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20cmフルレンジスピーカーの魅力

2023年にフォステクスは50周年の節目となる年を迎えることとなりました。
(フォスター電機株式会社が生んだ、フォステクス株式会社は1973年7月創業。)フォステクスブランドの商品を皆様にお届けして50年になります。
記念すべき節目の年に歴史を振り返りながら、大口径のフルレンジスピーカー(当時は中口径?)の魅力に迫りたいと思います。
懐かしい方も、これから知っていただく方にも当時の資料をご覧いただきながらたっぷりとお楽しみいただけたらと思います。

「フルレンジスピーカーのススメ」でおなじみの、評論家の炭山アキラさんと対談させて頂きました。

司会 今日のテーマは、20cmフルレンジスピーカーの魅力に関して、歴代の20cmフルレンジ、とりわけ数字の末尾が8となっているフルレンジを中心にお話をしていきたいと思います。

炭山 円形フランジのダイキャストフレームモデルバックロードと言うことですね。

乙訓 「フルレンジスピーカーのすすめ」と言う点では、前回のセッションと同じなのですが、今回は8インチ、20センチフルレンジについてお話をお伺いしたいと思います。歴代の限定モデルが多くなります。

乙訓 これらのモデルはバックロードホーン用として出ているんですが、長岡先生は共鳴管でも使っています。
バックロードホーンの魅力、歴代のFE○○8 というモデルが搭載されたバックロードホーンの魅力についても語っていただければと思います。

乙訓 フォステクスにある資料で一番昔まで遡ることが出来た8インチフルレンジは、1968年4月のFE203です。このときはまだ「フォスター」ブランドで、FE163、FE203というラインナップです。

1968年4月に配布されたカタログより
FE-163,FE-203の2機種のスペックが記される

炭山 この時すでにFE163も出ていたんですね?

乙訓 そうです。
古いカタログだと、1963年のものも残っていました。

1963年に配布されたカタログより
様々なタイプのスピーカーが並ぶ

途中、SRというモデルもありました。これらはハイコンプライアンスのモデルです。

1969年10月に配布されたカタログより
ハイコンプライアンススピーカーとして3機種のスペックが記される

FE203と長岡鉄男の出会い

炭山 FE203があるからこそ、日本のバックロードホーン文化は花開きました。このモデルと長岡先生がある日、秋葉原の店頭の見切り棚で出会わなければこんなことにはなっていなかったわけです。

乙訓 バックロードホーンの話になると、長岡先生のお話をしなければなりません。その時FE203が売れずにそこにあったところからスタートするのですね。

炭山 「パッと見た瞬間にピンときた。よく知らないメーカーの製品であった。」と。それを4つ買って、苦労して草加の自宅まで持ち帰ったそうです。その当時はナショナルのゲンコツ(EAS-20PW09SA)がついていたそうですよ。

炭山 その前のユニットはただ能率が高いだけでハイファイではとても使えないようなものだったそうです。ゲンコツに交換して「バックロードホーンもハイファイでいけるかもしれない」と思っていたところに FE203 を見つけたそうです。

炭山 取り付けて、音が出たところですぐにフォスター電機に、すぐに音を聴きに来るよう電話したんだそうです。当時のフォスター電機の担当者は「オーディオの偉い先生から電話があって大変だ」というような感じで、慌てて向かったそうですよ。

乙訓 その後D-7という20cmフルレンジを横に2つ並べたバックロードホーンが発表されることになるわけですが。

炭山 その時のユニットはFE203です。

1973年1月に配布されたカタログより
FEシリーズの使用方法が記される
1977年2月に配布されたカタログより 
FOSTEXのロゴが加わった
さらに詳しい内容が記される

FE206Σの登場、ダイキャストフレームへの進化

乙訓 1983年11月にFE206Σが発売されました。このモデルからはダイキャストフレームになりました。当時まだFE203Σもしばらく併売していました。FE206Σが出た段階ではまだフレームが四角いのでD-7に取り付けられました。


My Original Sound Vol.10
バックロードホーンスピーカーの紹介がされる
FE206Σと長岡鉄男先生ご設計のD-7MKⅢ

炭山 FE206Σが出た時はカッコイイなと思ったものです。FE106Σはもうあったのですか?

乙訓 FE106Σはまだです。20cmが先行しています。確認できた範囲ではFE106Σが最初にカタログに登場するのは1985年4月です。

FE106Σ/FE206Σの取扱説明書
(1985年4月)
使用方法が記される

炭山 長岡先生も発売当初はそれほど注目されていなかったのかもしれません。ユニットの登場からスワンの発表まで1年近くも発表までタイムラグがあります。

乙訓 FE206Σ 用に発表されたのがD-50(長岡鉄男氏設計のバックロードホーン)ですね。

司会 D-70を作る前に試しに1発のものも作ってみようというモデルがD-50だったと思います。

炭山 よくもまぁあんなに複雑なものを作られたと思います。

司会 FEシリーズの型番の末尾の数字は基本的にはフレームの違いですか? 3、6、8と来ていますが

乙訓 基本的にはそうです。3は4になったり、最近では以前とはまた違う意味で3とか6が使われています。

炭山 防磁タイプの「7」もありました。

防磁タイプのFE「7」 シリーズの取扱説明書
(1991年4月)
防磁タイプのFE「7」は5種類の口径で展開した

乙訓 FE○○3からFE○○4になったときはガスケットが紙から樹脂になったり、ネジを締めてもフレームが凹まないように
ネジ部を落とし込んだ形状にしたりしました。
1982年12月のカタログ価格表では、FE163とFE164、FE203とFE204は併売されています。(価格表は非公開です)

司会 磁気回路と振動系は変わらないですか。

乙訓 FE204からFE206Eに変わるときにマグネットが145mm径と大きくなっていますね。

FE206Eの取扱説明書

乙訓 さて、話をFE206Σに戻しまして、このユニットを使ったD-50で新たなシングルのバックロードホーンが始まるわけです。

炭山 それまでもD-3、D-3MkIIなどはありました。

続く

炭山 アキラ プロフィール
1964年、兵庫県生まれ。1990年、バブル期の人手不足に乗じて共同通信社AV FRONT編集部へバイトとして潜り込み、いつの間にか隣のFMfan編集部で故・長岡鉄男氏の担当編集者となる。2000年、長岡氏の急逝により慌ててライターへ転身し、現在に至る。

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