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BOOPE(ブーペ) 作者インタビュー

FoUNtainのオリジナルゲーム第三弾『BOOPE(ブーペ)』。

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目的地を目指してメンバーとドライブに出かけ、道中のサービスエリアのトイレに寄りながら誰もウンチをもらすことなくゴールを目指すという協力ゲームである。

今回、その作者の1人であり今回のメインゲームデザイナーでもある東野一星氏に、BOOPEが生まれるまでのプロセス、また魅力について語ってもらった。

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ボードゲーム制作ワークショップイベントから生まれた作品

Q.まず今回のゲームを作るに至った経緯を教えて下さい。

今回僕は初めてのボードゲーム制作だったのですが、きっかけになったのは、滋賀のボードゲームカフェhello coffee standで行われた「クリボーVol.1」というイベントです。
そのイベントは、その日集まった参加者同士でランダムにチームを作り、当日その場で提示された「トイレ」というテーマで一日でボードゲームを作り、プレイできる形にするというものでした。
そこで一緒になったチームメンバーは、皆さんゲーム制作が初体験のメンバーばかりだったのですが、その日出来たゲームが今回のBOOPEの元になっています。

Q.イベントではどのようにゲームを制作していったのでしょうか?

まずはテーマからどのようなことが連想できるか話し合うところからスタートしました。
いくつか挙げていく中で、「トイレ」という言葉からみんなが共通して連想したことが「もれそう」というキーワードでした。

そこから、もれそうな状況でどうやってトイレに行くか、誰が行くのかをゲームにしようと考えました。
みなさんゲーム制作は初めてのものの、ボードゲームをプレイするのが好きなゲーム経験者の方ばかりだったので、まずベースとなるゲームシステムをいくつか挙げていって、それを「トイレ」と掛け合わせようという事になりました。

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Q.その時はどんなアイデアが出ましたか?

「ババ抜き×トイレ」で一人だけ行ける人を決めるゲームだったり、「正体隠匿×トイレ」でみんなは行きたいのに一人だけ漏らさせたい人がいるゲームだったり、「メモリーゲーム×トイレ」でトイレの場所を暗記して暗記できなかったら漏れるだったり…。
みんなが知っているゲームをもとに自分の好きなシステムで意見を出し合って簡単にプレゼンして行きました。
色々な意見が出る中で進めていこうとなったのが、BOOPEの元となった「トイレに行っトイレ」のアイデアです。
このゲームは、「バッティング×トイレ」でみんなでトイレに行くか行かないかを決めて遊園地を目指そうというものでした。

Q.いざアイデアが決まってから、ゲーム制作で苦労した点などはありましたか?

ベースとなるシステムが決まったものの、そのシステムから連想するゲーム感のイメージがメンバーそれぞれ違ったので、まずは既存のゲームからヒントを得ようということになりました。
僕は、もともと人の心理を読み合うゲームが好きだったので、カードゲームの「ブクブク(S・ドラ作)」だったり、「ハゲタカのえじき(A・ランドルフ作)」など、“選択肢が少ない中でいかに相手の心を読んでゲームをプレイするか”というようなゲームを参考にして作る事にしました。

それでも、それをどういう形に落とし込むか、全体をどういう雰囲気のゲーム感にするかが一番苦労しましたね。
また既存のゲームをヒントにするまでは良かったのですが、それらのゲームに引っ張られすぎて、ある程度の形にしてみんなで最初のテストプレイをする段階にもっていくまで時間はかかりました。

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「サービスエリアのトイレに行くか行かないか」というアイデア

Q.ある程度の形にするところまで持っていくのも大変だったと思いますが、他のメンバーと共同で作るという中でどのように具体的にまとめていったのでしょうか?

まず、「トイレに行く」というシチュエーションを想像するところから考えました。
駅でトイレに行ったり、車でトイレに寄ったりという案が出てきて、その中で高速道路のサービスエリアに寄って誰がトイレに行きたいか行きたくないかっていう状況って面白いよね、となって。

じゃあ、それをそのままゲームにしてみようかというところから具体的にテストキットを作り始めて。
まず作ったのはトイレに「行く」「行かない」カードを作りました。
そこでサービスエリアに「寄るか、寄らないか」をみんなで決めるゲームにしようという話になって。

あとサービスエリアを何箇所通過したら遊園地に到着するかという設定にして、サービスエリアに行ったらトイレに行ける、行かなかったらウンチが増えることにしようとなりました。
そのためのサービスエリアカードをとりあえず適当に数枚用意して。

それが決まってからはわりとすぐテストプレイに入れましたね。

Q.テストプレイに入ってからは順調でしたか?

それが、いざテストプレイをしてみたら簡単にクリア出来てしまったり、かと思えば一瞬でゲームオーバーになってしまったりが何回も繰り返されたりしたので、そこからサービスエリアカードをどう上手くクリアできる基準まで持っていけるかをイベントの時間内でひたすら調整していましたね。

Q.「トイレに行っトイレ(仮)」はその日中に完成はしましたか?

そうですね。実際に遊べるところまである程度の納得いく形には出来たと思います。

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Q.その日は他の参加者の人には遊んでもらったんですか?

ゲーム作りの時間が終了した後、各チームが制作したゲーム内容を発表して、その後の自由時間があったので他チームの参加者の人にもプレイしてもらいました。

Q.周りの反応はどうでしたか?

反応は良かったです。ルールは単純だけど考えどころがある、という僕らがもともとやりたいと思ってテーマにしてたことをみんなが感想として言ってくれてたのが嬉しかったですね。

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製品化したい、から『BOOPE』は生まれた

Q.そこで出来たゲームが元となり、今回製品版として「BOOPE」は発売されることとなりましたが、ワークショップで生まれたゲームはどのようにしてその後製品化されたのでしょうか?

その日作ったゲームは色んな人が面白いと言ってくれたし、製品化してもいいんじゃないかっていう声もいくつかいただきまして。
その周りの反応をきっかけに、もっと色んな人の意見を聞いてみたいと思ったのでそこからイベントが終わった後も製品化するにはどうしたらいいかをぼんやり考えはじめました。

でも、実際の販売するゲーム制作に関しては未経験だったというのと、制作資金を自分たちで用意するのは難しいというのもあって。

最初は今回のゲームで企画書を用意して、ボードゲームの出版社やメーカーに提案するだけしてみようか、なんて話も出ていたんです。
でもちょうどその頃に先程のイベントの主宰者でもある橋口さんから「ウチ(FoUNtain)で出してみる?」って話をもらって。
(※FoUNtain・・・ボードゲームブランド。代表作「WOCHA」「PIQON」他。)

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橋口さんもイベントの時から「トイレに行っトイレ(仮)」は気に入ってくれたみたいだし、もともと僕もFoUNtainのブースの手伝いをしたりしたこともあって近い存在ではあったので是非!となりました。

Q.製品化までは順調に進みましたか?

それが、イベントの後も何度か「トイレに行っトイレ(仮)」を何人かの人たちとプレイしていたのですが、慣れてくると現行のルールのままでは、誰がトイレに行くか行かないかが暗黙の了解的に状況で分かってしまって、そうなるとバッティングのドキドキもなく、プレイが作業になってしまう。
そこが根本的にこのゲームの問題であることが分かったんです。

また、元々ワークショップで生まれたゲームなので、1ゲームのプレイ時間やクリアまでが短かいというのもあって、橋口さんと相談する中で、いざ製品版にするには何回も遊んでもらえるものにしなければいけないね、という話になりました。

それで元のゲームのベースやフレーバーはそのままに、プレイ時の作業感をなくすためにはどうしたらいいかを橋口さんと一緒に考えはじめました。

お互い色々なアイデアを出し合ってはボツってを繰り返していく中で、それまでの「行く」「行かない」という二択式をやめて、全員がそれぞれ自分が所持しているウンチからトイレで出したい量だけ握ってせーので公開、というアイデアが生まれて。
いざ、テストプレイしてみたら意思疎通ができそうで出来なかったり、出来た時の達成感があったりですごく面白かったんです。
求めてたのは「これだ!」ってお互いになってこのアイデアがその後BOOPEに採用されました。

それでさらにそのアイデアに合わせてサービスエリアのトイレの種類も絞ったり、調整したりして、何度もテストプレイを重ねて完成に向かっていきました。

プレイ俯瞰写真

Q.ボードゲーム制作をしていると、つい違う方向に行ってしまったり、着地させるまでに迷子になってしまったりすることも往々にしてあるかと思いますが、BOOPEを製作する上で軸にしていたこと、大切にしていたことはありますか?

元々はワークショップで出会ったメンバーのアイデアから生まれたゲームですから、そのベースの部分であったり、テーマをできるだけ崩さず残すことは常に意識していました。
あと、やっぱり僕がゲームに求める「誰でもとっつきやすい単純さ・簡単さ」はなくさないよう意識していました。

Q.ボードゲームは明確な答えがない分、どの段階で「完成!」とするかの判断がとてもむずかしいと思いますが、BOOPEの完成を意識できたのはどのタイミングでしたか?

今回、チュートリアル的な1面から始まって最終ステージの6面までのステージ制をBOOPEでは取り入れているのですが、プレイヤーが目指す指針が出来たことで難易度設定を決める目安にもなったし、また後半ステージの難易度調整に苦悩していた時に特殊タイルを追加するなどしたことでいよいよ完成が近づいてきたなという実感はありました。

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Q.今回、自身初となるゲーム制作の経験はいかがでしたか?

まずは楽しかった。その一言です。

ゲームを作っている途中途中でひとつのアイデアがいざプレイして「これでいい!」と着地した時の嬉しさも味わえたし、完成できたと思ったアイデアが何回も振り出しに戻る、難易度の調整なども含めて、ゲーム作りの難しさも同時に味わえたので、そのトライアンドエラーも含めて楽しかったです。

Q.あらためて今回のゲーム『BOOPE(ブーペ)』についてお聞きします。注目してほしいポイントなどはありますか?

まずはルールがとても簡単・単純です。
メンバーの互いの気持ちを合わせないとトイレに行けないし、クリアも出来ないので、やっぱり相手との読み合いのコミュニケーションが重要になってくる点が一番ポイントですね。

ただ、BOOPEははっきりした会話ができないルールにもなっているので、より相手の表情とか雰囲気から考えていることを読み取るのが難しいのでそこがしんどくも楽しいポイントかなと思います。

Q.どんな人におすすめですか?

初めてボードゲームする人とか、心理戦が好きな人にも遊んでみてほしいです。あと、仲が良い友達同士や、反対にまだそこまで仲良くなってない人、もっと仲良くなりたい人にもコミュニケーションをとるきっかけとしても遊んでみてもらいたいですね。

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Q.それでは最後に。またゲームを作ってみたいと思いますか?次つくるとしたらどんなゲームを作りたいですか?

さっきの話でも出ていたように僕が好きなゲームはやはり「シンプルなゲーム」です。
やることは単純なのに、考え出すと悩ましい。そんなゲームが好きなのでそういうゲームをこれからも作ってみたいし、初めてボードゲームを遊んだ人が「楽しい!」と思ってもらえるようなゲームをこれからも作っていきたいですね。

■ ゲームマーケット BOOPE紹介ページ
http://gamemarket.jp/game/boope%ef%bc%88%e3%83%96%e3%83%bc%e3%83%9a%ef%bc%89/

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FoUNtainは「“楽しい”を拡張する」ボードゲームブランドです。http://unand.co/fountain/