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第29話 リフォーム業者選びの落とし穴

【登場人物】

〇藤堂さおり(32歳)・・主人公
大学職員として勤務している。夫の啓補は警視庁勤務。
気が強く、はっきりと言うタイプ。地図が好き。初めての住宅購入に向けて、不動産業者だけの話では納得いかず、FP事務所に相談へ行くが・・。

〇神崎勘太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所所長
CFP認定者、1級FP技能士、宅建士。「脱カモ」サポートをモットーに、龍太と二人でFP事務所を切り盛りしている。

〇藤堂啓補(34歳)・・さおりの夫。
警視庁勤務。素直で人を信じやすく、そのせいで営業マンのトークに乗せられやすい。基本的におっとりした性格。

〇神崎龍太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所 勤務 宅建士。
不動産業界での経験を活かしながら、勘太のサポートをしている。無口で勘太とは体型含めて正反対。

〇G不動産 花積亮介(36歳)・・勘太の高校の同級生、親友。    勘太のFP事務所と連携して、不動産事業を行っている。


前回までのあらすじ。


主人公の藤堂さおりと、夫の啓補。ある日夫の啓補が気に入って一気に購入しようとしていた建設予定のマンションがあった。そんな展開に不安なさおりはFP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談をきっかけに、その物件の調査依頼をした。災害に弱い危険な立地であることを理由に購入をやめるように勧められ、実際にその建設予定地は後日台風で冠水してしまった。それがきっかけで、2人はここのFP事務所の住宅購入サポートプランを申し込む。それから、様々なレクチャーをしてもらいながら物件を探し、紆余曲折を経て、やっととある中古戸建て物件を気に入り、申し込んで売買契約を結ぶことができた。火災保険や地震保険のことなども話を進め、いよいよ金銭消費貸借契約(金消契約)の日を迎えていた。それと同時に、今回購入する中古物件のリフォーム業者選びについて、知り合いの業者に見積もりを貰いすすめていたが、想定以上に高く、どうしたらよいものか悩んでもいたのだった。。

第29話 リフォーム業者選びの落とし穴


夏が終わり、秋が近づいてくる9月の下旬の平日の朝、仕事の年休を取り、さおりと啓補はR銀行の支店を訪問した。
 最初にR銀行との金銭消費貸借契約(金消契約)を実印で交わし、収入印紙を貼るなど他に団体信用生命保険の申込手続きなど淡々と進んだ。
 それが終わると、別の席に、売買契約時に顔を合わせた売主さんご夫婦が待機されていて、R銀行のATMを使って、売主さんに、今回の残金、つまり先日の売買契約時に支払った手付金を引いた、物件価格が売主さの口座に振り込まれた。
 数千万円の金額が口座に振り込まれる様子と記帳された通帳を見て、売買契約時にとても温厚だった老夫婦(売主)は、顔を紅潮させて興奮ぎみな雰囲気に変わった。
 それが嫌な印象だったとかではなく、うまく表現できないが、お金の力のようなものを感じた。
 そのあとは、勘太から聞いていた通り、司法書士の下で、所有権登記、抵当権設定契約等が交わされた。時間にして1時間弱だったが、準備が大変だった割にはあっという間に終わった。


 ほっとしたのもつかの間、お昼を挟んで勘太が調整してくれた損害保険会社の方と、勘太の事務所で会う予定となっていた。


 その日の午後2時に、事務所を訪問した。
 勘太は、ニコニコした表情で迎え入れてくれた。午前中緊張し続きだったこともあり、
2人とも勘太の顔を見ると少しホッとした気持ちになる。
「何はともあれ、無事に契約、引き渡しおめでとうございます。」
「あ、そうね。おめでとうなのよね。なんだか実感湧かなくて。」
「そうですよね。あともう少し、保険会社の方すでに来ているから紹介しますね。」
勘太は応接室に案内し、すでに到着していた、保険代理店の小林を紹介した。
勘太も基本的に同席し、保険証券などにも目を通してくれた。そして契約を交わす本日から保険が適用である旨も確認できた。
 保険の契約も無事に終了し、リフォームのことを相談しようかと思ったが、朝からの契約等の連続で緊張が続いていたのもあり、また、勘太も次の約束が入っていたようなので、今日は失礼し、後日伺う約束をした。


 無事に引き渡し、火災保険などの保険も加入し、引き渡しは終わった。 来月からはローンの支払いも始まる。その日の夕食後、啓補はさおりに相談があると切り出した。
「リフォームのことなんだけどね。あれから、200万から色々必要なさそうな部分を外してもらったり、交渉して何とか189万円までにさげてもらったけれど、これ以上は難しそうなのよ。ここまできて断ることも、紹介してくれた先輩の顔もあるから断れないし、これで今回は納得してもらえないかな。」
「そう言うとは思っていたわ。高い気がするし、半分納得できないけれど、今回みたいな展開だとなんだか相見積もりしずらいしね」
「そうだよあ。なんか申し訳ない。」
「外壁塗装やフローリングの上張りは今回入っていないから、私が別業者で探すわ。」
「うん、それでね、資金のことなんだけど」
啓補はさらに少し言いずらそうにしていたが、少し間があって続けた
「さおりが心配してたと思うけれど、昨日ね、両親に住宅購入したことを話したのよ。そうしたら、親父が資金援助してもいいっていうんだよね。どう答えたらいいかわからなくてさ」
「えっ お金が厳しいとか相談したの?」
「いや、そんなことは言わないよ。もともと、こういうときのために贈与しようと300万くらいは考えていたんだって。」
自分に一言も相談せずに、現状の相談を親にしたのかと思うと正直ムッときたが、啓補の言うことを信じようとも思った。実際問題、資金援助してもらえると助かることには変わりないし。。現に、自分が以前の裕福な家庭環境だったら、援助をお願いしていたかもしれない。そう考えると少し落ち着いた。
「そう、それでなんて答えたの?」
「ありがとう。さおりと相談するよ。としか答えていないよ」
「わかったわ。啓補としてはどう思うの。啓補の判断に任せるわ」
「自分としては、資金繰り厳しいのは事実だから。今回は受けようと思うよ」
「わかったわ。300万か。そういえばそういう援助というか贈与って、贈与税とかかかるんじゃないかしら。今週末に事務所伺うときに相談してみようかしらね。」
「そ、そうだな。知らないまま、税金未納ですなんて言われたらいやだし。」


数日後、啓補は、リフォーム業者と契約を交わし、1週間後から工事も始めることとなった。
さらにそれから1週間後、2人はこれまでサポートしてくれたお礼もかねて、事務所を訪問した。
勘太は最近特に忙しそうだ。それでも、2人が事務所にくると、まんまるのあの顔でにっこり笑ってくれる。龍太の方も愛想はなく無口だが、表情を見ていると最初の頃より心開いてくれている感じは伝わる。
まずは、リフォームのことをこれまでの経緯含めて話をした。      啓補の職場の先輩から業者を紹介してもらったこと(相見積はせず)

そこが想定以上に見積書が高く、断るに断れなかったこと。     

義父からの資金援助についても一通り話した。

「うーん。リフォームのことは、契約交わしたなら仕方ないけれど、今回は失敗したかな。」
「えっ・・そこまではっきり言わなくても。。」
啓補はいきなりはっきり言われて、落胆の色を隠さなかった。
「リフォームするときの大原則として、見積もりを必ず2社以上とらないとだめですよ。1社だけに依頼して、その業者が安くします、と言っても、他社に声かけてなくて、確実に自分に受注が来ると思ったらわざわざ本気で値下げなんてしない。もちろん納得感を持ってもらうために、値下げ額を目立つように見積書に入れることはあるとは思うけれど。」

「特にリフォームは価格設定がわかりずらい。基本的に何か決まったものをただ売るのではなく、その家の状況に合わせた工事になるからね。素材何を使うかにもよるし。内装なんてお金かけようと思えばいくらでもかけられる。それでもおおよその相場はあるし、実際のところは複数の会社の見積もりを通して相場を知っていくしかない部分もある。同じ工事内容でも業者によっては10万以上は簡単に違ってくるからね。」
「そっかぁ そうですよね。。」
「まぁ、外壁塗装やフローリングの上張りの工事は別みたいやから、今回は勉強代だったとして、それらの工事を発注する場合はしっかり相見積もりすることじゃないですかね」
「そうね。。そこでね。ちょっと聞きたかったのが、今回主人の父親から300万円程、住宅購入にあたって資金援助したいという連絡があった件のほうね。この場合贈与税とかかかってくるのかしら?ネットで調べたら年間110万以上は贈与税が発生するみたいなことが書いてあったから気になってね」


(第29話終わり) 次回は1月10日(日)に更新予定です。

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※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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