見出し画像

【合格後】どこか事務所に就職した方がよいか?

2020年2月11日。大阪で、行政書士試験合格祝賀会に参加してきました。

画像1

▲ パーティ前の山田斉明講師の講演会の様子

たくさんの合格者の方にご参加いただき、祝賀パーティでも、実に楽しいひとときや出会いをいただきました。僕としても、これからが楽しみになりました。

さて、今回とりあげるテーマは、行政書士試験に合格したが、いきなり開業しても大丈夫か、あるいは、どこかの事務所に就職した方がよいのか、という質問を受けました。

21歳~24歳まで司法書士補助者、25歳~35歳現在は、行政書士法人勤務を経てずっと行政書士業界にいる僕としては、明確に思うところがあるので、記事にしたいと思います。

【1】即独立開業するパターン

これは僕はやったことがないですが、凄くハードルは高いかもしれません。それは、知識云々より、仕事の進め方の部分に尽きると思います。

相談の電話がきた!どう返答すべきか。面談の日がきた!ミスリードしないか。クロージング!いくらで受ける?申請書をつくる?書類はどう集める??必要書類案内は??あーー!!こわい!!

みたいな印象。頭のなかでうっすらイメージはしてるんだけど、いざやれと言われたら難しいもの。

ただ、誰しもが最初は1年生。この対策は、とにかく相談できる行政書士の先輩(メンター)に会いにいくこと。もちろん、専門分野は多岐に渡りますから、複数名にはなりますが、可能な限り、絞る。

業務スタンスや、仕事の進め方、話し方、理念が、なるべく自分に近い人をみつけることです(関係性が築けて、許されるならその事務所に共同事務所として在席させてもらえるなら、距離が近くなるから、なおよし)。

まずは、メンターをみつけること。です。

ちなみに、「行政書士業務の実務経験がない」みたいに、考えない方がよいです。特に、許認可業務を扱うならば、現場経験は強いです。

不動産会社に勤務していたならば、宅建業分野の許認可に親和性がある。建設現場なら、建設業分野の許認可に親和性がある。電化製品店で営業していたから、接客ができるというのも、ある意味経験です。

かつて、自分が性風俗で働いていたから、その経験をいかして若い風俗嬢の人生を守れる風営専門行政書士になりたいという人もいましたが、もうバッチリ。

そうなんですよ。部屋のなかに籠ってお勉強してるだけの頭でっかちより、現場で業務にまみれた人は、その経験こそが、許認可業務に繋がるんだから、堂々としていればいい。

結局、メンターをみつけること。過去の経験を洗い出してみること。親和性の高い許認可を調べてみること。それに尽きます。お金と時間は、かなりかかるでしょうし、尋常じゃない勇気と覚悟は必要です。

【2】行政書士事務所(法人)に就職パターン

僕は、司法書士事務所での補助者をしながら行政書士試験に合格しまして、すぐに行政書士法人に転籍できる機会に恵まれましたので、このパターンです。

最大のメリットは、給与をいただきながら実務に邁進できるところですね。営業とか経費とか考えなくてよいですから、徹底的に実務研究に集中できます。一方、デメリットとまではいえないですが、良くも悪くも、その事務所の思考や仕事の進め方が自分のベースになりますから、入所した後で、なんかこの事務所の考え方や仕事のやり方は自分には合わないなとか、その事務所の扱う専門分野が、必ずしも自分がやりたいことではないな、というのはあります。

その結果、行政書士の仕事に魅力を感じない、辞める!みたいになってしまうケースもあります。特に、独立開業を目指す芯の強い人ほど、この傾向にあります。

ただ、重要なことは、行政書士補助者であれ、使用人行政書士であれ、あくまでその事務所の看板で仕事をさせてもらっている、ということを自覚すべきです。

そして、自分にできる最大限の実務研究を行いながら、事務所の所長や先輩の顔色をみるのではなく、依頼者の顔色をみること。あまり興味のなかった分野でも、必死で勉強し、行政担当者と話しに話して結果に出した場合、「おたくの事務所に依頼してよかった」と言ってもらう。

開業者と違い、依頼者の御礼は、補助者(使用人)の自分ではなく、事務所や所長にいくから、「なんだよ、俺も頑張ったんだよ」と思うかもしれません。

仕方ないんです。だって、給与をもらっている補助者(使用人)なんだから。

でもね。そのとき、誰よりもあなたに感謝してくれているのは、所長なんですよ。

開業して思うのは、所長って、大変なんです。常に営業を考え、新たに集客して、事務所基盤を強くしなきゃいけない。勤務時間なんてなく、打ち合わせや会食(深夜に及ぶことも)に行ったり、請求書や入金確認など経理をしなきゃいけない。ホームページやメルマガ、YouTubeの収録とか、しなきゃいけないんです。

すると、どうしても、申請書様式に入力するとか、住民票を郵送手配の処理しなきゃいけないとか、書類の細かい運用とか、もしかしたら法改正とかも、なかなかに時間がとれなかったりする。

組織が大きくなればなるほど、いわゆる実務(実際の手続き処理など)の細かい知識が抜けやすくなるんですよ。もしかしたら、一部においては、補助者(使用人)の方が細かい部分に詳しくなったりします。

所長はジレンマなんですよ。本当は、実務研究に集中したいけど、経営や営業から離れると、一緒に活動してくれる人に、給与や報酬を払えなくなる恐怖心が、常にあるから。

だから、よく事務所の人間関係でトラブルになるきっかけは、補助者(使用人)が、「自分はこんな細かい部分まで知ってるけど、所長は知らない!いつもゴルフとか会食ばかりで、現場の苦労を知らない!」みたいに言っちゃったり、所長は所長で、「お前らが食えてるのは、そのゴルフや会食のおかげなんだ!給与を出してんだから、お前らが調べるのは当然だ!」とか、言っちゃう。

こうなったら、もうダメね。笑

営業も集客もクロージングも、書類作成や、郵送処理、事務所備品の購入、事務所の掃除、法改正の積極的な共有、、

こういうのが、全部ひとつになって、「許認可サービス」。依頼者のリクエストになるんですよ。

バスケットに例えれば、点とる人だけじゃダメ。リバウンドに強い人、ディフェンスがいい人、アシストができる人、それぞれポジションがあります。

まさに、「役割分担」なんです。行政書士事務所をチームで行うっていうのは、それぞれのポジションを全うし、他のポジションと連携する、壮大なチームスポーツなんですよ。

だから、もし、行政書士事務所(法人)に就職できて、補助者とか使用人行政書士になれたなら、所長や先輩が、「負担軽減」できるよう、圧倒的な実務研究すること。その事務所で、所長含め、誰よりも許認可に詳しくなること。売上(=依頼者のリクエストに応えること)に、最大限、注力すること。そして、所長や先輩を敬うこと。

それが完璧にできたら、独立開業したときに、むちゃくちゃ大きな財産になりますよ。

注) 村瀬には、完璧にできませんでしたけども。

【3】司法書士事務所(法人)に就職パターン

僕はこれにも当てはまります。司法書士業界に在籍できて、本当に良かったなと思います。それは、①高い倫理観を学べた、②不動産登記、商業登記の仕組みがわかることで、許認可案件に対応するときにスムーズに対応できる、③そこで出会った司法書士さんとは、開業後も一緒に仕事で連携できる、という3点です。

実務的にいえば、②は大きい。許認可の相談がきた際に、会社の登記(履歴事項全部証明書など)を拝見したときに、パッと、「許認可の手続きに入る前に、まず、この部分、変更登記が必要ですよ」って、言えるだけでもかなりでかい。

なぜなら、行政書士試験合格者は、会社法をやらないというナゾな慣習が未だに残っているので、「役員は何人ですか?」、「出資者は誰ですか?」、「○○さんは、いつから役員に就任したの?」、「あぁ、合同会社ね。社員、何人?」、みたいな些細な質問すら、「役員ってなんですか?社員って従業員のことですか?」、みたいな補助者、今までけっこういました。

あるいは、「あぁ、物件所有なのね。地番教えて!」ってきくと、「地番?あ、東京都○○区・・」、いやそれ住所!!みたいな、ね。

これ、事務所内部なら、僕が先輩顔してイジるだけなんですけど(笑)、面談の際に、依頼者や紹介者の前でやっちゃうと、いろいろダメになる。大丈夫か、この事務所?ってなるし、村瀬は教育してねぇなぁ、みたいになります。

許認可は、前提として、登記が絡むことになりますから、司法書士との連携は必須ですし、司法書士さんも暇じゃないから、最低限の会社法や登記法の知識を前提に許認可の話をできないと、ぐちゃぐちゃになります。

結果、依頼者を無駄に待たせて、仕事の遅い事務所というレッテルが貼られます。

今は、電子申請が進み、なかなか当時のように司法書士資格をもたない補助者の採用は、司法書士業界も減っていますが、もし、司法書士事務所で働く機会があるならば、行政書士の仕事をする上では、かなりメリットがあるでしょう。

スタートアップ系の新規許可申請や、外国人の起業に携わりたいならば、かなり親和性が高いですね。

【4】法律事務所(弁護士法人)に就職パターン

僕は法律事務所の勤務経験はありませんが、元々お世話になった所長は、法律事務所勤務を経て、行政書士開業されていました。また、僕の事務所で、1番最初に補助者として一緒に仕事をしてくれた人は、法律事務所の元パラリーガルでした。

法律事務所も、様々な専門分野がありますが、たとえば、企業法務や契約書に関する法律案件を対応していると、これは強い。

許認可を新たにとりたい!という社長さんは、許認可が欲しいというよりも、事業計画と事業の実現それ自体が目的ですから、許認可業務って、起業コンサルティングの側面もあるわけです。

だから、社長の相談をききながら、「あ、その業態なら、リース契約でしょ?そうすると、ここの取り決めはきちんとしておいた方がいいよ。契約書、うちで対応するよ。」とか、「合併なら、許認可の関係から登記申請の前に、絶対にこの申請しないと、今もってる許認可、全部消えるよ。」、とかポロっと一言いえるだけで、許認可+αがいえるわけです。社長はもう、この行政書士の言うことを聞いていれば安心だ!というメロメロな雰囲気になります。

パラリーガルの経験者は、事務処理能力が高いですね。僕は開業してから、事務所内インフラが雑だったんですが(笑)、依頼者ごとに書類をファイリングしてくれたり、明後日○○の相談がある、って雑談しただけで、その日のうちに○○の手引書や、一般的な必要書類案内、発生する費用、面談から許可までのおおむねの期間をA4三枚にまとめて、雑談からわずか2時間ほどで、そっと僕の机においておいてくれたりとか(もちろん、その人は、○○の手続きなんてやったことないですよ。自分なりに調べてくれたんです)。

やはり、法律事務所勤務の経験者は、根拠をしっかり調べてくれて、段取り上手。忙しい弁護士所長のもとで揉まれてるから、案件数が増えても処理耐性がある。

そんな印象があります。

【5】税理士事務所(法人)に就職パターン

行政書士の許認可業務は、意外に、決算書とか事業計画・収支予算とか、数字面も扱います。

これは、元々勤務していた行政書士事務所の先輩だったのですが、元税理士・社労士事務所で経験ありの方。

建設業などの決算報告や、宗教法人などいわゆる法人系の経理まわりはお手の物。僕が新人時代、必死で4時間かけて作成した決算報告、1分くらいで、数字が違うと赤入れチェック。建設業の決算報告は、かけても1時間以内に終わらせないといけないのに、4倍時間かけた上に、数分で数字のミスを見つけられる、この悔しさ。

税理士事務所は、数多くの顧問先をかかえていますから、スタートアップはもちろん、既存の許認可業者の更新や決算といった、許認可管理業務に強いです。

一言でいえば、どんな士業でも、会計・税法に強い、というのは重宝されますが、行政書士の許認可業務も例外ではありません。

税理士事務所勤務も、行政書士開業に向けての1つの選択肢になります。

【6】社会保険労務士事務所(法人)に就職パターン

許認可にせよ、入管手続きにせよ、今は、社会保険や年金に関する要件は、厳しくなっています。健康保険・厚生年金保険、国民健康保険・国民年金などの区分がわかっていないと、目の前の依頼者が、「公的義務の履行」をしているか否かが、判定できません。

また、外国人採用においては、もちろん行政書士の担当する在留資格もさることながら、労務管理は極めて重要な位置付けにあります。

個人的には、現状、行政書士と弁護士が、入管手続きに関する申請取次者として認められていますが、将来、社会保険労務士に認められてもおかしくない(というか、自然)と考えています。

社労士試験はやたら細かいですから頑張らないと大変ですが、資格はなくとも、社会保険・年金制度、労働法に詳しい行政書士は、入管業務で活躍するんじゃないでしょうか。

【5】に書いた当時の先輩は、おおむねの年金額を算出できてましたから、すぐに、未納状態かどうかの可能性を指摘されていて、25歳の僕には、「神!」みたいな感じでしたね。

【7】土地家屋調査士事務所に就職パターン

土地家屋調査士さんには怒られるかもしれませんが、「希少価値が高い存在」といえます。

不動産登記にもいろいろあって、たとえば、司法書士さんは、所有権とか担保権といった権利関係に関する登記を担当されますが、土地家屋調査士さんは、「表題登記」を担当されます。

この土地の地目は「田」だとか、この建物は何階が何平米だとか、そういう不動産登記の土台となる分野。

だから、農地法だとか不動産絡みの許認可を扱う行政書士は、土地家屋調査士を一緒に持ってたりします。凄く親和性が高いです(報酬単価も高いらしい。笑)

僕は、元々勤務していた司法書士事務所の繋がりで、土地家屋調査士の方とご縁ありましたが、交流会とかに出てもなかなか会えないんですよね。僕だけかな?

【8】他資格試験は受験すべきか?

開業するにしても、勤務をするにしても、行政書士以外の資格、いわゆるダブルライセンスについて、可否を問われることがあります。

予備校なんかでは、「ダブルライセンスにしても、結局、どれか1つに偏る」なんてアドバイスをしてるのではないでしょうか。

ただ、これは僕なりの見解があるので、念のため付記します。

結論からいえば、「自分が何の専門分野でいきたいか?」から、逆算すればいい。また、究極的には、「勉強なんだから、好きにすればー!」です。

たとえば僕は、行政書士として入管や許認可を専門にやっています。入管の「外国人起業」に当てはめると、①事業計画を策定、②営業所物件を確保、③会社設立、④必要に応じて、税務署の届出や許認可申請、⑤在留資格の申請、というアウトラインになります。

すると、こういった業務をするには、④の許認可申請や、⑤の在留資格の申請の前提に、③会社設立をしなければいけません。すなわち、登記が必要です。

もし、こういう仕事を一貫して自分の売上にしたいならば、司法書士試験を目指せばよいですね。

あるいは、先ほどの社労士事務所の話になりますが、「外国人採用」のシーンで、外国人従業員の在留資格をとるだけじゃなく、そのあとの労務管理まで、顧問契約でやりたいならば、社労士試験を目指せばいいですね。

何を隠そう、僕自身も、昨年までは、FPとのダブルライセンスでした。許認可業務をする上で、社会保険や年金、税法、不動産の法令、相続や事業承継の知識を幅広く基礎をおさえていないと、そもそも、一緒に活動する他士業に、許認可や入管手続きのアウトラインを示せなかったから、基礎から学びたいというのが最大の理由でした。

ただ、FPの場合は、独占業務があるわけじゃないから、まぁ全般的な知識を得るという役目は果たしたかなと感じ、行政書士1本に戻りました(笑)

ちなみにですね。書くか迷うんですが、書いちゃいますと、祝賀会などで、ダブルライセンスは目指さないんですか?と聞かれますが、それにお応えすると、

「売上のためには目指さない」

が現時点の結論です。僕は、頼れる司法書士、弁護士、税理士、社労士など様々な士業が仲間にいます。だから、僕が目先の売上のために、その資格をとるより、絶大に信頼している彼らを、依頼者にお繋ぎした方が確実だからです。

画像2

▲ 知らないうちに、こんな嬉しいツイートをしてくれる司法書士さんもいるわけですよ。僕も僕で、褒められると嬉しいから、「苦しゅうない、近う寄れ」じゃないけれど、これから10年、20年、一緒に仕事できればと思う。それにしても、本当に彼は、営業上手だと思う。笑

僕は、彼らに最大の敬意と連携希望(あ、逆にどんどん許認可業務は任せてください!)という気持ちがあるので、僕は他の資格をとることはないですね(仮に受験して合格しても登録はしない)。これが、専門分野からの逆算の視点。

一方で、「好きにすればー!」と書きました。それについても、記載します。

リーダーズ総合研究所で、試験や実務の研究の場を与えて頂いていて思うことは、資格試験の受験の意味です。

それに合格したから売上があがるとか、合格しても経営できるわけじゃないとか、近年、様々な意見を耳にします。

1つだけ言えるのは、資格試験の受験目的なんて、人それぞれ。合格して資格とって仕事したいと思う人もいれば、知識の好奇心や自分の主軸になる活動をより強化するための人もいます。ポケモンマスターならぬ資格マスターになりたい人も。

受験したいならば、自己責任でやればいい。本気で受験しているときは、いつだって自分を律することができているはず。

僕たちは、仕事や受験をできる環境自体に感謝して、経営とか合格が夢とか目標ではないことを理解しなければいけない。仕事でも受験でも、将来ありたい自分に近づくための過程にすぎないけれど、その過程が人生を楽しむということ。もし、何回受験してダメだとか、何年やっても売上たたないとか、いろんな苦悩はあるけれど、周囲に支えてくれる人がいる限りは、好きに生きるべきだ。もちろん、周囲への感謝と自己責任で。

明石家さんまさんの、「生きてるだけで丸儲け」ってやつですね。僕は、これからも必死で取り組まなければならない。そう思います。

【9】おわりに

2020年1月26日、元NBAのスーパースター、コービー・ブライアント氏が、ヘリコプター墜落事故でお亡くなりになりました。

朝、ニュースをみたときは、なんかよくわからないボヤッとした感じになり、仕事するのが精一杯でした。僕が14歳くらいのときから、ずっとみてきた選手。会ったこともない方が亡くなって、こんな感情になったのは初めてでした。

※僕のYouTubeの背景に掲げている黄色のユニフォームは、ほかでもないロサンゼルスレイカーズ、コービー・ブライアント選手のものです。

彼ははっきり言って、住んでる世界が違いすぎるから、僕なんかのnoteで引用するのは、果てしなくおこがましいのですが、彼の永久欠番式典スピーチを引用させて頂き、今回のnoteは以上とします。

★コービー・ブライアント氏永久欠番式典スピーチ

https://youtu.be/K-42hszbCag


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?