ひこにゃん

日本にはゆるキャラといわれる生命体がいる。有名どころでは熊本のくまモンや千葉のふなっしー、などなど。みうらじゅんがその名付け親であるが、彼もここまで大きな市場になるとは思っていなかっただろう。今や各市町村に一体は必ずいるゆるキャラ。まさに現代日本はゆるキャラ戦国時代である。

日本人なら誰しも自分の推しのゆるキャラを心の中に住まわせているはずだ。わたしにとってのそれは彦根にいる「ひこにゃん」である。ひこにゃんは誕生が早いことからゆるキャラ界のリーダー・絶対的存在の、兜を被った猫型キャラクターである。絵のひこにゃんも可愛いが、何よりも立体になった着ぐるみのひこにゃんは驚くほどに、ため息が出ちゃうほどに可愛い。白いもち肌に少女のような可憐な仕草、役所の人たちには「もち」と呼ばれているらしい。

いわゆる犬派のわたしであるが、なぜかひこにゃんのことが気になってしかたがなかった。とにかくビジュアルが好きだったのだ。

一度ひこにゃんに会いに彦根に行ったことがある。ひこにゃんは彦根城に住んでおり、その周辺に1日3回ほど現れ、ディズニーでいうところのグリーティングのようなことをしてくれる。わたしが行った時は城内の休憩所のような建物でひこにゃんに会うことができた。登場する時、ひこにゃんはついたての向こう側を通って正面から現れるのだが、なぜかこのついたての向こうでもじもじしている。ひこにゃんの首元の鈴の音がちゃりんちゃりんと聞こえる。ひこにゃん、我々を焦らしてくるのだ。ここですでに、見えていないのに可愛い。さらにそのついたての下の隙間からひこにゃんは自らのもふもふのつま先を出してきたのだ…憎い!!!あまりの可愛さに、わたしを含めその場にいた観客たちはメロメロになった。まだ見えてもいないのに。

その後ちゃんと登場したひこにゃんは付き添いの市役所の人にあれやって、これやって、などと指示を受けて愛くるしいポーズをとったり、ただただ歩いてみたりして我々に写真を撮られまくっていた。好き放題に見えて実はしっかりと観客を意識した動きで仕事をこなすひこにゃんのサービス精神にわたしは心を打たれた。ビジュアルが好きなんて軽率なことを言った自分を恥じる。ひこにゃんはめちゃくちゃ仕事のできる白猫であった。ひこにゃんは喋らないし文字も書かない。そのため何を考えているかは我々にはわからないのだが、そんなことはどうでもよくなるほど、ひこにゃんがそこにいてくれるだけで我々は幸せを満タンに感じることができた。思想なんて関係ない。争いはどうして起こってしまうのだろう。こんなにひこにゃんは最高なのに。

いまも時折、仕事で疲れた時などひこにゃんの写真を見てほわっとする時間を設けている。可愛さが人を、地球を救っている。先日、市がひこにゃんへの予算を計上しないというニュースを知ったがどついたろかと思った。みんな幸せになりたくないのか?とりあえず一度ひこにゃんに会ってきてほしい。

みんなが会いに行かないからわたしが行く。ということで今度の連休にまたひこにゃんに会いに行こうと思う。実は今年のお正月ひこにゃんに年賀状を書いたところ、彦根城への招待券となるお返事をいただけたのだ。ひこにゃんに会える、考えただけで幸せ。とても楽しみだ。生まれてきてくれてありがとう。

#ひこにゃん



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