ドラフトルーキー1巡目 達孝太

フォックストロットの野球語りたいラジオ 1/5原稿

・とにかくタッパの高さがある。これは大谷翔平を見ればわかる通り、投手としての可能性を飛躍的に上げることのできる大きな要素の一つ。後天的に身につけることはほぼ不可能であるこの類まれなフィジカルのベースを持っているという時点で可能性は抜きん出たものがある。
・フォームは特に気になる癖も持っておらず、このことから彼の肩肘がおそらく年相応の健康体であろうことに疑いの余地はないと考える。球速は高校入学当初が141、高3秋で149。昨今の高校生の球速の伸びを考えればさほどでもない印象だが、それが逆に評価になり得る点で、彼が決してフィジカル任せに球速を追いかけてきた選手ではないことを証明している。彼ほどの体格があれば、力任せに投げても150はゆうに超えるはず。だが見ての通り、彼は決してメカニックの構築をサボっておらず、むしろフォームの確立に非常に丁寧に取り組んできている印象。
・そう考えるとプロに入ってまずやるべきことは間違いなく下半身の強化。しっかりと地面をとらえ、重心をもう少し低く、踏み出す左足をもう一歩前へ出すことができれば155程度はあっという間に出せるようになる。ただ、球速はピッチングの根幹をなす要素の一つではあるものの、それだけで試合を牛耳れるわけではない。投手としてもう一つ持っておかなければいけない武器、それが制球。その点においても彼が作ってきた綺麗な投球フォームは威力を発揮するはず。綺麗に整った投げ方から生まれるのは正しい制球であると決まっているわけでは当然ないが、正しい制球を身につけようと思えば、いつも決まった投球フォームと、それに伴って手に入る安定したリリースポイントは実に有効な手段たり得る。
自分の肉体をきちんとコントロールした上で得られる正しい出力、高校生時点でポテンシャルをイタズラに消耗することなく制御されたメカニック。彼が持つ可能性の大部分はこのフォームの美しさによって担保されている。
・反面、現状だけ見れば即戦力として一年間をローテで回るような化け物じみた活躍は望むべくもないと言える。
まあ、まず高卒ルーキーがそんなに簡単に無双できるような時代でもないが、それでも平成の怪物が引退した今、令和の怪物がまた新たに生まれてもおかしくはないと言える以上、その称号を手に入れるのは少なくとも現段階の彼ではないということはおそらく間違いない。美しいフォームは可能性を包む繭のような役割を果たす一方で、その繭はまだ羽化する前の蛹を中に秘めている。球速149、スライダー・フォーク・カーブ。何か必殺の弾を持っているわけではなく、変化球の精度は平均的な高校生程度となれば、一度や二度のまぐれあたりはあれど、プロの檜舞台で輝きを放ち続けるのは相当困難だと言わざるを得ない。応援する側としても大人しく、サナギが綺麗な羽を伸ばすタイミングをじっくりと待つ覚悟が必要になるだろう。

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