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「買いたいのに買えないから疲れました」というメッセージが届いた時。

「売れ残り」とは恐ろしいことだ。需要がないとみなされた商品たちは「売れ残り」とされ「セールになり」最後には廃棄されていく。一つ一つ丁寧に作られた商品は誰の袖も通らずに灰になる。

考えてみると、服における「売れ残り」ってなんだろうか。食料品などの期限があるなら「売れ残り」はわかるが(物としての限界はあるとはいえ)服に「賞着期限」なんてない。"流行"という極めて曖昧な指標における「期限」はあるのかもしれない。

ということは「売れ残り」とは売る側が期限を決めているから「残る」のであって「売り続けている」うちは「残り」ではない。

そう思ったのがfoufouの製品で販売当初からゆっくり数年かけて定価で売り切れて、また再販希望が届く商品などが現れたことが理由だ。数年もセールをせずに続けていたからわかったことだし、なくなったらまた再販の要望が生まれたことにも驚いた。

僕が服屋を始めた時は個人でやっていたので完全なる自転車操業だったために「売り切って作る」これしか知らなかった。資金繰りもできないので仕方なかった。そうすると希望者全員に届けることは難しかった。今の体制になってからもその癖で在庫を持つことは恐ろしく思えた。

すぐに完売になるとお祭りのように盛り上がって見えたが僕は手放しに喜んではいなかった。僕自身は行列を作って限定の服を買うことはあまりしないし、そういうメーカーになりたいわけじゃない。僕もいまだに買えていないPS5のように争奪戦をしたり抽選販売に何度も応募して購入することを推奨したくはない。

できればいい出会いをしたり心待ちにしてワクワク心地よく買ってもらいたい。エレガンスな豊かな気持ちを大事にしたい。

それが目に見えたのはある日に届いた「買いたいのに買えないから疲れました」と言うメッセージだ。セールや大量廃棄、消費を急かす広告などの問題に疲れてほしくないから作ったfoufouに「買えないから疲れた」という文章を見たときに申し訳なさでいっぱいになった。

そして決定的になったのが冒頭にも書いた販売当初からゆっくり数年かけて定価で売り切れて、また再販希望が届く商品などが現れたことだった。

またそのことをSNSに書いたところお客さんたちから「ゆっくり考えられることは嬉しいです」というメッセージをいただいた。

そうして「買えないブランド」にならないために「web展示会」というのをまず始めた。顧客さん向けに「先行で上限なし」で商品を予約できる。今、foufouを定期的に見てくださっている方にはいいシステムだと思う。

そして人気のTHE DRESSというシリーズを「完全受注生産」でこちらも上限なしで月1で予約を取ることにした。

またさらに「シャツやスラックスなどの普遍的な大定番」をいつでも買えるように在庫を持つことにも決めた。今、生産チームの方々が頑張ってくれている。

全ての商品がそうなるのは流石に難しいし季節限定の物は出したりもするが基本的な方針を大きく変えていきたい。

こうなるとおそらく「買えないという希少価値でバズったり、買えないから人気」とはならない。foufouも僕らがそう意図しなくてもそういう目で見てもらっていただろうし、だから欲しいという人もいたのかもしれない。インターネットで服だけなく様々なメーカーが増え「開始◯分で完売」というリリースを多く見かける。今の多くのブランドたちはある意味でそれが一つのブランドの証でもある。

僕たちはそれを捨てていく。規模も変わったし守らなければならない物も増えた。もっとメーカーとして長い目で見なければいけない。ゆっくり時間を遅らせて大切に作っていかないといけない。

これは僕たちがもう次の場所を見ていて、そこへ着陸体制に入っていることの始まりであると頭の片隅に入れておいて欲しい。foufouはまた変わる。同じ場所に居続けることはしない。

つまりお楽しみはまだまだここからということ。


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