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不義密通

溝口健二監督の『近松物語』を観た。
私にとって初めての溝口作品。
溝口は私が1年間お世話になった新藤兼人の師匠に当たる。
一度は観なければと思いながら、ようやく観る機会を得た。

これは近松門左衛門の原作による作品でテーマは不義密通。かつてはこの罪を犯すと男女とも死罪になり、家は取り潰し、その主人も罪に問われたとても重い罰だ。

非モテ系の私には不義密通は縁のない罪だ。なにしろ私は片思いになることはあっても両思いにはならない。ましてやセックスは大の苦手と来ている。
だから、いま法律が改正されて再び不義密通が死罪になったところで私は困らない。

男女の中、あるいは同性間であっても一旦愛の炎が燃え上がるとそれを消すことはできない。好いた人と添い遂げるためなら命を投げ出すという人もいる。ここが人間の業の深さであり、弱さではあるが、魅力でもある。

この作品では長谷川一夫が奉公先の主人の妻を愛してしまい、逃避行の末に磔の刑に処せられる。それを宮川一夫のキャメラが心の襞まで写し撮るように描く。

このように、愛し愛される生涯だったら死罪という結末を迎えたとしても満足できるかもしれない。



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