旅行をすると感性は磨かれるのか

私は旅行が好きです。

旅行をするために働いていると言っても過言ではないです。ちなみにカメラも趣味なのですが、そのカメラですら旅行の時にベストショットを納めたいが故に日々練習に勤しんでいると言ってもよい程です。

国内も好きだけど、日本の情緒とは違う海外の国々へ行くのはとてもテンションが上がることで一生続けたい趣味です。旅行期間は5~6日程度が多く、ヨーロッパでもアジアでも旅行期間はあまり変わりません。

主にお盆やお正月などの世間の長期休暇を利用していますが少しでも安くするために敢えて混雑時を避けるので、出発を少し早めたり遅めたりはしているので少しお休みを足す感じにはなります。

さて、表題の「旅行をすると感性は磨かれるのか」について。

私は迷わずYESと答えます。

外構の打合せでお客様の要望案でよく出てくるのが〇〇風のテイストにしたい。というもの。今まで言われたのはバリ風、ギリシャ風、カリフォルニア風、南フランス風、ドイツの石畳風などなどです。

今の時代、ネットで探せばいくらでもそれらは見つかって、それがどんな感じなのかはわかります。が、しかし、写真はあくまでその風景の一部の切り取りでしかなく、Instagramの影響もあり加工もされてて色合いが実際とは違ったり、似たサイズの石などを合せてもやっぱり質感までは写真ではわからないのです。

〇〇風を望むお客様の多くは現地に旅行へ行ったりして、その思い出を再現したくて要望する事が多く、高いお金を掛けて作るのだから私はしっかり再現したいと思っています。もちろん日本では手に入らない素材もありますが、例えば実際はみかげ石のものを砂岩で作ると雰囲気が全然変わるのと同じで、質感を合わすこともデザインをする上でとても大事だと思っています。

なので私の旅行はあまりタクシーなどは使わずとにかくひたすらに歩きます。歩道の石、庭に使っている石、家に使っている石、目地の入り方、色合わせ、街並みの連続性、歩きやすさ、経年変化の様子、工事中の道があったらラッキーでついつい路地裏に入ってみたり…。


私がまだ20代の頃に海外旅行3か国目のドイツへ行きました。その数年後にとあるお客様から外構のご依頼があり、その方は他社様と相見積を取っていることもお話をされていました。要望の中に〇〇風のテイスト等はなく、使い勝手やごく一般的なデザインの中で打合せを進めていましたが内容的には1000万を超える案件でできれば正式にご依頼を頂きたかった物件でした。何度かの打合せを重ね、最終的にどちらの会社にするのかをお客様のご自宅での打合せで決めると言われた時です。(普段は事務所で打合せをしていましたが時間差で各社がご自宅に伺うことで最終プレゼン後に通達という手法を取られました。)

リビングに通され、壁に飾られた大きな1枚の絵を見て私が「ハイデルベルク城から見た景色ですね。」と何気なく言いました。するとその一言でお客様が「村上さんに決める」とおっしゃいました。私自身もびっくりして理由を聞き返しました。それはこういったものでした。

打合せを何度か重ねるうちにプランと金額に大きな差がないことから、選ぶ事を決めかねており後は自分の感覚と合うかどうかで決めようと思っていたそうです。

他社さんは私より前の時間に打合せをしており、その際に絵自体に気づかなかったそうです。私はというと、絵に気づいた上にどこの景色かまでも言った。お客様は話を続け、場所を当てたことが重要ではなく、こういう細部に気づき拘る姿勢が見たかったのだと言いました。しかし場所を当てたのは嬉しかったし驚いた。実はこれは僕が描いた絵なんだよ。そうなると僕の決めようと思ってた基準より+の評価になっちゃうよね。と。

お客様からこのお言葉を頂いて、お客様より嬉しかったのはもちろん私です。こんな事柄は滅多にないことは承知しています。実際に20年近く外構の仕事をしててこんなエピソードは1回しかありません。(笑)

それでも当時は「ドイツに行ってて良かった」と思ったのは覚えています。これが行ったことない国だったら私は口に出したかわかりません。言うまでもなくこれが「海外へもっと行こう」と思ったキッカケになったのは間違いないのです。

海外へ行くのは時間が掛かります。国内みたいな日帰り可能な距離ではないです。どれだけ弾丸旅行にしようとしても1週間前後はお休みをもらいます。そのことを同業の人間にも「時間を掛けてたった数日の観光に意味があるのか」と言われることはあります。だけど、時間がないからこそ移動時間すら勉強になるように目を光らせ楽しんでいます。それが「細部に気づき拘る」姿勢だと思っています。

外構や住宅の購入は普通の人は一生に一度の買い物です。特に新築で家を購入する時はとにかくエネルギーを使います。安く素敵に永く住める家を建てるために沢山調べていろんな所に出向いて勉強します。同じエネルギーを持つプランナーに出会えたらこれほど心強いことはないと思います。そして、同じエネルギーで接しないと失礼だとも思います。

〇〇な家にしたい。と言われた時に、予想の上を行く提案ができるプランナーでありたい。そのために今年も海外へ足を運ぶのです。



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