保険不要論に思う事

保険募集人の方々へ研修をする立場として
時折「保険不要論の方へどう対応されていますか?」
という質問を頂くことがあります。

Youtubeのなんちゃら大学とか
色々な情報サイトでよく言われていると。

ご質問の主旨としては
「保険不要という方に対し、永岑はどういう風に
 必要性を理解してもらい、提案しているのか?」

もっと言えば
「必要性が一発で伝わる何か必殺技みたいなものがあるのでは?」
「そういうのがあれば出し惜しみせんとはよ教えて!」
こういう風な期待感もこの質問の裏側にはあるかもしれません。
※たまに直接的にそう聞かれることもあります!

なるほどそういった
「保険は必要ない」という方々は高額療養費や傷病手当金等
社会保険について調べていて理論武装もしていると。

それはそれでいいのでは…と思う向きも正直ありますが、
北風と太陽の寓話のように
アプローチの仕方は同じ結果を求めていても
工夫する必要はありますね。

今日はこのテーマについて書いていきたいと思います。

改めましてこんばんは。永岑(ながみね)です。

結論だけ先に書かさせていただきますと、

保険不要論、必要論を本質的に解決するには
「決めつけ」に気づけるかどうかが全てです。

それはご相談者側の、というよりは
どちらかというと募集人側の「決めつけ」ですね。

研修後のアンケートを拝見させていただくと、
「無意識に商談中決めつけてしまっている自分に気が付きました」
というコメントをいただく事があり、
それが結構個人的には嬉しい事だったりするんですが、
今日はそんなお話をしたいなと。

もしお時間があれば「決めつけ」に気づき、
「決めつけ」にうまく対処できるようになる
きっかけとしてオススメの本が2冊ありまして、

一つは2003年に発行され
「日本で一番売れた440万部超の新書」なので
ご存知の方も多いと思いますが、
養老孟司さんの『バカの壁』です。

冒頭、北里大学薬学部の学生さんたちの話が出てくるんですが、
講義で「ある夫婦の妊娠から出産」をまとめた
ドキュメンタリーを見せ

女子学生のほとんどは
「勉強になった」「新しい気付きがあった」とコメントしたのに対し、
男子学生のほとんどが
「保健の授業で既に知ってることばかり」と
コメントしたという事で、

与えられた情報に対する姿勢の違いが
そのまま受け取った感想と気づきの差
に出たと。

「出産」にさして興味のない男子学生と
自分事として捉えている女子学生の差、

それは知りたくない情報に対する
「バカの壁」があるからなんだよねー!!

というところから始まる新書です。

一旦決めつけちゃうと、それ以上の発展、発見が無いという事ですね。

研修を受講するにせよ、何か本を読んで勉強するにせよ
(あー知ってる知ってる)と感じて終わってしまうか、
(この部分については今回初めて気づいた!)という姿勢が持てるかで
効果やその後の成長は全く変わってくるのと同じです。

もう一つの本はそんなにメジャーじゃないと思いますが
同じく新書で
わかったつもり 読解力がつかない本当の原因
という本です。漫画のドラゴン桜でも紹介されてました。

これも冒頭に、小学校2年生の国語の教科書にある
ねこちゃんの微笑ましい文章
が紹介されるんですが、

これが本当にいい題材になってまして、
私がこれまでこの本を紹介した読解力自慢の方々、
私含め全員「理解しきれなかった文章」なんですよ。

小学生が読む、
なんら難しくないわかりやすい文章なんですけど、
「うわぁそこまではわかってなかったわ…」
と解説を読んですぐ理解しました。

ウチの娘と同じ小学校2年生向けの2ページ位の短いお話なのに、
深い所が理解できてなかった。と絶対気付きます。

意外と、子供の方がちゃんと読めてたりするんですよね。

(なので我こそは「読解力には自信あるぜ!」という方は
ぜひチャレンジしてみてください。)

■保険は必要?不要?人による?

要、不要を「人による」と早急に結論づけてしまうと
話が終わっちゃいますが、

得てして、保険営業側は
「保険は必要」とある種「決めつけ」がちですし、

対する「社会保障があれば保険は不要」という
保険不要論者の方々も一種の「決めつけ」をしています。

個人的にはどちらの意見も「理解」できます。
どの程度「共感」するかはさておき…。

私が鈍感なのか、何かしらの運が働いているのか
あまり私自身がコンサルの現場で
「保険不要論」の方に出会う事は少ないのですが(年に1-2件ですかね…)、

基本的なスタンスはどういう方であっても下記の通りです。

①その方の考えを尊重する
②その考えに至った経緯をお伺いする
③こちらに何を求めているのか確認する
④③に基づいてコミュニケーション、共感をしながら信頼関係を築く
⑤お伝えした方がいい情報提供があれば行う(説得にならないように)
⑥その上で判断されるのはご本人次第

こんな感じですかね。

後輩指導をしていると、しばしば
①を軽視する営業も結構いるんですよね…。
私も新人時代恥ずかしながらその傾向がありました(特に男に多い)。

「素人の浅学にプロの見識は勝る」と言わんばかりに
ご相談者の意見を否定して、同時に心を閉ざされてしまい

「いやぁ~なんか話はできましたけど、
 とりあえず考えますって言われましたよぉ~」
「保障の大切さがまだあの感じだと分からないんですかねぇ~」
「ネットで言われてることばっかり信じて
 こちらのいう事は聞きたくない雰囲気でした!」
みたいに言って帰ってくる…。

当然様々な背景が考えられますが、「決めつけ」ている以上、
そこから「より分かろうとするか」「何が改善できる点だったか」は
出てきませんよね。

「わかったつもり」の本にも書いてあることなのですが、

「わかった、と認識している状態は一種の安定状態」なので

そこに新しい情報が入ってきて考えが変わったりする可能性が
あるのは基本的に人間は本能として嫌がります。
あえて「わかった」事を再度思い返したりしたくないわけです。

一回、皆さんが滅茶苦茶嫌いになった人を思い浮かべて頂いて

「いやいやその人も良い所あるよ!」と急に誰かに言われても、
感情的に「そう言われても意見は変えないぞ…」となる事は
多分誰にでもあるんじゃないでしょうか。
※社会心理学では認知的不協和と言ったりします

一度「気を付けた方がいい」「危険だ」「嫌」等と学習したものを
「オッケー!大丈夫!」「安心!」「好き」等と180度正反対に
再学習するのは動物的に危険です。

「嫌い」を「好き」にするのは中々無茶な話と同様に
「不要」を「必要」にする定型的な道筋みたいなのは
やっぱりないわけですよね。

ただ、「嫌い」も「不要」も、新たな判断基準が
追加されると「再検討」にステップが進む可能性は
比較的高いと言えます。

先日、芦田愛菜さんが
「その人の新しい一面を見た時に、揺るがない自分が持てるか」
みたいな、凄い大人なコメントをされて注目されていましたが、
どこまで行っても新しい一面に気づく可能性はありますよね。

保険不要論の方もお話をお伺いしてみると、
ありとあらゆる保険を否定しているわけではありません。

自賠責保険とか個人賠償責任保険などは
「価値あり」と考えていらっしゃったりします。

という事は、保険すべてが「嫌い」「不要」なわけではなく、
そこにはその方なりの合理性、結論を出した経緯があるので、
そこをしっかりお伺いしていくだけでも全然変わるのではないかなと。

■仮想ロープレの巻

これが参考になるかわかりませんが、
「医療保険不要」の方を想定としたロープレ(?)的なやり取りを
記載しておいた方が、具体的にイメージできるかなと思いまして
昨晩即興で作ってみました。

研修中、「とあるご相談者像」を受講生に演じて頂き、
私が募集人側、FP側としてロープレすることがありますが、
そういう感じのものですね。

根本的なスタンスは先述の通り

①その方の考えを尊重する
②その考えに至った経緯をお伺いする
③こちらに何を求めているのか確認する
④③に基づいてコミュニケーション、共感をしながら信頼関係を築く
⑤お伝えした方がいい情報提供があれば行う(説得にならないように)
⑥その上で判断されるのはご本人次第

このステップです。

募集人→募
相談者→相 ※
※「30代半ば独身」で想定してみてください

募「医療保険についてはどのようにお考えですか」
相「医療保険は要らないですね」
募「要らないとおっしゃる方も増えてきましたよね!
  どのような部分でご不要と考えられたんでしょうか?」
相「高額療養費や傷病手当金がありますし、
  働けなくなれば障害年金もあるので最低限は困らないかなと。」
募「よくお調べされていらっしゃいますね!
  おっしゃる通り、日本の社会保険はしっかりしてますよね」

相「ある程度貯金もありますし、NISAやiDeCoで資産運用をして
  老後や教育費に向けて準備した方が合理的だと考えています」
募「いいですね!貯金がしっかりあると安心ですし、
  資産運用をすることは今の日本ではとても重要です」
相「どちらかと言えば、そういう資産形成の話であれば
  参考にしたいと思います」
募「なるほど、資産形成相談にご興味があるんですね。
  承知いたしました。それでは私がお手伝いさせていただく
  方針としては、老後に向けた安心できる資産形成という事で、
  それに沿った情報提供という事でよろしいでしょうか?」
相「はい。お願いします。」
募「かしこまりました。安心した老後になる様に
  お手伝いさせていただきますね。」

募「試算いたしますと、老後の年金額はご相談者様の場合
  月18万円になります。こちらの金額はご存知でしたでしょうか?」
相「いえ初めて知りました。でもこの先減るかもしれませんよね。」
募「確かにそうですね。ちなみにこの通り
  毎月18万円受け取り続けられるとしたら、どう感じますか?
  (実際には偶数月に2か月分が振り込まれますけども)」
相「それでも少し足りないかな?最低限は暮らせるかなぁ。」
募「確かに今からイメージするのは少し難しいかもしれませんね。
  その時制度が少し変わってしまう可能性もありますし。
  一つお伺いしたいのですが、
  なぜ年金額は減ると思われたのでしょうか?」
相「少子高齢化が進んでいるからですね」
募「そうですよね。少子高齢化に伴って
  社会保障費は年金や介護、医療費の額が年々増加しています」
相「自分で運用して自分の将来を守る必要があるなと」
募「とても大事なお考えだと思います。自助努力は欠かせませんよね。
  将来のご自身の生活を守る為に資産運用されるわけですよね」
相「そうですね」

募「逆に毎月これだけあれば絶対安心!という年金額はありますか。
  例えば国の年金と合わせて月30万円もあればOK!みたいな形で」
相「うーん、お金っていくらあっても絶対安心って中々難しいですが、
  今の給料が手取り30万円だから、まぁ30万あったら安心ですね」

募「一つの目安は月30万円ですね!国の年金を仮に18万円とするなら
  月12万円の自分年金の様な物があればいいかもしれません。」
相「目標はそれ位かな?」
募「月々〇万円の積立を仮に△~△%で運用すると、
  この資産形成計画は達成できそうですね」
相「結構頑張って積立、運用していかないとですね」
募「考え方としては、資産形成計画はプロとしては
  順調に事が進んだパターンと
  何か不具合が起きたパターンの2パターン用意するのですが、
  ご相談者様は前者のみのパターンのご案内で良いでしょうか?」
相「いえ、一応後者も聞いておきたいです」

募「承知しました。
  先ほどの年金額は初めてご覧になるという事でしたが、
  高額療養費や傷病手当金、障害年金は一定期間で金額が減ったり、
  家族構成やお勤め先の福利厚生によっても金額が異なるのですが、
  ご自身がそれぞれいくら適用されるかはご存知ですか?」
相「いえそこまでは知らないですね」
募「不具合が起きても老後安心頂けるようにプランニングしたいと
  思いますので、先ほどの社会保険の内容も
  ご相談者様の数字で試算いたしますね。
  もちろん資産運用そのもののリスクとリターンもご説明します」
相「はい」
募「国の社会保険は、基本的に年金を中心に
  「収入の補填」(働けない時の無収入状態を回避)と
  健康保険を中心に「費用の補填」の二つに分かれていますので、
  医療保険が要る、要らないというよりは、何かあったとき
  収入がどれ位減るか、費用がどれ位かかるかが分かれば
  「保障」が社会保険のみ足りているのかどうか
  ご自身で判断いただけるかと思います」
相「そうですね」
募「その「保障」を満たすのが貯金なのか、医療保険なのか、
  また全然別の保険なのか、そもそも「保障」は要らないのか、
  ご相談者様に選んでいただける選択肢をご提示いたしますので、
  見て頂いた上で不要でしたら
  遠慮なく不要とおっしゃってくださいませ」
相「わかりました」

募「ちなみに、貯金は三角、保険は四角は聞いたことはございますか?」
相「あぁ知ってますよ。わかります。」
募「さすがですね!では、ちなみに
  貯金は〇〇〇、保険は〇〇〇は?」
相「ん、何か三文字が入るんですか?」
募「そうです!」
相「聞いたことないな…なんですかね?」
募「貯金は「おろす」、保険は「おりる」なんですね。
  雰囲気的に、貯金はご自身で貯めてきたお金なので、
  使うときそこから「おろす」という事で、
  あるものを引き出してくるイメージですよね」
相「確かにそうですね。自分で貯めてきた自分のものですからね」
募「対して保険は「おりる」なので、
  どこか自分のものではないところから
  引っ張ってくるイメージなわけです」
相「なんとなくわかります」
募「嬉しくない系の出来事には、「おろす」と「おりる」なら
  どちらで対処しておきたいでしょうか?」
相「その二つなら「おりる」かな…」
募「そうですよね。
 「おろす」でももちろん対処できるものもありますが、
  お金は損得『勘定』と
  気持ちの『感情』両方大事なので難しい所です。
  また私からのご案内をもとにご自身の二つの
  『かんじょう』に問いかけてみてくださいませ」
相「わかりました!」

おしまい

という事で、長かったですね…。
各方面への配慮をした結果長くなってしまい
失礼いたしました。

とりあえず、この仮想の会話内で
募集人側が「決めつけ」をしていない点には共感頂けますでしょうか。

何か特定の保険、保障を提案したいわけではなさそうですよね。
ご相談者の方の意向次第という体裁は崩していないと思います。

あえて意地悪に突っ込むのであれば
「この募集人とやらは「保険営業」の立ち位置なのか?「FP」なのか?」
という疑問は湧くかもしれません。

今ざっと読み返してみると、ややFP目線が強い気もしますが
どちらでもおかしくはないかなと。

どちらにせよ、ご案内させていただいた
①その方の考えを尊重する
②その考えに至った経緯をお伺いする
③こちらに何を求めているのか確認する
④③に基づいてコミュニケーション、共感をしながら信頼関係を築く
⑤お伝えした方がいい情報提供があれば行う(説得にならないように)
⑥その上で判断されるのはご本人次第

こちらの流れに沿ってますよね。

不要と言われたら必要と言いたくなったり、
意見には意見をぶつけたくなったり、
逆に全部遠慮してしまい情報提供すらできなかったり、
間違ってる事実認識を即座に指摘して気まずい雰囲気になったり、
営業側に都合の良い流れに無理に誘導しようとしたり…、

違和感あるコミュニケーションにはいくつかパターンがあります。
別にこれは保険営業に限った事ではありません。

長く続く、「賃貸vs持ち家」論争もこれに近いかもしれません。

私も娘にピアノを習って欲しかったんですけど、
勧誘が下手過ぎたのか根本的に興味を持たないのか

「お父さんにどう言われてもやらないよ?」

と、この間釘を刺されましたので、
私家庭内営業は上手くない可能性が高いです。

誘導に無理があったパターンか…な。
ピアノ弾けるようになって欲しかったけどなー…。

肝っ玉母さん的なキャラクターの某女性募集人は

「「医療保険は要りません」とか言われたら
 「はぁー?正気ですか?」の一言で済むわよ!」

等とおっしゃってまして、
こんな回りくどい事は不要、とのことでした。

んんー!それは強い!属人性高い!

私がコースを投げ分ける変化球ピッチャータイプとすると、
その方は160㌔の剛速球ピッチャーって感じでしょうか。

営業としては一つの王道と言いますか。


冒頭の、良くいただくご質問にある
「必要性をどう説明しているのか?」という観点でいうと、
私の場合「必要か否か」を説明、説得しているのではなく、

私もご相談者の考えに「決めつけ」を持たないヒアリングを心がけ、
ご相談者側に「決めつけ」のご認識がある場合には
尊重→共感→情報提供の順番でそれに気づいていただく、
そのきっかけ提供ができるよう気を付けているだけになります。

「決めつけ」をそのままにしたままでは
コミュニケーションが出来ているとは言い難いですからね。

ご自身の「決めつけ癖」に気づかれたい場合、
先ほどの2冊の本を読んでいただく事をオススメいたします!

どちらか一冊なら…「わかったつもり」かな。

それでもまだ何か不足感がありましたら…
そうですね、私の研修受講をご検討ください(笑)

公募型は忙しくて最近行っておりませんが、
TwitterのDMは基本的に解放しておりますので
ご要望に応じて検討していきたいと思います。

さて、本日も長文ここまでお付き合いいただき
ありがとうございました。

何か参考になりましたら幸いです。

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