ワインエキスパートの勉強まとめ(ローヌ渓谷地方②北部AOC)
ローヌ渓谷地方は地理的北部と南部に分類されます。 まずは北部から整理しよう。
(ローヌ渓谷地方の全体像です。画像をクリックすると引用元へ飛びます)
北部
北部地域は、ローマ時代からブルゴーニュ地方とプロヴァンス地方を結ぶヴィエンヌVienneとミシュランガイドの三ツ星レストランを有するヴァレンスValenceの間に位置します。
この地域の地質は主に花崗岩質で、渓谷沿いにあるためぶどう栽培に適しているとはいいがたい程非常に急勾配な斜面が特徴的です。
海洋性気候の影響で温暖ですが、降水量は多めです。斜面が南もしくは南東に面しているため日当たりに恵まれており、赤ワインは力強くて色がしっかり出るシラーが主要品種です。白ワインはマルサンヌやルーサンヌ、ヴィオニエといった品種が栽培されています。またこの地方の一部では、シラーの力強さを和らげるために赤ワインにも白ぶどうが用いられています。
北部AOC
北部には13のAOCがあります。多くはローヌ渓谷の右岸に位置しています。名前の由来が似ているところがあるので併せてご紹介します。
●右岸側
コート・ロティ Côte-Rôtie
ローヌ地方赤ワインの銘醸地その1。コート・ロティとは「焼けた丘」という意味で、実際に日照に非常に恵まれている。生産可能色は赤で品種はシラーが指定されているが、白のヴィオニエを20%までブレンド可。さらにブリュンヌ(褐色)の丘がある北側の土壌は鉄分やシリカが含まれていて力強いワインが、ブロンド(金)の丘がある南側の土壌は片麻岩に砂や粘土が混じっていて、エレガントなワインができるという。
コンドリューCondrieu
ローヌ川が湾曲するところに位置し、畑は南を向いています。このためミストラルの影響が少なく、フランス有数の白ワインが作られています。生産可能色はヴィオニエ100%の白ワインです。
サン・ジョセフSaint-Joseph
赤・白ワインを生産しています。赤はシラーでマルサンヌとルーサンンヌを10%までブレンド可。
シャトー・グリエChâteau-Grillet
シャトー・グリエは「焼けた城」を意味します。ローヌ地方最小面積、モノポールのAOCです。オーナーはメドックのラトゥールやブルゴーニュのラトゥールを所有するフランソワ・ピノ氏。ヴィオニエ100%
サン・ペレSaint-Péray (サン・ペレ・ムスーSaint-Péray mousseux)
白ワインのシャンパーニュ方式の発泡ワインの産地。品種はマルサンヌとルーサンヌです。少し前まで日本人の大岡弘武さんがこの地でワインづくりをされていたそう。今は岡山でワイナリーをお持ちらしい。気になります。
コルナス Cornas
こちらもケルト語で「焼けた土地」という意味のようです。こちらはシラー100%の赤ワインの産地です。
●左岸側
エルミタージュ Hermitage
ローヌ地方赤ワイン銘醸地その2で、左岸側にあります。生産可能色は赤と白(辛・甘)で品種はシラーが指定されているが、白のマルサンヌ・ルーサンヌを15%までブレンド可。また、Vin de Pailleというぶどうを乾燥してから作られる甘口ワインの産地でもあります。
クローズ・エルミタージュ Crozes-Hermitage
エルミタージュを囲むように位置します。
クレレット・ドゥ・ディClairette-De-Die
ディ地区の中で知名度の高く、また圧倒的に多く生産されている発泡性のワインです。醸造方法によって使用するぶどうが異なります。
この地区の伝統的な製法(田舎方式という)として、アルコール発酵の途中で瓶詰めを行います。この製法によるワインの場合、ラベルには必ずディ地区伝統製法méthode dioise ancestraleと記載されています。生産可能色は白とロゼで、使用するのはミュスカ系のぶどう品種です。ミュスカを75%以上使うことがとされ、これにクレレットを配合することが認められています。
シャンパーニュと同じ製法(瓶内二次発酵)の場合、クレレット以外のぶどうは使えません。ラベルにはL’AOC Clairette-de-Die - méthode dioise ancestrale (Tradition)と表記されます。
クレマン・ドゥ・ディCrémant-de-Die
発泡性の白ワインです。もともとはクレレットで作られていましたが、現在では最大45%果物のアロマの強いアリゴテやミュスカも配合されています。瓶内2次発酵方式で作られます。
コトー・ドゥ・ディCoteaux-de-Die
100%クレレットで作られる、この地区ではマイナーなスティルの白ワインです。
シャティヨン・アン・ディオアChâtillon-en-Diois
白ワインはアリゴテもしくはシャルドネ、赤ワインとロゼはガメイ主体の産地です。
発泡性ワインの名称のおさらい
フランスの各地を勉強していると、赤ワインや白ワイン、ロゼの他にも「ムスー」「クレマン」という種類の発泡性ワインの種類を目にすることがあると思いますが、整理できておりますでしょうか。
ヴァン・ムスーvin mousseuxは3気圧以上の発泡性ワインの総称です。ロワールのアンジュやソーミュール、ローヌのサン・ペレ、南西地方のガイヤック等がAOCに認定されています。
クレマンCrémantはフランスの発泡性ワインの一種です。瓶内二次発酵という醸造方法によって作られます。同じ製法でも、シャンパーニュ地方で作られる発泡性ワインのみシャンパーニュchampagneと名乗ることができます。フランスではボルドー、アルザス、ブルゴーニュ、ジュラ、ローヌ(ディ)、ラングドック(リムー)、ロワール、そしてフランス語圏の隣国ルクセンブルクが.AOCに認定されています。
ペティヤンpétillantは2.5気圧以下の微発泡性ワインです。ロワールのヴーヴレやモンルイ・シュル・ロワールがAOCに認定されています。
ちなみにクレレClairetはボルドー全域のAOCで、赤ワインと同じ醸造方法で作られるスティルのロゼです。
参考:
ローヌ渓谷地方をヴァーチャルで旅しよう
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?