高齢者向けの生命保険

最近、テレワークが多くなり、リビングでTVをつけながら仕事をすることが多くなりました。

コロナ禍になる前は、日中は家にいませんので、ほとんど見る機会がない番組・CMばかりなのですが、おそらく、平日の昼間の視聴者の多くが高齢者ということで、健康食品・サプリメント・マッサージ器具などのCMが多くてうんざりしてしまいます。その中には、高齢者でも加入できる生命保険のCMも少なくありません。

こういうCMのターゲットは、何らかの支障があってなかなか外に出かけられない人です。健康や資産に問題のない高齢者は外に出てエンジョイしていますのでターゲットにはなりません。身体のあちこちが痛いとか金銭的に余裕がないとかいう高齢者が狙い撃ちにされています。視力が回復するサプリ、TVの音がはっきり聞こえる補聴器、足腰の痛みを和らげる健康食品などなど・・・よくもまあ、こんなに高齢者を狙い撃ちにするなあと感心するほどです。最近では、その仲間に生命保険もチラホラ・・・。

日本人は本当に保険が好きですよね。60歳・70歳になっても、将来に不安を覚えて生命保険に加入するというのですから恐れ入ります。私が仕事をしているところでも、毎日のように80歳以上の契約の成約事例を目にします。

もちろん、生前贈与や相続対策という観点の成約もあるわけですが、最近の生命保険は加入条件を以前に比べて緩めているため、「どこの会社にも断られたけれど加入できた」「過去に〇〇という大病を患ったのに加入できた」などとお客様が喜んでくれた、という事例が急増しています。

正直に申しまして、生命保険の仕事を30年近くしている私から見ると、今の保険会社の引き受け基準は、ちょっと「ありえない」ぐらい緩いと思います。

私がこの業界に入った時には、高血圧で薬を飲んでいる人は引受謝絶。先天性の疾患や難病も謝絶。告知扱で加入できるのは60歳までで、それ以上は全件医師扱い。

今では80歳でも簡易告知に該当しなければ医療保険に加入できるし、先天性の疾患や難病でも加入できます(すべてではありませんが)。個人的にはビックリです。いや、そうやって引き受けするんなら、昔からやっておいてよ~という気持ちです。

しかし、それだけ保険会社間の競争が厳しくなったということなんでしょうね。死差益を吐き出してでも新規契約を取らなくてはいけない。多少、体況が悪くても取ってしまえということなんでしょうか・・・。

高齢者のための保険と言えば、最近目立つのは、100万円程度の葬儀費用を準備する保険。月2~3千円で100万円程度の保険金が支払われるというものです。

例えば、70歳の人がこれを見て契約するケースだと、月3千円を死ぬまで支払って100万円となるわけなので、支払いは年間3万6千円×契約年数。仮に20年生きて90歳の時に死亡すれば、総額72万円を支払って100万円の保険金になりますから、パッと見はおトクのように見えます。

しかし、一定数の契約は途中で解約になりますが、その場合の解約返戻金はありません。保険料を払えなくて失効する人もいるでしょう。いや、認知症になって銀行口座が凍結されて引き落とし不能となって失効してしまうかもしれません。その事実を保険会社から告げられたとして、家族がその保険を継続するかはわかりません。「おじいちゃん!なんでこんな保険を契約しているのよ!無駄だからやめちゃうわね!」と家族に言われて解約になったり、保険に加入したことさえ忘れて、家族にそのことを伝えずに保険金が支払われないままになるケースもあるでしょう。

つまり、このような保険は、途中で解約した際の解約返戻金は(ほぼほぼ)保険会社が没収する仕組みなのですが、上記のような「没収されるリスク」を検討して加入している高齢者はとても少ないように思うのです。よって、「誰でもいいから加入してもらって途中で解約・失効となることで収益を得る」という発想に立てば、このようなビジネスが成り立つわけです。

タレントが「これなら葬儀費用も安心ね!」とか「子供に迷惑を掛けなくて済むわ~」などと言ってアピールするもんですから、高齢者は「うんうん」となって思わず電話に手をかけてしまう(-。-)y-゜゜゜

以前にも、保険というビジネスは「お客様を怖がらせてお金をお預かりするビジネス」と申しましたが、最近では高齢者を脅かしで保険料をお預かりする会社が出てきているようです。

高齢者が「将来を心配して生命保険に加入する」って・・・だって、皆さん、すでにその「将来」にある人たちでしょう。葬儀費用を準備せずに死んだとして、その負担を子供たちがしたとして、その時には貴方はあの世。子供からは恨み節があるかもしれませんが、あの世の貴方には届きません。

貴方は子供たちが大人になるために相当な努力と忍耐と金銭的な負担をしてきたはずです。そんな恨み節なんて一蹴できるくらいのね。

そんなことのために、月3千円と言えども無駄なお金は使っちゃいけませんよ。そのお金で映画を見るなり、美味しいランチでも食べてくださいな。その方がずっと人生を有意義なものにしてくれますよ。
(-。-)y-゜゜゜


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