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誰が殺したラジオ・スター

「頼む、ヤツがカフを上げる前に、事態を収めてくれ……」

 深夜、ラジオ局で緊急事態が発生した。人気のラジオDJがアシスタントを人質にスタジオに立て篭もり、今夜の放送で放送禁止曲を流しながら自らの危険とされる思想をオンエアで語り続けることを宣言したのだ。DJは「目が覚めた」と語り、ギラギラとした眼光でブース内カメラを睨みつけていた。

「あの[コンプラ]DJ、ラリってやがる。30分後に番組を始める気だ。放っておけば、我々がその思想を黙認したことになるんだよ!」
「外から止められないのか? 急遽放送休止にするとか……」
「ヤツは放送中もエゴサを欠かさない。こっちが手を出せば、すぐにバレちまう!」
「……承知した。自主規制の時間だ」

 俺は武器を構えて会議室を出た。今日の規制音は銃口から響く。社内コンプライアンスに照らし合わせ、的確な処置をしなければならない。
 スタジオ前の防音扉は厚く、少しの物音なら外に漏れることはないだろう。他のブースはどれもオンエア中なのだ。やるなら秘密裏に、迅速に。

 かつてのラジオスターを殺したのがテレビなら、現在のラジオスターを殺すのはコンプライアンスだ。法律違反よりも直接企業にダメージが届く倫理問題に、秘密裏に対処する必要がある。
 そのために働くのが、俺だ。放送の秩序を守るため、白いコートを返り血に染め、目立つ汚れを洗い流す。求められている自浄作用だ。

 ショットガンをマスターキー代わりに、防音扉ごとブッ壊す。最速でアシスタントを救出し、危険思想DJを[コンプラ]する。簡単な仕事だ。防音扉が内側から開くまで、そう思っていた。

「俺たちの生きる意味を邪魔するなァ!!」

 蜘蛛の子を散らすように現れた群衆は、全員が番組ノベルティのTシャツを着ている。何故だ、立て篭もっているのは1人じゃないのか!?

「……公開録音、か?」

 各々が武器を持ち、眼を血走らせている。厄介なヘビーリスナーの群れだ!!

【続く】


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