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長年にわたり一線で活躍できたのはメモのおかげ!記憶は無くなるが記録は残る

米メジャーではエンゼルスの大谷翔平選手が、昨年に引き続きMVP候補にあげられる大活躍。日本球界でもヤクルトの村上宗隆選手が、本塁打の日本記録更新を狙えるパフォーマンス。

天性の素質が備わっていたから!強靭な肉体に恵まれていたから!もちろん、それらはアスリートにとって、有利な条件であることは間違いありません。

ですが、そんな一流のポテンシャルがなくても長年プロ野球の世界で活躍した選手がいました。自分は頭が悪いし、人一倍不器用。そう自虐的に自己分析する人物が今回の主人公です。

昭和29(1954)年、京都の峰山高校から契約金なしでテスト生として南海ホークスに入団。プロ1年目は9試合に出場し、11打席ノーヒット。2年目は一軍に上がることなくファーム暮らし。

来シーズンはクビになるかもしれない!?しかし、不安を抱えながら挑んだ3年目、彼は一軍にレギュラー登録されることになります。

なぜ、彼は一軍で通用すると認められたのか?彼をプロの表舞台に導いた秘訣とは?それは、試合があるたびにロッカールームやバス移動の時間で日々書き溜めたメモの存在でした。

対戦した打者の苦手な、あるいは得意な球種やコース、投手の長所、短所、クセなどの特徴をこまめに記し、帰宅後はその日のうちに詳細にノートにまとめていたのです。時にはメモを整理しながら試合を思い出すと、興奮して朝方まで眠れないこともあったといいます。

ですが、その地道な積み重ねがあったからこそ、ずっと一線級でプロ人生を送れたと彼は振り返ります。

選手として3017試合出場は、日本プロ野球史上2位。
監督として通算1565勝は、同5位。
通算安打数2901本は、同2位。
通算本塁打657本は、同2位。
戦後初の三冠王というタイトルにも輝き、
通算21回のオールスター出場は史上最多。

ポジションは扇の要である捕手!この人物が誰なのか、もうわかりましたよね?今やプロの常識とされるデータを基にして考える野球、いわゆるID野球を駆使したことで知られる名将といえば!

そう、野村克也氏(ノムさん)です。メディアで毒舌を吐く印象しかない人もいるかもしれませんが、実は日本球界屈指のスーパースターでした。

元ヤクルトの正捕手だった古田敦也氏や元楽天の正捕手(現ヤクルト)嶋基宏氏は野村ID野球の申し子といわれていますよね。

ノムさんが監督をしていたときには、守備からベンチに戻ってきた彼らに問いかけたと言います。「さっきの球種、コースの根拠は何や?」と。その答えが「直感で」とか「何となく」だったら、容赦なく叱り飛ばしたといいます。

ノムさんはプロセスが大事であることを日頃から選手たちに説いていました。結果が良ければ何だっていい、そんな適当なことでは、長くプロで活躍するのは無理だと考えていたからです。運よく適当に出したサインで打者を打ち取っても、根拠のない配球では、次の打席も運任せの勝負になる。

しかし、根拠があれば、たとえ打たれても次の打席でその失敗を活かすことができるのだから、ひとつひとつ根拠のあるプレーをしなさいということ。ノムさんは、そのことを自身の経験で十分知っているので、意識をもって取り組む重要性を伝えたかったのでしょう。

そして、その根拠を洗い出す引き出しとなるものこそが、大量に書き溜められたメモだったというわけです。ノムさんの現役時代のメモには、投球動作のクセ等が事細かく記されていました。

たとえば、投手が両手を振りかぶったときに、帽子のマークが見えればカーブ、見えないとストレート。捕手からのサインに大きく頷くときは、間違いなく一番得意としている球種を投げてくる。それらはしっかり観察しているから見えてくること。

そして、観察を継続しているから、クセが修正されるとすぐに気づくこともできたのです。もちろん、メモには赤い文字でクセが修正されたとしっかり書き足すことを忘れませんでした。

大切なことは、記憶は無くなるが記録は残るということ。今はネット検索すれば簡単に何でも出てくるので、メモの有効性を軽んじて考える人は多いかもしれません。

ですが、メモは単にあとから情報を閲覧するためだけではなく、「考える力」を養うためのアクションでもあります。目の前の状況に対し、過去の経験や知識を総動員して、情報を整理し、組み合わせ、並び替え、再構築する。インプットした情報を頭の中で編集していく作業が、すなわち「考える」ということなのです。

「考える」とは、思いつきやひらめきとは意味を異にします。思いつきやひらめきには編集する材料がありません。逆に材料が多ければ、簡素化したり、取捨選択したり、より良い判断ができる可能性が広がります。

つまり、メモ(材料)は、あなたの考えを正しく前進させるための動力の役目をするものなのです。メモを基に明確な根拠を持つ人は、常に冷静でいられる一方、根拠が曖昧な人は反射的な行動で失敗を重ねます。

さて、あなたはどうでしょうか?「直感で」とか「何となく」でトレードしていませんか?もし、同じ失敗を繰り返しているのであれば、メモがあなたを成功へと導くための最強アイテムとなることは間違いありません。

トレードは高校や大学受験とは違って、メモや資料をカンニングし放題なのですからね。面倒だの、邪魔くさいだのと疎かにしていると、来シーズンあたりクビ(退場)になるかもしれません。

PS
アレキサンダー・エルダー博士も著書のなかで、記録することの重要性を繰り返し説いています。

そして、エルダー博士自身も骨董品になった昔の日記帳の1冊を今でもトレーディングデスクの傍らに常備しているそうです。世界的プロトレーダーでさえ、逐一メモを取ってきたのです。

私たちは皆、間違いを犯します。しかし、自分の記録を振り返り、過去の過ちを反省し続ければ、それを繰り返す可能性は低くなります。トレードの記録をきちんと整理することで、あなたが自分の教師になり、あなたの自己資金に奇跡を起こします。(『ザ・トレーディング』第11章 トレードの適正な記録管理より)

PPS
失敗に学ぶとは、勝つ方法を探し求めるのではなく、負ける原因をつぶしていくことに他なりません。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし(野村克也氏)

どれだけ頑張ったところで相場をコントロールすることはできません。投資家・トレーダーにできることは自分の行動を抑制することのみです。

勝てるかどうかは相場次第、負けるかどうかは自分次第。耳の痛い話ですが、心に留めおきたいですね。不思議の勝ちは、そう何度もないのですから!

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