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■EUの難民・移民問題について(雑感)

 僕は日頃、外国人の在留資格について、入管手続を通じて関わっています。外国人雇用をしたい企業と外国人の間に立って、法的な書面を作成し申請していくのです。すると、なかには「移民政策を助長しているじゃないか!」というような意見をぶつけられることがあります。

 僕は行政書士という国家資格者として出入国管理行政に携わっていますが、「移民」だとか「助長」だとかの言葉には違和感があります。なぜなら、法の趣旨は国益保護にあり、適法適正な優秀な外国人はしっかり迎え入れ、そうではない外国人を排除するという厳しい立場にあるからです(何でもかんでもそれっぽい書類を作って外国人をとにかく日本に入れる・・というような仕事はしていません)。

 日本は少子高齢化からくる人材不足なども相まって、外国人の受け入れは不可避とも言えます。これからますます外国人は増加の一途を辿るでしょう。

 さて、前置きは長くなりましたが、「移民政策」という言葉の正確な定義はさておき、少なくとも、行政書士として在留資格に関する申請をし許可を得ることで、日本に在留する外国人数が増えること自体は、間違いありません。この先、日本はどうなるのか、また、僕たちはこの時代の流れにどう対峙していくべきなのか。そのヒントは、EU(欧州連合)を覗いてみるとよいかもしれません。

 余談ですが、運がよいことに僕は外国為替(FX)が好きで、日々取引する通貨は、ユーロドルがほとんどで、次いでユーロ円、ドル円です。ユーロとは、2002年1月1日から使用開始された欧州統一通貨。普段トレードしてるのでなじみがあります。笑

 外国為替(株式なども同じかもしれませんが)など投資・投機を行うと、嫌でも世界情勢が気になりだします。ギリシャがとぶんじゃないか、トランプさんが大統領になるんじゃないか、有事になるんじゃないか、イギリスがEUから離脱するんじゃないか。ずっと見てきました。

 そして、日頃行う行政書士としての仕事でも、ベトナム人増えたなとか、この地域は中国人多いなとか、沖縄に事業所を構えたいという依頼者(企業)増えたなとか、やはりインバウンドの動向が気になったりもしています。

 ということで、行政書士としての視点、外国為替の視点など、せっかくですからいろんな方向から、EUをみていきたいと思います。

1、イギリスのEU離脱

 先ほど書いたように、イギリスは、EU離脱の関連法案の採決を行い賛成多数で可決。このあとは上院審議などを経て成立する流れで、31日にEUから離脱することになりそうです。

 そもそもEUは、2度と戦争の惨禍が起こることのないよう平和の理念のもとに欧州の統合を目指してきたものですが、一方で、様々な問題から歪みが生まれていると言われます。

 ただ、今回のイギリスのEU離脱、いわゆるブレグジットの約10年前にも、ギリシャの財政破綻の問題、いわゆるユーロ危機がありましたから、このしわ寄せがイギリスにとっては良しとされなかったのも原因と言われていますね(ちなみに、全然関係ないですが、僕もユーロ危機、ブレグジットの話では、相場でキャーキャー言ってましたね。笑)

2、EUと移民問題

 このブレグジットは、昨日の今日で離脱しようと決めたわけではなく、先ほどのユーロ危機のような財政面のしわ寄せもさることながら、外国人就労者(移民)の増加や、それに伴う社会保障の問題なども相まって、いわば、年を重ねるごとにじわりじわりと積もった不満が爆発したものといえます。

 むしろ、EU市民であれば認められている就労や社会保障を巡って、逆に、市民の不満につながるという構造。

 実はこの問題は、まさに日本も直面していますね。ただでさえ財政難(実際的な話はともかくとして)の日本において、外国人就労者がどんどん増加していますし、社会保険、年金などの未加入・未納問題は、日々対峙していますから。

 2019年6月には、永住許可申請においては、住民税の課税納税証明書を5年分に増やすだけでなく、社会保険加入の確認、国税納付の確認、2年分の年金納付の確認など、提出すべき資料が増えました。なかなかに、「永住者」の在留資格の審査が厳しくなったのは否めません。それくらい社会保険加入には、日本はシビアな現状ということ。もっとも、個人的にはこれに引っかかるようではそもそも永住者としての適正がないと思うのも本音ですが。

 いずれにせよ、移民とは、自分の意思で外国にいく人だとすれば、日本の制度は移民政策ではないとはいえど、実質的には、移民と同様の問題点を抱えているといえそうです。

3、EUと難民問題

 あとは、シリアなどをはじめとした難民問題もEUは直面しています。今では少し弱体化したとは言われていますが、2015年頃に、世界を震撼させたイスラム国。難しいのは、難民という名のもとに、テロリストが紛れ込んでしまうこと。母国をおわれ、保護を受けられない人たちを救わなければいけない一方で、テロリスト対策もしなければいけない。また、感染病の対策もとらなければならない。その意味では、EUが抱えている難民問題には、複雑なリスクが入り乱れています。

 ちなみに、日本にも、「出入国管理及び難民認定法」という名称のとおり、難民を受け入れてはいます。実際に、平成30年の統計資料によると、約10,000人以上が難民認定申請をしました。ただ、結果として、日本において難民として認定されたのは42人とのことですので、日本のスタンスとしては難民を広く受け入れていく政策方針とは言えません。

 日本の難民申請者の場合、テロリストや感染病などよりも、不法就労をしたいがために、とりあえず難民申請をして延命措置をとる、みたいなことが相次ぎました。残念ながら、それを見越して一生懸命、難民申請者を増やすお手伝いをしている行政書士や弁護士もいました。ちなみに、現在では、そのような一時的に働きたいがための難民申請は厳しく審査がされています。

 ただ、これも先ほどのEUの抱える問題と本質が同じなのですが、1番重要なことは、「保護すべき人を保護できなければいけない」ということです。先ほど、不法就労目的で難民申請をする人が相次いだとは書いたものの、難民申請をする人全員がそうではない。だからこそ、神の目でなければ、その人が真に保護すべき人かそうではないのかを見極めるのは、かなり至難の業ともいえますし、正直者が馬鹿を見るとはこのこと、と思うことも少なくありません。


 今日は長くなりましたので、ひといきつきたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。また、続きはいずれ・・


《執筆担当》***************
行政書士事務所エフイヴグループ
代表行政書士  村 瀬 仁 彦 (Murase Yoshihiko)

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