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法人課税の理解が「儲けの基本」2022年度税制改正大綱❺

新型コロナウイルス禍の影響を鑑み、中小企業や困窮者向けの税負担軽減策は継続します。中小企業の交際費等の法人税に関する事項も延長され、困窮者向けの貸付制度は返済免除額を非課税とするなど、積極的な支援策であると謳っています。どれほどの効果があるのかは、また別の話ですが。

今回は、法人税に関して検討されている改正事項について考えます。

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賃上げ税制

人材確保等促進税制の改正(大企業、中堅企業)

大企業や中堅企業については、前年度から継続雇用している従業員に対する給与総額が、
●前年度比3%以上増の場合 増加額の15%控除
・前年度比4%以上増の場合 増加額の25%控除

また、従業員の訓練教育費
●前年度から20%以上増の場合 控除率をさらに5%上乗せ

となり、最大で30%控除となります。対象となる給与額は、令和3年3月31日以前の開始事業年度に支払うものです。

賃金の支払いが増えると、最大で増加分の30%が控除対象
(注)資本金が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員数が1000人以上である場合、
一定の事項を経済産業大臣に届出が必要

所得拡大促進税制の改正(中小企業)

中小企業については、新規雇用者も含めた全体の給与総額が、
●前年度比で1.5%以上増の場合、増加額の15%控除
●前年度比で2.5%以上増の場合、増加額の30%控除

また、従業員の訓練教育費
●前年度から10%以上増の場合 控除率をさらに10%上乗せ

となり、最大で40%控除となります。

中小企業では、最大40%の控除

税制改正で注目された内容の一つが、賃上げ税制の拡充です。これまで、中小企業では1.5%以上、大企業などでは2%以上の賃上げで給与増加分の15%を減税し、要件を満たせば教育訓練費の支払いによって控除率さらにアップするしくみでした。

今回の税制改正大綱によると、この賃上げ税制を改正し、人員を増やした分も考慮されることになりました。また増加率によって控除率がさらにアップし、結果3段階の控除となりました。

「給与をアップした企業には法人税(個人事業の場合には所得税)の控除を優遇します」と謳ってはいますが、
・実際に法人税を納めている企業はごくわずか
・「景気回復に伴って人件費が増加する」のと逆行している
ことを踏まえると、違和感があるのは言うまでもありません。

賃上げに消極的な大企業にはペナルティ

大企業については、新たな制度も導入されます。投資減税について、

《従来要件》
・継続して雇用する人の給与の総額が前の事業年度よりも少しでも増えていること
・国内設備投資額>当期償却費総額×30%

《改正要件》
資本金10億円以上・従業員数1000人以上で、かつ、前年度の課税所得金額がプラスであるときは
・継続雇用者給与等支給額の前年からの増加割合が1%以上
(令和4年4月1日~令和5年3月31日に開始する事業年度は0.5%以上)
・国内設備投資額>当期償却費総額×30%

満足していないと減税の対象から外されます。研究開発の投資額を法人税から控除できる研究開発税制のほか、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素の取り組みに使える投資減税、地域未来投資促進税、5G投資促進税が含まれます。このように、賃上げに消極的な大企業については、ペナルティを課す制度となります。

賃上げがアメ、同時にムチも。

損金処理については「延長」が中心

交際費特例は2年延長

中小企業の交際費や接待費のうち、800万円までを経費とし、課税対象外の「損金」に算入できる交際費特例は2021年度末が期限でした。2022年度の税制改正では、見直しせずに2年延長することになりました。政府・与党はコロナ禍での販路拡大などのために、引き続き必要な措置だと判断したようです。国税庁によれば、2019年度の中小企業の交際費総額は3兆円を超え、230万社超がこの特例を利用し、総額の9割近くが損金に計上されたものです。2020年度は、コロナ禍で中小企業による交際費の支出が減ったようです。

特例を延長することで、中小企業の税負担を軽減し、消費喚起や飲食店支援につなげる狙いがあるようです。ただし、今後もコロナ感染が拡大し、まん延防止等の措置、緊急事態宣言が発令される事態になれば、その効果も薄れてしまいそうです。

交際費は、大切な「経費」。理解を深めて節税するのが効果的な経営。

少額資産(減価償却費)の損金算入特例について2年延長、貸付用資産を除外

下記の規定について貸付の用に供する資産を対象から除外することになりました(主要な事業として行われるものを除く)。

  1. 少額の減価償却資産(10万円未満の少額資産)の取得価額の損金算入制度

  2. 一括償却資産(20万円未満の一括償却資産)の損金算入制度

  3. 中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満の少額資産)の取得価額の損金算入特例

なお3.の「30万円未満の資産」について、取得費用を全額損金に計上できる特例は2年延長となります。取得した年に控除が受けられるため資金繰りがしやすくなり、パソコンやタブレット購入に使われればデジタル化の手助けともなります。

困窮者支援

収入が減少した人が生活費を借りることができるのが「緊急小口資金」と「総合支援資金」です。こういった生活費を借りた住民税の非課税世帯の人が返済免除となった場合、本来は所得とみなされて所得税の課税の対象となりますが、これを対象外とします。

知って得すること。知らないと損すること。

知っていると得ばかり

企業の経営者はもちろんのこと、個人であっても税制改正を知ることは、暮らしの変化に繋がります。知っていれば得することも、知らないばかりに不安や不満となり、豊かな暮らしが遠のいてしまいます。

難しい事柄は、調べるなり、誰かに聞くのが良いでしょう。
まずは、分かりやすいところから勉強して、暮らしに実践すると、お金を動かすことが楽しくなると思います。

これまで、5回に分けて2022年度税制改正について考えてきました。
2022年1月から始まった通常国会で、大綱をもとに議論されますが、修正された分は随時確認する必要があります。ここでもお知らせします。

興味がある分野について、調べることがはじめましょう。

  1. 住宅ローン控除ってどうなるの?

  2. 土地・住宅関連の税金はどうなるの?

  3. 変わる!金融関連の課税ルール

  4. 資産を守るための税金

  5. 法人課税の理解が「儲けの基本」

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