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神様にお土産

いやあ、話したねえ。
まだ1時間しかたってないの?
時計壊れてない?
社会人になると、こんな話できないしさあ。普段は天気とニュースの話と、恋人か家族か仕事の愚痴のローテーション。こんな話ができる人、なかなかいない。
え?
だから、こんな話。
神様へのお土産になるような話よ。
あれ。
私言ったことなかったっけ。
とっくに話した気でいた。
えーとね。
神様って信じてる?
私はね、神様を信じてないんだけどさ。
幼稚園がキリスト教系でね。シスターが言ってたの。
神様を信じてなくても、何か困ったことがあったときに、神様!って思うでしょう。そのときもうあなたのところに神様はいるんですよって。
それ聞いても結局神様は信じなかったんだけどね!あはは!
でも、確かにいるなあって思ったんだよね。
え?
矛盾してないって。
してませんー。
で、私は生きてるのは神様へのお土産を探してると思ってるわけ。
お土産屋さんでさ、いいお土産ないかなーってぐるぐる見て回ってるあの感じ。なかなか決められなくて、あの人はあれ好きかな、いや、それよりもこっちのほうがいいかなって、もうちょっと見るかな、やっぱり戻ってみよう、って。
たぶんね、死んだら神様と面談みたいなのがあるのよ。あなたの人生どうでしたか、って聞かれるの。
え?
閻魔様じゃないって。神様よ、神様。
で、そのとき私はお土産を渡すの。
きれいな景色を見ました。
おもしろい本を読みました。
たのしい音楽を聴きました。
おいしいものを食べました。
うつくしい人に会いました。
すてきな気持ちになりました。
死んだらかたちのあるものは持っていけないでしょう?
かたちのないものしか持っていけないの。
私の中にあるものしか渡せないのよ。
私はぐるぐるぐるぐるしながら、かたちのないものを集めてるの。
神様がどんなものが好きかかわからないしさー。
私が好きなものをいっぱい集めるしかないの。
たまに、いくら探しても何も見つからないなー、もうこの人生ではいいものが見つからないのかなーっていうのが続くときもあるよ。
でも、またその後に見つけたものがキラッとしてるんだ。
え、何?
賄賂?
いや、天国でも一等いいところに住まわせてもらおうとか、次の生まれ変わりでいい感じにしてもらおうってわけじゃないの。
なんで死んでまでそんな人間っぽいこと考えないといけないのよ。やだよ。
人間へのお土産じゃないの。
だから、神様へのお土産なんだって。
そのために私は生きてるわけですよ。
いや、前はね、何者かになった!とか、何かを成し遂げた!とか、そういうのが自分にはないなって思ってたの。
神様の前に出て、お前はどういう人間で何をしてきたんだって言われても、いえ、特には、って答えるしかない。
私には何もない!みたいにね。思ってたのよ。
でもたぶん、そういうことじゃないの。
今はもういっぱいあるってわかってる。
かたちがないから、かさばらないんだよ、なんとこれが。いくらでも持てちゃうわけ。
たぶん、今夜のこともお土産になるよ。
あなたのお土産のことを話しましたって。
こんな話を聞いてくれる友達がいるのは、とってもよいことです、って。
あ、お酒ないじゃん。
何飲む?日本酒行っちゃうー?

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