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第28話 知っておきたい火災保険、地震保険の基礎知識


【登場人物】


〇藤堂さおり(32歳)・・主人公
大学職員として勤務している。夫の啓補は警視庁勤務。
気が強く、はっきりと言うタイプ。地図が好き。初めての住宅購入に向けて、不動産業者だけの話では納得いかず、FP事務所に相談へ行くが・・。

〇神崎勘太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所所長
CFP認定者、1級FP技能士、宅建士。「脱カモ」サポートをモットーに、龍太と二人でFP事務所を切り盛りしている。

〇藤堂啓補(34歳)・・さおりの夫。
警視庁勤務。素直で人を信じやすく、そのせいで営業マンのトークに乗せられやすい。基本的におっとりした性格。

〇神崎龍太(36歳)・・祐天寺うぐいすFP事務所 勤務 宅建士。
不動産業界での経験を活かしながら、勘太のサポートをしている。無口で勘太とは体型含めて正反対。

〇G不動産 花積亮介(36歳)・・勘太の高校の同級生、親友。    勘太のFP事務所と連携して、不動産事業を行っている。

前回までのあらすじ。

主人公の藤堂さおりと、夫の啓補。ある日夫の啓補が気に入って一気に購入しようとしていた建設予定のマンションがあった。そんな展開に不安なさおりはFP(ファイナンシャルプランナー)の無料相談をきっかけに、その物件の調査依頼をした。災害に弱い危険な立地であることを理由に購入をやめるように勧められ、実際にその建設予定地は後日台風で冠水してしまった。それがきっかけで、2人はここのFP事務所の住宅購入サポートプランを申し込む。それから、様々なレクチャーをしてもらいながら物件探しをするが、気に入った物件は、再建築不可だったり、FP事務所の龍太同行で他社不動産紹介物件も回ったが、と中々うまくいかない。しかし、やっととある中古戸建て物件を気に入り、申し込み売買契約を結ぶことができた。契約にあたって火災保険や地震保険のことを何もしらないままでいた2人は勘太に聞いてみた。


第28話 知っておきたい火災保険、地震保険の基礎知識


「うちがいつも取引というか、お世話になっとる保険会社紹介しましょうか?もちろんそこから紹介料貰ったりは全くしてないから、もしよかったら紹介っていう程度ですけど。だからもちろん自分で探して決めてもらってもいいし。火災保険は各社色々だけど、地震保険は、どこ選んでも保険料は同じ。ただ自分で調べて、もう1社は見積もりとって相場を把握しておくことをお勧めしますよ」
「ありがとうございます。もしよかったら、でいいんですが、火災保険、地震保険について基本的なところ教えてもらえますかね。一般的な補償の範囲や、皆が入っているものとか。全然情報がこれまで考えてなかったもあって、頭になくて」
「まず、これが火災保険の補償内容」
勘太は一枚の用紙を2人に見せた

火災保険補償範囲

「火災保険って、火災があったときのものって思っていたけれど、盗難とかもあるのは意外だったわ」
「そう。火災保険は「火災」のみに対する補償って思われがちやけど、この表からも分かるように、火災のほかにも落雷、風災、水災などの事故によって生じた建物や家財、ここでいう家財っていうのは建物内にある家具や衣類とかのことね。それらの損害も補償の対象となるよ。
保険対象、つまり、何かあったときの保険料の対象となるものね。それは「建物」、「家財」もしくは「建物+家財」の3つから選べるのが一般的。なので、例えば「建物」のみを保険の対象とした場合には、家財が損害を受けたとしても保証されないから、そういうのは注意が必要。保険会社各社で色々な商品があるけれど、大まかにわけてこの資料のとおり、住宅火災保険と住宅総合保険にわかれるかな」

火災保険補償範囲2

「なるほど、どちらも地震が対象外ってことは、地震を補償内容に入れたい場合、別途地震保険に加入する必要があるってことかしら」
「そう、地震保険は、別途加入が必要だけど、火災保険の特約というかたちでしか加入できない。ここが大事。つまり地震保険単独では加入できない。それに、主契約である火災保険金額の30%~50%の範囲内と決まっている。例えば火災保険で6万円払っていたら、地震保険の割合は最大50%の3万円までってことね。そして地震の支払い保険金も上限が建物5000万円まで、家財1000万円までと決まっとるんですよ。」
「なるほど、火災保険と地震保険はセットで考えていかないとダメってことね」
「そう、それに地震保険の場合は、もっと細かいこというと、建物の損害の割合、被害の大きさを4つにわけていて、それらで判断されるようになっとるんよ。いずれにしても、1社保険会社紹介するとはいったけれど、もう1社ちゃんと見積もりを取って比較しながら確認したほうがいいよ」
「わかったわ。正直契約にあったっての必要書類の準備やら、引き渡し後のリフォームのこととか、考えなきゃいけないことがたくさんあって、保険会社をじっくり選ぶ時間がないことは確かではあるのよ」
「わかるよ。わかる。だけど、この火災保険と地震保険の加入はフラット35では義務づけられていたりするし、極端な話、物件の引き渡しの翌日に火災が起こってしまって、その時に火災保険加入できてなかったら、本当に大変というか悲惨なことになる。脅すわけじゃないけど。だから、これもすごく大切なことの一つとしてちゃんと確認してほしい。それに」

「それにって、他にもあるんですか」
「いや、こちらが勧めるがままのものに、特に考えず、はいはいと決めていってしまうのは、カモにされていくパターンと同じだから。よくない傾向というか、こちらとしてもやっぱりちゃんと考えて最後までやってほしい。」
「ああ、なるほど、脱カモサポートでしたもんね。」
啓補は思わず吹き出してしまった。
「じゃ、とりあえず、保険会社の方紹介してもらえるかしら。神崎さんのご紹介なら悪い人じゃないと思うし、それと同時並行でもう1社見積もり貰い、比較するようにするわ」
「そう言ってもらえると嬉しい。わかりました、じゃ、保険会社の営業マンにお二人の連絡先を伝えてもいいかな。一両日中に連絡させるよ。打ち合わせで不安なら同席もするしね。」


この時、リフォームのことについて、勘太に相談しようか迷ったが、今日のところはまだしないでおくことにした。


実は、以前に啓補が職場の先輩が紹介してくれたデザイナーの在籍するリフォーム会社と連絡をとり、現地を確認してもらい、つい昨日見積書をもらっていた。私はこれまでの契約の準備書類などについて、かなり精力的に動いていたこともあり、リフォームについては啓補に任せていたところがあった。築15年とはいえ、壁紙の張替えや痛んでいるところの補修、あと費用が許せば、フローリング部分の上張り、浴室やトイレなどの水回りのリフォーム、外壁塗装もしたいと二人で話していた。しかし、手付金プラスで色々費用がかかる中で資金的にこれ以上色々費用をかけたくない、とも思う。だから、リフォームは最低限でいい、ということに二人の結論は一致した。しかし、見積書は200万円を超える金額となっていて、リフォーム内容からしてもどう考えても高い気がして仕方ない。この200万までかかるとなると、何より資金的に厳しくなってはくるし、できればやりたかったフローリングの上張りや外壁塗装や水回りのリフォーム工事も難しくなる。でもせめてフローリングの上張りと外壁塗装は入居前じゃないと中々厳しいからやりたい。ていうか、最低限のリフォームでそんな200万円もかかるものだろうか。。
 私たちは、想定以上に費用がかさんで貯金が減っていくことに、焦りを感じながらも、まずは契約の準備と火災保険を決めることを優先に動くことに決めた。
 火災保険について、勘太の紹介の保険会社の販売の方から連絡があり、数日後、勘太の事務所で会うこととなった。同時並行でネットで見つけた損害保険会社へ見積書依頼をしていたので、そこと比較することにした。
 金額としてほとんど変わらなかったこともあり、今回は、勘太の紹介の保険代理店に依頼することにした。契約は引き渡し日から適用になるように組むということだった。この費用ももちろんかかってくる。やはりリフォームの費用まで足りるのか不安が広がってきた。
そして、契約日を迎えた。


(第28話終わり) 次回は1月3日(日)に更新予定です。

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※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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