人の世は
なんだか久しぶりに小児科にまわされて退院直後に入院してきた子をみていた みれないんなら入院させずに紹介しとけばいいのに、という本音は押し隠している
ママは母乳推進の、できれば完全母乳をめざしていたが、どうもそうならない成り行きに困惑していた それを支えていた
私は母乳はどうでもいいと考えている 軽く見ているんではなく勝手に出るんである、工夫して用意して母乳宗教をやる必要はない 帰ってから子どもが元気ならいくらでも母乳なんか出るのだ
そしてそんなことおかまいなしに翌出勤したらもういなかった 外来にいる母乳教の人に、連絡があるかもしれないのでと対応をお願いした ここのシステムは患者思いではない不便さがある
この母乳教の人は、苦手だ 少しでも吸わせないと出なくなる、それが彼女の根幹にある 多乳で苦労する私の血縁には1ミリも真実とは思えない そしてそんな人のとこにはそういう人が集まる もし連絡があったら、「飲ませないとでなくなるよ」ってやられると思うと、なんかやだなあと思いながらお願いしてきた
マッチポンプなんだよね
母乳が出ない、というのはそのままの意味ではない そのままの意味のときもある そのままの意味なら打つ手はある
もし私が駆け込み婚ですぐに子どもを産んでいたら「こんな仕事なのにお恥ずかしい、おっぱいが出ない体質みたいで」そう言いながら注射で止めて仕事に復帰していただろう 辞めるか続けるか、二択しかない
初孫とかは特にそうだろうが、みんな触りたがる 鬱々とした訴えを聞きながら、「風呂上がりに哺乳瓶の搾乳を飲ませてもらってるあいだに自分のことしてみたら?」など、みんなが赤ちゃんにミルクをあげたい問題の対応をしていく 完璧な母になるために完全母乳にしたいのに、哺乳瓶を使うのか 「みんな赤ちゃんのチュチュて吸ってるとこみたいからね」激昂しそうな母親が破顔して「そうか、みんな触りたいんだ」と納得する 姑は嫁の乳の出が悪いので欠陥品だと罵りながら、嬉々として哺乳瓶を用意する 母乳は母のものでありながら夫のものであり親族のもの 母と子をつなぐなんて軽い言葉ではあらわせない
母乳教の同僚は離婚して一人でこどもを育てている どうやって出してるのか、なぞの診断書で夜勤免除しながら働いて食べている 旦那に働かせればいいのに、そうもいかないんだろうな 不安な気持ちは笑顔でかくした