 声もかけられないし、声をかけずにこちらを見ている人間もおそらくいない お産はストーリーの途中のもので、私と会ったのは一瞬のできごとであり、つぎの王子との物語がはじまっているかもしれない そうなると私は彼女の人生の切り捨てられた部分のひとつなのだ
 到着のアナウンスが流れ、一人で絶句していた スワンナプーム空港につくと言っている チケットを取り出して確認した バンコク、ドムンアン空港 ガイドブックも何も持っていないし読んでもいない、スワンナプームってどこなんだ
 隣のタイ人は私と目を合わせようとしないし、彼にスワンナプームとはどこなのか?と聞けないし答えられてもわからない スチュワーデスが後ろでタイ語でなんか喋っている
 着陸態勢に入った 国内線でトランジットすれば問題ない、はず 涙ながらに到着し、怒涛の流れに逆らわずにいるとバンコクについていた
 出来立ての綺麗なスワンナプーム空港の思い出なのだけど、あのときはドムンアンから新空港になっていると全く知らず本当に焦った 旅の準備は念入りに!