見出し画像

「Webは頭括か双括、紙媒体は尾括」←ホントにそうかなぁ?

一昨年にお声がけをいただいて、昨年まるっと月イチペースで複数の取材記事やコラムを書いてきた某お仕事。今春でいったん契約が切れることになっていたんですが、その後、おかげさまで継続する運びとなりました。ゴールデンウィーク明けから、またバタバタとコンテンツ制作がスタートする予定です。

そのご連絡があった際、どんなテーマを取り上げていくべきか、昨年一年を通して得た反省を踏まえ、どんな改善を行っていくべきか、といったお話をさせていただきました。

それに対してクライアントさんから示唆されたのが文字数制限について。ありていにいうと「ゆったり楽しんでもらうための読み物的なスタイルを改めて、もうちょっとライトにサクッと読めるボリュームにしてほしい」とのことでした。

Webメディアのわりに、結構しっかりめのギャランティを設定いただいているので「いい加減なことはできひん」という思いが先走っていたのかも。また、扱う内容がチョット複雑かつ小難しい場合もあるので、前提や背景の説明、主題を補強するエピソードなどにスペースを使い過ぎて、冗長になっていた部分があったことも否めません。
ま、いずれにしても、記事閲覧の滞留時間などから鑑みて、もう少々短めにまとめてくださいね、っていうオーダーがありました。

となると、です。
Webライティングのイロハとして巷でよく語られている、下記のようなポイントをもっと意識しなければという考えにいたります。

・タイトルや見出しはSEOに配慮しつつキャッチーに。
 パッと見でダイレクトに中身を想起させちゃう工夫が必要。

・導入で、先に結論を述べてしまう倒淑法展開がベター。→PREP法

・記事のテーマによっては、文章構成をさらに簡略化。→SDS法

PREP法
【要点/point】【理由/reason】【具体例/example】【要点/point】の頭文字をとった文章構成モデル。先に結論を挙げてから理由やエビデンスを提示して結論にいたるので説得力のある文章が書ける。

SDS法
【要点/summary】【詳細/details】【要点/summary】の頭文字をとった文章構成モデル。こちらもPREP法と同様、物事を端的に伝える際に有効。

もちろん、タイトリングや各論の整理整頓には注意を払ってきたんですけどね。
つまり、タイトルでしっかり惹起するだけでなく、冒頭部分で問題提起と解決策を書いちゃって、ある程度の全体像を披露し、記事に説得性を持たせる各論はその後に簡潔にまとめていくということですね。いうなれば、刑事コロンボや古畑任三郎パターンって感じでしょうか。

これって、Webご専門のライターさんにとっては、ごく当然の作法であり基本の方法論かと思います。が、起承転結を是とするのが身に染みついちゃってる紙媒体のライターにはちょっぴり厳しい。

もちろん、PREP法を否定しているわけではありませんよ。ハウツー系の記事や、狭いスペースに情報を凝縮させなければならないニューストピックスなどは、PREP法でやらないこともありません。若い頃にたびたびお仕事をいただいていたマガジンハウスさんの『Hanako』なんて、まさしくそんな感じで書いていました。ハナコはやってみるとわかりますが独特の職人技が求められます。やってるライターさんは限られた字数の中で読み手のイメージを膨らませる実力者ばっかです(おっと脱線が過ぎました)。

ただ、わたしがホームグラウンドとしていたのは、じっくりページを繰って、じっくり読んでいただいて、束の間、活字を味わう時間を楽しんでいただいてなんぼの雑誌です。
むしろ、こういう理路整然とした書き進め方は「企画書みたいな記事を書いてんじゃねぇよ!」とか「まるでアナウンサーが読み上げるニュース原稿だな。やり直し!」って教えられて育ってきたんでね(汗)。

文化や歴史を語ったり、旅へいざなったり、ライフスタイルを提案するような読み物は、いきなり筆者の解釈からスタートさせたり、具体的なエピソードから書き始めてみたりが、結構「あるある」なのはこういう理由です。そのあとの話題の拡げ方やまぶし方、集束の巧みさなどで、文章に深みや奥行きを持たせるほうに重点を置きがち。序盤で布石を打ったり伏線を張ったりしておいて、中盤以降で回収するなんてのもそうですね。思いもよらない展開でグイグイ読ませ、そこに支えとなる情報も散りばめながら、最後に結論を持ってきてスッキリとした読後感を与えようとするところは、小説などの創作作品づくりに似ているかもしれません。読者がそういうのを求めているんでね、当然そうなります。

一方ネット記事で絶対正義とされる「タイトルと最初の数行が勝負!」というのも理解できます(尤も、紙媒体だってそうなんスけどね)。
検索してもらって、記事に辿り着いてもらって、ようやくクリックしてもらったのに、欲しい情報に行き着くまで延々とくだらないサイドストーリーや筆者の主張に付き合わせたら、そりゃあ早々に離脱されてしまっても文句はいえません。早い段階で重要点や結論めいたことに触れ、せっかく訪れてくれた読者を飽きさせず、しっかりつなぎとめながら論旨を展開せよという理屈も頷けます。

とはいえ、古畑任三郎よろしく「最初に犯人をバラしちゃうパターン」は、実はその型を破って面白味や個性を塗すのは案外難しいものです。わざわざ「犯人がわかっているのにメチャクチャ面白いミステリー10選!」みたいなコンテンツが成立しているのは、まさにここ。「わかっているけど、その先が読みたくなる」と思わせないといけない。かなり緻密に構造を考えないと、よく情報が整理されているけど、なんだか凡庸……な作文に終わってしまいます。

また、ガチガチに型に嵌めてしまうと、どっかで読んだような表現が並んだり、各パートを綴っていく過程で「それ、さっきもアンタ似たようなことを言ってたよね」となってしまいやすいんじゃないでしょうか。実際、タイトルにキラーワード入れて、冒頭で結論を述べて、その後の締めの部分でまた結論をダメ押しするんですもの。企みなしに書いたらくどくなります。

ライバルとなる他の記事より注目してもらい、ブックマークやクリップしてもらうには、簡潔でありながらも文章力が求められます。文章のみならず、合間合間に挿入する見出しの立て方、挿絵、図表など視覚的な工夫も要するでしょう。

PREP法やSDS法、DESC法といったフレームワークが一筋縄でいくと思ったら大間違いなんですよね。で、Webライターの皆さんには大変失礼な話ですが……。誤解を恐れずいわせていただくと、多くのネット記事はこのどれかに当て嵌まればよいのだと盲信して(あるいは盲信させられて)、一筋縄で済ませちゃっている傾向があると思います。いい記事もいっぱいありますが、つまんない記事もまたたくさん見かけるのは、そのフレームワークに囚われ過ぎていたり、Webライティングの常識に拘泥した書き筋だからという場合もある。タイトルに惹かれて、じっくり読むつもりで記事を開いたのに「え?これで終わり?」って消化不良な記事がいかに多いことか。毒にも薬にもならん記事がいかに多いことか。確かに上述のフレームワークがWebライティングに適している面はあるかもしれませんが、それが必ずしも全能ではないということを申し上げたいのです。

まぁでも、冒頭にお話したお仕事については要改善です。こころの豊かさを感じてもらったり、文章の読み応えに満足していただくというよりは、あくまでも目的に応じた要点をスピーディに伝え、必要な情報を拾って持ち帰っていただくという目的を優先させなければ、ですので。
読み物としての物足りなさを感じさせないようにしながら、読者の皆さんに届けたいことをしっかりわかりやすく書く。あとは制限された文字数の中で、どこまで遊び心を持たせられるか。そこがキモかなと思っています。


【追記】
この記事をご覧になられた方が、ご自身の記事の中で紹介してくださいました。

「私が本記事執筆時点において感じていたモヤモヤを完璧に言語化されている感があります。」

いえいえ; 拝読させていただきましたが、わたしのゴテゴテ感満載の拙文なんぞよりよっぽど、簡潔かつ的確に、PREP法に頼りすぎる危うさを述べられていらっしゃいます。「文章はもっと自由であるべきだ」。まさしく、わたしが言いたいこともそこに尽きるのです。Doiさま、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?