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ショートショート #11 『配信したがる餃子』

「ねぇ、アサコ、アンタのインスタさぁ、餃子ばっか上げてない?」
「ないない。餃子なんて、ここしばらく食べてないし」
「じゃあ、これは?」
 焼く前の餃子をびっしり並べた中華鍋が写っている。
「何これ!」
「昨日アンタ上げてるよ」
「アレ? 昨日上げたのは中華鍋の中で丸まってる猫のはず。てか、これ、うちの鍋かも」
「じゃあ、これは?」
 水餃子をびっしり浮かべた湯船に浸かる女の肩口という、際どい写真。
「キモ! うちの湯船じゃん。一昨日は、猫と風呂入ってる写真上げた。このアングルで」
「アンタ、名前変えた?」
「 変えてない」
「gyozazanmai だったっけ」
「マジで⁈  それ、違う人のインスタだよ」
「でも、写真はアサコだよ」
「キモ!」
 過去の投稿を確認すると、写真の猫が全て餃子にすり替わっている。
「てか、アンタの写真も変だよ」
 自分のプロフィール写真の耳が、餃子になっているのを発見するアサコ。

 くれぐれも乗っ取りにはご用心。

(410字)

亀戸餃子は和芥子と老酒でいただく。

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