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【私見】在留資格制度、接客業を単純労働とか、やめないか?

2020年2月16日、文春オンラインで、『いきなり!ステーキ』が外国人不法就労の記事を目にした。個人的には、「あぁ、なるほど」と思うし、「またか、、」とも思うから、現行法から考えればアウトだね、となる。

ただ、この手の話は、非常に多く、曲がりなりにも、人手不足と日本が悲鳴をあげるならば、法制度を含めた現場の課題だと考えている。

今日は、外国人不法就労の問題を気に、現在の在留資格制度の課題と、今後あるべき法制度を、完全に独断と偏見で書いてみる。したがって、『いきなり!ステーキ』を擁護するとか、日本は移民政策を進めよ、とかそういう類いの話ではないことを申し添える。

【1】本件の問題点

今回、不法就労の対象となった外国人は、バングラデシュの方だったようだ。元々、日本語学校に在籍していた留学生で、卒業後、就労してはいけないにも関わらず、同店オーナーの打診もあり、調理スタッフとして勤務したようだ。

法令(出入国管理及び難民認定法、その他行政基準)によると、まず、在留資格「留学」をもつ留学生は、原則として就労活動はできないが、資格外活動許可を得ることで、週28時間以内のアルバイトが可能だ。

次に、学校を卒業すると、日本の企業に就職すれば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」のような、活動内容に応じた就労系在留資格を得ることで、就労活動をできるようになる。

この点、就労系在留資格を認められるには、その在留資格に応じて、大学等を卒業した学歴だとか、何年以上の実務経験だとか、様々な基準が設けられている。

ただし、就労系在留資格は、あくまで専門的知識・経験に基づく業務が認められ、現業や接客など、いわゆる「単純労働」は認められていない。一方、在留資格「留学」の資格外活動許可の場合、勤務時間に制限はあるが、このような単純労働も認められている。

本件においては、①就労系在留資格を持っていないのに就労活動をしている、②業務内容が「調理スタッフ」であり、調理師としての在留資格を除いて、単純労働に該当する、③外国人本人も企業側もそれを知った上で、人材不足を理由に就労しているから、不法就労助長罪に問われる、という3点が問題になる。

①については、日本語学校卒業者であり、母国で大学レベルを卒業していない限り、就労系在留資格の「学歴」は満たさないと考えられる。

②については、仮に①で、学歴が認められる外国人であったとしても、調理スタッフは単純労働であり、認められない。調理師になるには、在留資格「技能」をとればよいが、それはあくまで母国に起因する料理の調理経験が、10年以上なければならず、若い学生ではこの点を満たなさい。ステーキ料理が、バングラデシュ特有かといわれれば難しい点がある。

したがって、本件では、就労系在留資格をとる術がなく、人材不足ゆえ、やむを得ず採用したものであり、法令に則れば、アウトになる。

【2】根本的な原因は、業務内容の制限

飲食店やコンビニエンスストアなどの業界は、この出入国管理及び難民認定法という法律の壁に悩まされている。僕の事務所にも、相談は多くあるが、法律に則れば、【1】のような回答をせざるを得ない。

もちろん、留学生のアルバイトをシフトで活用するとか、在留資格「特定技能」に期待するとか、在留資格「特定活動」を検討するとか、いくつか選択肢自体はあるものの、現場視点にたてば、即効性ある解決策とは言えない。

これらは、法令が単純労働を認めていないことに起因する。また、法令がやたら複雑であり、一般的に、理解・活用しやすい在留資格制度とは言えない。

しかしながら、単純労働者を認めないのは多くの国で採用されており、国益保護の視点からは妥当である。もし、単純労働のために在留資格を解放すれば、いわゆる移民政策につながってしまい、欧州でみれるように様々なトラブルが発生する。

創設間もない在留資格「特定技能」は、人手不足を理由に単純労働を解放したものであるが、当然、運用は厳格なものとなっている。結果として、要件や必要書類が複雑になってしまうのは否めない。

結果として、今の日本は、国益保護の視点と、人手不足による経済活動のはざまで苦しんでいる。

【3】私見 ~在留資格制度と接客業~

個人的見解ではあるが、日本は移民政策をとる必要はなく(移民の定義は重要だが)、外国人の受け入れに、一定制限をかけ、国益の保護を念頭におくべきだ。

ただ、「働き方」は、在留資格制度を見直すべきだと考えている。誤解を恐れずかけば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の業種制限を緩和すればよい。

たとえば、飲食店やコンビニエンスストアにおける調理スタッフや接客を、真っ向から認めればよい。

そういうと、移民政策だとか批判されるが、そもそも、在留資格「技術・人文知識・国際業務」という就労系在留資格は、企業側との契約が前提であり、基準として、学歴要件や実務経験要件を求めている。この段階で、一定の壁がある。誰でも構わず、日本に来れるわけではない。

これをクリアできれば、通訳翻訳やエンジニアといった従来から認められてきた専門業種を選ぶか、飲食店やコンビニエンスストアでの接客業種を選ぶかは、本人や企業側に任せればよい。

学歴要件や実務経験要件を撤廃してまで、単純労働者を受け入れるとなれば、これは、移民政策といわれても仕方ない。その意味で、在留資格「特定技能」は、あくまで試験ベースで基準を設けてしまっている。ペーパー試験合格者が、法令の求める優秀な人材だけを選んでくれるわけではないことは、僕ら行政書士をはじめ、国家資格者ならわかっていることだ。

飲食店において例を挙げれば、現状、運営会社の法務部だとか企画部、エリアマネージャーのように、管理職的立場は認められている。一方、飲食店舗内で、調理スタッフや接客に従事することは認められていない。

でも、たとえば食品衛生や栄養学を学んだ人は、「食」をつうじた仕事の門は開くべきだし、その中で、お客様との触れ合い(接客業種)が魅力に感じる人もいる。広くサービス業・商業分野において、一定の専攻科目を履修した学位をもった外国人(特に、大学、短期大学に限らず、専門学校)に、接客業を開いても国益に反することはないし、現場が求めているのはまさにその分野だ。

本件においても、留学生のときは、在留資格「留学」としてアルバイトしていた。その過程で、焼き手としてノウハウを学び、戦力になってきた。だから、卒業後もそのまま勤務してほしいというのは当然だ。それでも、在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、どんなに学歴があっても、店舗内スタッフが認められないから、今回のように、卒業後の行き場を失ってしまう。外国人が、接客業に就いたからといって、国益に反するとは思えないし、そのルールによって日本人の雇用機会を奪うとは到底いえない。

実は、このような仕組みは、現行法でも在留資格「特定活動」で、インバウンド系の一部の業種で取り入れられてはいる。ただ、僕の考えは、在留資格「特定活動」ではなく、在留資格「特定活動」のように個別に認めるのはわかりにくいから、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で認めていけばよいというものだ。

今の日本の在留資格制度は、やたらと細分化しすぎてて分かりにくい!というのもある。もちろん、生命・健康に重大な影響を及ぼす分野(建設業など)も、業種によってはありえるから、そのような特殊な業態こそ、「特定技能」だとかで(現行法なら「特定活動」も含む)、外国人を保護していけばよい。

ただ、その視点にたっても、接客業を制限する必要性は、昭和時代、平成時代初期から比べても、必要性は下がっているように思う。

本日の記事は、以上です!

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