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愛憎

 仕事場の怒涛の出産ラッシュのなかで、最後に産休にはいった子が、何やら雲行きが怪しい
 「お金を貸したらしいのよ」配置のせいもあるが、1年ほとんど顔を合わせていなくて、そんな話は聞いていなかった ボーナスほどの金額を旦那から無心されたらしい
「ウソだと思うわよ」会社でのミスの穴埋めで大金が必要になったらしいが、聞いたスタッフはくちを揃えてウソだという 「個人にお金で請求するわけないわよ、しかもあんな大きな会社よ?」
 みんなからお金貸しちゃダメ、別れたほうがいい、いろんな反応をもらいながら妊娠した もうつける薬はない そこから出産2ヶ月前、やっと入籍した 入籍しないのが最後の抵抗だったのかと、今になると思う
 仕事以外で片親に関わったことがないので、偏見はないつもりだが、彼女の周りはすべて片親だ 夫、夫の家族、自分の身内、3人兄弟すべてバツイチだ 片親なことよりも、家族への不信感にわたしは不安を持っていた 「顔合せしたんですけど、旦那の母親は介護しなくていいですよね?」その義母はリニューアルされたアラサーのギャルだ、介護まで義父と添い遂げるのかは謎である 介護は成り行きだし、あんたすぐ子どもつくるでしょ?育児の手伝い頼むんだから下手にでてなさい、というのは馬耳東風で、誰があんなやつに子どもをさわらせるか!という雰囲気だった
 そして子どもは2ヶ月くらいになるはずだが、誰も面会に来ないらしい そんな風のたよりをきいて、出産一時金は旦那にとられてないといいがなぁ、と若い夫婦の心配をした