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人生放牧記 なんでやねん登別

長野での勤務を終え実家に戻りしばしの休憩をはさんだ後、登別に行くために荷物をまとめ始めた。いつもは荷物を大きい段ボール箱2個に詰めて先に社員寮へ送り付け、最小限の荷物をキャリーバッグにいれて移動していたのだが、毎回同じ段ボールを使いまわしている為いくら丈夫さを誇る段ボールでもさすがにくたびれてきていた。そこでプラスチックのコンテナをamazonで購入した。ちょっと重いけど頑丈なため、なにかの弾みで潰れたら困る洗剤などの日用品を送るのにはとっても安心で便利である。
そんなわけで今回はコンテナ1個と洋服を詰めた段ボール1個を発送したあと、追いかけるようにして私もキャリーケースを持っていざ登別へ。登別の温泉街の入口には迫力ある面構えの鬼のモニュメントが鎮座しているのだが、9月の雨に打たれた半裸の鬼はいささか寒そうであった。
そうして登別の勤務先へ到着すると、従業員受け入れ担当の社員さんが私を社員寮へと案内してくれた。

1.登別寮に住んでみた
2.ホテルの厨房(皿洗い…?)
2-1.お仕事の概要
2-2アスレチック通勤路
2-3送別会


1.登別寮に住んでみた


今回の社員寮はアパートタイプ。男女別の建物になっており、小さなアパートのような外観。綺麗とは言い難いが、廃墟のような社員寮で暮らした私からすれば相対的に見てだいぶ状態の良い社員寮だった。


個室はユニットバスとリビングのみというシンプルな間取り。リビングには壁際に机と椅子、ミニ冷蔵庫、ミニクローゼットがあり、机と逆側の壁際にはベッドが置かれていた。ベッドの近くに飲み物やスマホなど置いておきたい派閥の私としてはベッドサイドに机が欲しいところだが、あいにく備え付けの机は動かすことができなかった。そこで安全に荷物を運ぶという初仕事をこなしたコンテナは上にものが置けて丈夫という特性を活かし、この社員寮にいる間はベッドサイドテーブルとして活躍することとなった。

部屋に窓はついているものの日差しはほとんど入らない。そして日差しが入らないからだれも気にしなかったのか、短すぎるカーテンが付いており、外の景色がチラ見せされていた。もともと丈が足りてないカーテンなのかと思いきや、カーテンの裾はハサミで切り落とされたようなワイルドな仕上がりだった。なんでやねん。社員寮のカーテン切り落とすなよ。黄緑チェックの切れ端を何に使うんだよ。

洗濯物干し場がなく、カーテンレールからクローゼットのハンガーポールまでをビニール紐をかけて洗濯物を干した。ユニットバスの換気扇をつけっぱなしにしたが逃げきれない湿度がお部屋に引きこもる。湿度が大盛り上がりでバスタオルがぎりぎり乾かない。室内には非常に年季を感じる除湿器が置いてあったので、稼働させてみると

ヴーーーーーーーーーン!!


と除湿機が唸り声を上げた。一晩稼働させた。
そしてバスタオルは乾かなかった。なんでやねん。
あんだけ音出しといて、なんの音だったんだよ。
そんなわけで除湿機にはお静かにお眠りいただくことにした。

食事は勤務先とは別棟のホテルの地下に社食があった。シフトの都合上、朝ごはんは食べに行けなかったが昼と夜は社食で食べられた。ご飯・みそ汁・キャベツはお代わり自由で、主菜副菜を1品づつというルールだったが、ルールを無視する食いしん坊がいるため、夜の仕事終わりに社食にいったら副菜だけ残っていて主菜が何一つ残っていないこともある。
コンビニやドラッグストアが徒歩圏内とはいえ15~20分ぐらい街灯の少ない山道をのそのそ歩くことになるので昼間の明るいうちに徒歩圏内のコンビニやドラッグストアでカップ麺やパンなどを部屋にストックしておかないと空腹で寝ることになるので要注意だった。
社食のある別棟にはお客用の大浴場があり込み合う時間をさければ従業員も利用が可能なのでありがたく温泉につかって仕事の疲れをとった。

徒歩圏内にコンビニとドラッグストアがあるので生活には困らない。また、バスに乗れば水族館や伊達時代村や駅まで行けるし、駅まで行けば電車にってイオンまで行くこともできた。伊達時代村は行ってみたいなぁと思いつつ、私はイオンのおもちゃ売り場で3DSのルイージマンションを買って帰って、ひたすらにお化けを吸い込んだ。


2.ホテルの厨房


勤務先のホテルはお高いホテルで、食事は朝晩コースメニューとなっていた。そんなホテルに派遣された私の仕事は皿洗い、のはずだったが「洗い場より厨房の人手が足りてないので料理の盛り付けをやってほしい」と厨房に入れられた。なんでやねん。洗い場の募集だったやん。
盛り付けとかお客様の口に直接入る料理を扱うってことでしょ。お料理が厨房を出る前の重要工程じゃん。そんな大事な部分に私を使わないでよ!やめて!厨房の板前さんに紹介しないで!私は皿を洗いにきたのよ!嫌ァァァァ!

「こちら、今日から厨房に入るごん吉さんです」
「派遣で来ました、ごん吉です!よろしくお願いします!」
パパ吉の教え:挨拶は明るく元気よく

父の教えが功を奏したのか板前さんにもホールスタッフさんにもあれこれ丁寧に仕事を教えてくれた。配属後のシフト表は私の名前だけ愛称で記載されていた。人生の教訓、挨拶は明るく元気よく。


2-1.お仕事の概要


シフトは2部制で
朝5:30~9:00
夜16:00~20:30
 の時間帯で勤務していた。

朝食と夕食のコース料理の順番を覚え、皿を覚え、盛り付けを覚え、出勤前にメモをまとめ直して予習復習していた。板前さんとホールスタッフの様子を見ながら隙あらば鍋などの調理器具を洗う。ここまでやって時給は洗い場と一緒の職場最低額だったのがいまだに解せぬ。調理補助とまでは言えなくても、せめて洗い場より10円だけでも時給上げてくれればもうちょっとモチベーション上がったのに。

とはいえ厨房で仕事するのは初めてのことだったので職場体験だと思えば楽しいものだった。バーナーで魚の切り身やお肉をサッと炙ったり、ムーススプレーでプシューっとやったり、卵を100個割って解いたり、料理の味見をさせてもらったり。朝食のオムレツなんか、調理師さんがひとつづつ作っていくんだけどツルピカふわふわのオムレツが量産されていく様子はとても良い景色だった。忙しいからじっくり眺めてはいられなかったけど。

ガスバーナーでお肉炙るのが地味に楽しい

2-2.アスレチック通勤路


勤務先のホテルの建物を出て舗装された歩道を進むと、怪しげな小道が山へ続いている。小道を進むと急斜面の獣道が現れる。ここを上った先に社員寮が建っているのだがこの道は舗装されておらず、お気持ち程度の滑り止めと
簡単な手すりしか設置されていないので上るのも下るのもサバイバルなのである。わたしがここの職場にやってきたのは9月初旬だったが11月の初旬には雪がふり、通勤路のコンディションは最も悪い状態だった。冬の初頭に降る雪は水分が多めでズルズル滑る。そして昼間にほんのり溶けかけた後に夜の冷え込みで完全に凍り、もはや滑ることしか許されない。平らな道でさえ滑る危険性が高いというのに、毎日通る通勤路は急な傾斜がついた獣道。そして転びたくない従業員たちが一生懸命踏ん張った足跡はデコボコになってその状態で凍るため、転げ落ちずとも尻や膝をつけばカチコチのデコボコが容赦なく刺さる鬼仕様。仕事を終えてヘトヘトで外に出て雪景色になっていたら絶望でしかない。もう修羅の道である。ベテラン従業員に聞けば滑って転んで山を転げ落ちて骨折した人もいたという。なんでやねん。早く整備せい。

2-3.送別会

11月中盤で派遣期間が満了になる予定だった。ぜひ契約延長を、と勤務先から声がけはあったが最早転勤が趣味となりつつあった私は期間満了で退職して次の職場へ行くことにしていたので丁重にお断りした。厨房の板前さんたちは残念がってくれ、全員の予定が空いている昼の時間帯に送別会をやろうと言ってくれた。たかが派遣なのにそこまでやってくれるとはなんて心温まる展開なの。ほっこりほっこり。
温泉街からちょっと離れた定食屋さんでみんなでお昼ご飯を食べることになった。なんでもそこのカツ丼がおいしいんだとか。「○時までに定食屋集合ね。」という約束になったものの、車はもちろん免許さえ持っていない私はその定食屋までの足がないと伝えると「じゃあ○○の車に乗せてもらっておいで」と送ってもらう約束をした。そして当日。社員寮の前で送ってくれる車が来るのを待った。


来ない。


まぁもう少し待とう。
定食屋まで車で近いのだろうか。約束の時間が近づいている。


来ない。


あまりに誰も来ないので厨房メンバーに連絡すると

「もうみんな揃ってるよ?」

えええええええええええええええええ!!
なんでやねん!!
車で送ってくれるって行ってたのに!
誰も来ないじゃないですか!!


「ごめん迎えに行くの忘れてた!今行くわ!!」

なんでやねん!!
さっきの心のほっこりを返してくれ!!
主役置き去りの送別会ってなんだよ!!
誰を送別しようとしているんだ!

やっと迎えにきて送ってくれたものの、定食屋につくころには先についていた厨房メンバーはほとんどカツ丼を食べ終えたところだった。
なんでやねん!!
もう食べとんのかいな!そりゃカツ丼はあったかいうちに食べた方が美味しいけども!!それだと私のカツ丼もぐもぐタイムをみんなが見守る会になっちゃうじゃん!カツ丼の味がしないよ!

ちなみにホールスタッフの方たちも送別会を開いてくれた。その送別会も社員寮から少し離れた場所にある居酒屋だったのでハラハラしたが、行きも帰りもばっちり迎えに来てくれた。自分の送別会に参加できるか否かでハラハラするとはこれもまた貴重な体験である。


期間満了で勤務終了後、荷物をまとめて社員寮を出た。季節は冬。次の派遣先は再びスキー場のスタッフをやることにした。せっかくなので昨シーズンとは違うスキー場に行ってみることにした。派遣先はすぐに決まり、行き先は小樽近辺のスキー場になった。アンティークな雰囲気がある人気の観光地あり、私も好きな街である。休みの日は街におりて観光でもしようかしら…と思いながら活動範囲内のゲオの位置をしっかり事前確認するのであった。

次回!人生放牧記
「キロロより愛をこめて」お楽しみに!


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