すこやかな成長のために必要なこと、不要なこと|クラシコム代表 青木耕平【出版記念企画 第五回】
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すこやかな成長のために必要なこと、不要なこと|クラシコム代表 青木耕平【出版記念企画 第五回】

foufouは服屋さん

2020年 9月に出版されたfoufou初の書籍「すこやかな服」。この「すこやかな服」というテーマで、ファッション業界のこれからについてお話を聞く対談連載の最終回です。

最終回のゲストは、『北欧、暮らしの道具店』を運営する、株式会社クラシコム 代表取締役の青木耕平さん。『北欧、暮らしの道具店』は、みなさんご存知の通り、インテリア雑貨を中心としたECなので「服」には限りませんが、まさに「すこやかな成長」を掲げている青木さんの経営思想に、僕はとても刺激をもらってきました。

今回の対談をご依頼したときにも、二つ返事でOKしてくださった器の広い青木さんと、「すこやかに」成長するためにどうしたらいいか、お話しさせていただきました。

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【PROFILE】
2006年、株式会社クラシコム共同創業。2007年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業。「フィットする暮らし、つくろう。」というコンセプトのもと実用的でありつつ暮らしを彩るものを独自の視点でセレクトして販売している。現在は、EC事業のみならず、WEBサイト上での日々の暮らしに関するコンテンツ配信や、企業とのタイアップ広告、Youtubeチャンネルなど多岐にわたるライフスタイル事業を展開中。

機嫌よくいるために「叶わない期待」をつくらない

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コウサカ:数年前、foufouを立ち上げたばかりの当時、同じようにインターネットのお店として成功されていた「北欧、暮らしの道具店」を知って感動して、青木さんの出ていた記事を全部読み込みました。その後、青木さんがツイッターで、僕が取材された記事に、「共感しかなかった」ってコメントして引用リツイートしてくださったのがきっかけでつながって。あのときはむちゃくちゃ嬉しかったです。

青木:ああ、そっか、そうでしたね!

コウサカ:前に拝見させてもらった青木さんが記事の中で「弱者の戦略」みたいな話をされていて、そこにとても共感したのですが、会社が成長した今でもそういった意識はあるんですか?

青木:うーん、正確に言うと「乏しい」っていう感覚ですかね。リソースも知識もない中で起業したので。弱者のストーリーにも2パターンあって、弱い者が強くなることで勝つのか、弱いまま勝つのかでいうと、後者の方が面白い。のび太くんがドラえもんの助けを借りて弱いまま勝つのが面白いのであって、めっちゃ鍛えて強くなってジャイアンに勝つわけではない。

コウサカ:たしかに(笑)

青木:僕は努力が苦手なので、自分が「機嫌良くいられる」ように、頑張りすぎない目標設定をするんです。このままでいいじゃんっていう言い訳。ビジネスのいいところって自分でルールを作れるところですから。

コウサカ:自分でルールを決めてしまえば、逃げやすいですよね。

青木:そう。だから、自分が勝てそうなルールのときだけ参加する。得意じゃないルールのまま平気で飛び込める人もいると思うけど、僕はできない。

コウサカ:とはいえ、なにか新しいことをはじめる時、チームみんなが「機嫌良くいられる」って結構難しいなと。これだけの人数でどうやってやっているんですか?

青木:何が人を不機嫌にするかっていうと、それは「叶わない期待」なんですよね。社員だろうと、お客さんだろうと、期待値に対して結果が下回ってしまうということが、不機嫌をつくる。

そうならないためは二つの選択肢があって、「成果をあげる」か「期待値を下げる」か。このチューニングが、集団の「すこやかさ」を決めます。絶対負けないっていう状態にならないとやらない。「失敗さえ成功だよね」っていう物語ができているとか。

コウサカ:僕らも受注生産ではなく在庫積むっていう時点で、リスクを取っているように見られるんですけど、ロジカルに量を見立ててはいます。残しすぎるとどんどんきつくなってしまいます。

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必然性のあるイノベーションのための文脈

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青木:リスクを取らなくても、イノベーションは起こせるんです。僕らが起こした大きなイノベーションでいうとこれまで3回くらい。でもそれに対しては3年くらいじっくり考えていたんです。

そのうちに、ある日何かが起こって、その瞬間見つかる、みたいな感じなんです。シンデレラのガラスの靴みたいなもんで、ある日「はまった!」という瞬間に出合える。

コウサカ:ファッションブランドも、ただ単にインフルエンサーというだけでも、物の質がいいというだけでもだめなんですよね。カルチャーや文脈を知ってる人がやらないと、生まれた服に必然性がないから。

青木:そう。「コンテクスト」「アティチュード」こそが価値であって、モノやサービスはそれを伝えるためのメディアでしかない。だから、なにか新しいことをやるにしても、突然ぽんと飛ぶのではなく、少しずつ成熟させていく。時を経て、振り返ると大きく変化していたねっていうのは、全力で肯定します。

お客さんとの距離感のとり方

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コウサカ:foufouのライブ配信を始めるのに、最初は結構びびっていたんです。綺麗めのデザインで、「すこやかな服」とか言ってるのに、デザイナーがおしゃべりな面白キャラでライブ配信はじめるっていうのは、だいぶイメージが飛躍するのではと。でもやってみたら全然お客さんにも喜んでもらえて。いまやお客さんたちに僕が「配信大好きお兄さん」と呼ばれるくらい定着してます。

青木:すごいあだ名(笑)。いやーめっちゃいい。

コウサカ:もしかすると、お客さん自身が、勝手に「憧れ」と「親近感」の距離感を保ってくれている部分もあるのかもしれません。ディズニーランドに裏の世界があるっていうことを知ってしまったとしても、行くときは「夢の国」として楽しもうとするような感じ。

青木:へええ。相手が距離感を取ってくれているっていう発想はなかったなあ。それすごく面白いですね。

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損得感情から抜け出して買えた、ということが一番嬉しい

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コウサカ:それって、とても健全な状態ですよね。最近よく「愛されるブランドにするためにはどうしたらいいんですか?」って無茶苦茶なことを聞かれるんですけど、何してるかって、目の前のお客さんが喜ぶことをいつでもできる状態にしているだけなんですよね。

青木:その質問自体がなんだか・・・好きな人もいないのにモテたいみたいな、本末転倒な感じがする(笑)。だから「ファン」っていう言葉も違和感があって。お店のファンってほんとにいるの?って思う。お客さんがこれくらいかなと思っている期待値を越え続けているから、ただ信頼してもらっているだけだと思っています。それが「愛される」という状態なのかは分からないけど、僕らがお客さんを好きでい続けられればそれでいい。

コウサカ:とはいえ、以前と比べて相当多くの人が利用されていると思うのですが、自分たちが愛せなさそうな、というと失礼ですけど、あんまり気の合わないお客さんが来てしまうことはないんですか?

青木:うーん、意外と大丈夫ですよ。というか、損得で判断するレベルの人にとって、うちって得する要素があんまりないんです。foufouも同じかもしれないですね。うちのスカート重いですよって言ってますよね。

コウサカ:たしかに、損得を忘れさせるっていうのはめちゃめちゃ大事ですね。

青木:それこそが究極のサービスですよ。損得を考えているときの自分って、あんまり好きじゃないことも多い。だから、損得から解き放たれて満足している、という状態になれるのが、最高の体験価値なんです。

foufouの服が他と比べて高かったとしても、なんとなく欲しいって思っている自分がいる。その損得勘定っていう小さな箱から抜け出して、「買う」っていう決断ができたときが一番嬉しいんです。

コウサカ:損得を越えて、それでも好きだって言ってくれる人は、きっとお互いフェアですよね。

事業の成長は、子供の成長と同じ

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青木:世界って意外と広いんですよ。だから自分たちで小さくする必要はない。良いビジネスって生き物と同じで、自然と成長したがるんです。だから成長期の子供に、お腹いっぱいご飯食べさせてあげるようなイメージ。

無理に成長しなくてもいいんだけど、伸びるだけ伸ばしてあげないと、成熟するチャンスも得られなくなってしまう。コウサカくんも、ブランドをどのくらいの大きさにしたいんですか、とか聞かれるでしょ?

コウサカ:聞かれます、聞かれます。しかもなぜか勝手に、大きくせずに、ニッチなブランドでやっていきたい人だと思われているんですが、そんなことはないです(笑)。

青木:僕もずっとそう言われてました。まあ、突然ドーピングして大きくしたいとは思わないけど、自分の子にしては思ったより背が高くなるなあくらいな感じで。

コウサカ:僕も、無理に大きくしようとは思わないですね。

青木:だって、親が自分はできないのに子供には医者になれとか、弁護士になれとか言ってたらうざいじゃないですか。でもいい人間ではあってほしいから、ちゃんとした倫理観は教えたい。結果として、小さいままでも大きくなっても、どっちでもいいんです。

コウサカ:青木さんは、「終わり方」って考えたりしますか?

青木:一時期すごい考えてましたね。

コウサカ:無理に続ける必要もないから、関わっている人に全員にちゃんと還元した上で幸せに畳むということができたらいいなって。終わり方が美しいブランドってあんまりないから、どう死ぬかも考えたなと思っていて。

青木:僕は「武士道というは死ぬことと見つけたり」という言葉が好きで、毎日「今日死んでも悔いはない」って思えば一日を良く生きられる、という意味なんです。死を意識することは、今を良くすることにもつながりますよね。

ただ、綺麗に終わるって自分のエゴな気もしてきて、それって本当に重要なことなのかなって。でも自分が退くときは、ちゃんと他人に受け渡せる形にする必要はあると思っているので、大変だけど上場する準備はしています。

コウサカ:なるほど。

青木:でも、無理して伸ばすとかはやらない。でも今のところ結局毎年勝手に伸びちゃうんです。

コウサカ:僕も、絶対にクリアできるであろう目標しか設定しません。すごい低く設定しておいて、さっさと達成したりして。そうじゃないと、楽しく続けられないですよね。

青木:そうそう。予算目標とかすぐ引き下げますよ、うまくいってなかったら。ギリ達成とか、ギリ未達っていうくらいを続けていかないと、メンタル病みますから。無理せず、いつの間にか伸びちゃったんだよね、くらいの感じでいたいですよね。

ーー対談後に。


対談の中でも話題にしたのですが、僕は数年前、下北沢B&Bで開催されたクラシコムの青木さんと佐藤さんの対談イベントに応募初日に申し込んで聞きにいくくらい「クラシコム」という会社に、いや青木さんという人の考え方と姿勢に憧れていました。

というのも僕がやっているfoufouもインターネットを軸に活動しています。またクラシコム的に言うと「フィットする」お客さんに向けて「チャーミング」にコミュケーションをし「オルタナティブ」な消費を実現したいと言う根幹にある想いや、対談の中にも出てくる「始めたときは乏しい」状態での始まりだったことなど個人的にシンパシーを感じる部分が多かったのです。

青木さん自身が「怠け者体質」であること「頑張り続けることが苦手」なこと、「あくまで自然体に事業を続けていきたいこと」など一般的なビジネスの視点では「マイナス」とされることをさらりと(見えるだけだと思いますが)視点を捉え直し「プラスの要素」に変えてしまいます。そんな風にやわらかな思考で僕もこの時代でお店を続けていきたいです。

最後に、近い未来やりたいことをお話してくださったのですがそれはまるで「少年のように」これからの計画を少し教えてくれたのがとっても嬉しかったです。

対談から数週間は色々と考えすぎて頭を冷やしきってから書いているのですが、、最後はただのファンになってしまった。笑

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※撮影は緊急事態宣言前にクラシコム本社にて行いました。

(写真:井崎竜太郎、文:若尾真実、編集:角田貴広)


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