見出し画像

第30話(最終話) 住宅購入や、購入時のリフォームで贈与を受けたら、贈与税ってかかるの?

【登場人物】


〇藤堂さおり(32歳)・・主人公
大学職員として勤務している。夫の啓補は警視庁勤務。
気が強く、はっきりと言うタイプ。地図が好き。初めての住宅購入に向けて、不動産業者だけの話では納得いかず、FP事務所に相談へ行くが・・。

〇神崎勘太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所所長
CFP認定者、1級FP技能士、宅建士。「脱カモ」サポートをモットーに、龍太と二人でFP事務所を切り盛りしている。

〇藤堂啓補(34歳)・・さおりの夫。
警視庁勤務。素直で人を信じやすく、そのせいで営業マンのトークに乗せられやすい。基本的におっとりした性格。

〇神崎龍太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所 勤務 宅建士。
不動産業界での経験を活かしながら、勘太のサポートをしている。無口で勘太とは体型含めて正反対。

〇G不動産 花積亮介(36歳)・・勘太の高校の同級生、親友。    勘太のFP事務所と連携して、不動産事業を行っている。

前回までのあらすじ。

主人公の藤堂さおりと、夫の啓補。ある日夫の啓補が気に入って一気に購入しようとしていた建設予定のマンションがあった。そんな展開に不安なさおりはFP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談をきっかけに、その物件の調査依頼をした。災害に弱い危険な立地であることを理由に購入をやめるように勧められ、実際にその建設予定地は後日台風で冠水してしまった。それがきっかけで、2人はここのFP事務所の住宅購入サポートプランを申し込む。それから、様々なレクチャーをしてもらいながら物件を探し、紆余曲折を経て、やっととある中古戸建て物件を気に入り、申し込んで売買契約を結ぶことができた。火災保険や地震保険のことなども話を進め、いよいよ金銭消費貸借契約(金消契約)の日を迎えていた。それと同時に、今回購入する中古物件のリフォーム業者選びについて、知り合いの業者に見積もりを貰いすすめていたが、想定以上に高く、どうしたらよいかわからず、最後に勘太に相談したのだった。


第30話(最終話) 住宅購入や、購入時のリフォームで贈与を受けたら、贈与税ってかかるの?


「資金援助か。それは助かったね。その110万円というのは贈与の基礎控除といって暦年課税として毎年この金額までは贈与税は発生しないですよ、というもの。ただね。住宅購入にあたっては「直系尊属からの贈与の特例」というものが別にあって、一定額まで贈与税が非課税となる制度が適用されるから、今回のケースだとその特例を適用させて申請するといいよ」

勘太は、その特例の資料を持ってきてくれた。
「へぇ 知らなかった!この特例はさっき最初に出てた暦年課税?とは併用できるの?」
ええ、暦年課税制度は毎年110万円までは贈与税が非課税という制度なんだけれど、今回お話した特例とも併用は可能だよ。」
「適用されるための条件なんかはあるのかしら?」
勘太は資料を2人に見せた。

図1

啓補は前のめりで話を聞いていた。この特例が適用されれば贈与税は課税されずに、300万円がそのまま資金援助されることになる。


「ありがとうございます。いや聞けて良かったです。国税庁のHP見ていても、今一つちゃんと理解できないから、自分達に適用されるかもわからなかった。だから安心しました」
「そうだよね。日本は「申請主義」やから、自分で適用できる特例や助成金にちゃんとアンテナ張っておいて気づかないとそのまま過ぎてしまう。だけど、ある程度基本的な知識や積極的に理解しようと動かないと中々理解できなかったりするからね」
「ともあれ、リフォームはちょっと高くついたけれど、住宅購入の物件選びから、今日までサポートしてくれて本当にありがとうございました。」
勘太は、少し照れたようにカッカッと笑いながら、
「脱カモできたのかなぁ。少なくともカモにされないためのサポートにはなったかな」
「もちろんよ。相談に行かなかったら、最初のマンションをそのまま購入していたわ。本当にありがとう。」
「確かに自分結構騙されやすいから、こうやって相談乗ってもらえたのは本当に大きかったですよ。」
私たちは深々と頭を下げた。

その後、内装のリフォームは無事に終わり、外壁塗装やフローリングの上張りは、比較サイトなどを利用して2社ずつに声をかけ、それなりに納得する価格で、工事もしっかりやってもらった。
 そして、贈与についても、義父の申し出に感謝し贈与を受けることにし、特例の話も義父にしたところ、義父も知らなかったようで喜んでいただいた。

初めて相談に行ってから、1年半が過ぎた。あっという間だった。


「脱カモ」サポートって最初はなんだかいかがわしく見えたし、30万というサポート費用が高く感じたけれど、実際にここまでくると、数千万円という買い物をするのに、自分達側に立って、専門的なアドバイスをちゃんとやってくれることって本当に大事なことなんだと痛感した。  
多くの人は「カモ」にされていることさえ気づかず、気づかないままのほうがある意味幸せなのかもしれない。だけど、やっぱりちゃんと考えて、この数千万もする買い物を納得いくかたちで取引したいと思ったときに、今回みたいに力を借りないとどうしようもない気さえする。まあ不動産はそういう業界なのだと言ってしまえばそれまでなんだけれど。
 「脱カモ」サポートか、、


頼りっきりだと意味はなくて、自分で考えていけるようにサポートする、か。

勘太はそう言っていた。これから生きていくうえで、様々な場面でお金にかかわることは避けて通れない。だから、勢いで何でも決めてしまうんじゃなくて、ちゃんと時間をかけて調べる、比較する。そのうえで必要があれば、お金を払って専門家のアドバイスを貰う、この考え方を忘れないようにしようと強く思った。

【完】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?