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パンダフルじゃない…楽天 現役店舗運営者が感じた共通の送料無料ラインの真実

ここ最近大きな話題となっている楽天の共通の送料無料ラインについて、1月29日に開催された楽天新春カンファレンス2020で、三木谷社長が3月18日に正式に導入することを発表しました。

個人的には「やっぱりな」という印象。
なぜなら、このようなことは今に始まったことではないからです。

ここ数年を遡っても色々あったわけで。約6年間、楽天市場の店舗運営に関わった身として、現場の真実から感じた3つのことを記し、そのうえで今回の送料無料について意見を書きたいと思います。

1:楽天市場(三木谷社長)はオープン時の苦悩を忘れている…?

今でこそ巨大なモールとなっていた楽天市場も、20年ちょっと前はなかなか出店してもらえずに苦戦していたと三木谷社長は振り返ります。

全国を周り、出店をお願いするもなかなか理解が得られず酷評される日々…無理もありません。当時、インターネットで商品を買うと言う行為自体が世の中に浸透していなかったためです。

しかし三木谷社長をはじめとした創業メンバーは、インターネットの力を使って、地方の商店や大きな店舗を持たない個人商店でも、全国規模で展開する大企業と同じ土俵で戦えるようにしたいという情熱を持っていました。

地道な努力の積み重ねと一部の店舗が理解してくれたこと、そしてとある地方の成功事例がきっかけで、楽天市場の注目度が一気に高まるようになったわけで。

つまり、地方の商店の協力と成功なくして、今の楽天市場は存在していません。しかし、楽天が成長していくに伴い、創業時の情熱や地方の店舗に感謝するという気持ちが行動に表れていないのが実態です。

2:楽天銀行の口座に統一時に見えたこと

2014年、楽天市場における銀行振込決済の仕様が変わり、ユーザーの振込先が楽天が開設した楽天銀行の口座に統一したことによる一部店舗の反発があり、なかでもサウンドハウスの以下の行動は業界では当時話題となりました。

問題は口座を統一したことではなく、楽天側の行動過程にあります。自分もこのあたりは知っているのですが、楽天側のやり方には違和感ありましたね。

「○○さん(ECコンサルタント)、ちょっと強引過ぎませんか?」

まだ品川シーサイドが本社だったころに、ECコンサルタントに文句を言ったことがあります。しかし、ECコンサルタントの回答はあまりポジティブな印象を感じることはできませんでした。「楽天がやると言ったら何を言っても変わらない」という三木谷社長のトップダウンによる経営スタイルなのだなと実感。

その直前に二重価格問題で結構叩かれていたのに、この強気な態度には一言で違和感でしたね。。

3:昨日の正解は今日の不正解?一覧画像のガイドライン変更

2017年だったと思います。ECコンサルタントが変わったため、クリムゾンハウスへ挨拶へ行ったのですが、その時に言われたこと。

「一覧画像にもっと文字を入れないと転換率上がりませんよ」

確かにそうだなと思いつつも、膨大な商品の一覧画像を変更するのは容易ではありません。結局頭で分かっていながらも、なかなか手が付けられず…。

するとある日、驚きの発表が。

楽天新春カンファレンス2018で「テキスト要素20%以内」「枠線なし」を推奨すると発表されたのです。さらに同年の10月には推奨から必須に変更。違反の場合はペナルティになるという突然の事態に周囲の店舗は大慌てです。

何が問題かって、つい最近までECコンサルタントから提案されていたことが重大なペナルティになったこと。これ、一言で「いい加減」です。

幸運にも自分達はあまり手が付けられなかったので、大きな修正はなかったのですが。店舗によっては、どれだけの工数を費やした事か…。某社の制作代行サービスでも、一時期一覧画像変更の依頼が殺到したようです。外注使えて直せるならまだしも、内製でやっているところは大変だったと思います。

当然店舗側の反発もあったようですが、やはりこのときも楽天のスタンスは変わりませんでした。圧倒的な流通量と楽天の売上比率が高い店舗は、退店することもできないため、結局は指示に従うしかなく。

「楽天、ちょっと権力行使しすぎじゃないか?」という疑問がさらに高まりました。

過去最大の改革と反発

とはいえ楽天だって1企業です。楽天が生き残るためには未来を見据えた施策に挑戦しなくてはならないのはとても大切なこと。今回の送料無料改め送料込みラインの件はその1つなのですが、一方で全店舗のことを考えていては何も挑戦ができないのも事実です。

モバイルを除くカードや銀行などの事業が好調のなか、本丸とも言える楽天市場が思うような成長曲線を描けず、さらにamazonの脅威もあるなかで大胆な施策が必要であることも理解できます。

三木谷社長は約5万店舗のうち、多少間引いてでも、中長期的に楽天市場を存続させる可能性のある施策に舵切りしたわけです。楽天市場史上最大の改革だと思います。

「公正取引委員会に色々言われようと絶対に遂行する」
「なにがなんでも成功させる」

相当な決意をされているのも分かりますし、三方良しについても言及されていました。

ただ、、、
店舗の支えがあって、今の楽天市場があるという根底の部分を三木谷社長は忘れています。忘れていないとしても、それを感じさせられません。これがマズかったと思います。三方良しが大事だとも言っていましたが、ハッキリ言って三方良しになっていないです。

そもそも本当に三方良しなら公正取引委員会から指摘なんかされません。もっと言うなら、楽天ほどの会社であれば五方良しを重んじるべき。

あとは、これまでの権力行使と思わせる規約変更の積み重ねも影響しているでしょうね。

店舗限定の掲示板は、今まで見たことのないくらい反発の投稿が書かれていました。こんな状況では何を言ってもやっても何かしらの反発があるのは必至なのですが、、、少なくても三木谷社長はカンファレンスのときに、もっと潔く正直に話すべきことを話された方がまだ良かったのではないかと思います(さすがにその内容は書けませんが)。

送料込みライン後の楽天市場はどうなる?

来月の導入開始と言われていますが、一方で公正取引委員会の立ち入り調査がはじまるなど、どうなるのかが全く分からない送料込みライン問題。
もし予定通り始まった場合、

最初は結構混乱すると思います。

すでに店舗によっては対策に打っているところもあります。
例えば以下の店舗は独自でバナーを策定。通常価格に送料分を上乗せさせるだけでなく、場合によっては注文キャンセルをするという内容です。

https://item.rakuten.co.jp/wanoevent/kasys8887/?s-id=top_normal_browsehist&xuseflg_ichiba01=10001669

せっかく買っても、購入の仕方や地域によっては
キャンセルになる可能性がある。
余計にややこしくなってませんか?
これ、本当にユーザーにとっていいことなのでしょうか。。?

今後このような店舗がさらに出てくる可能性があるわけで、
自分の支援先の店舗でも現時点では関東の注文を想定した
加重平均の送料を全商品に上乗せさせる予定です。

北海道や九州からの購入内容によってはキャンセルするため、
同じような状態になると思います。

楽天(三木谷社長)が描く状態になるのかどうかは置いておいて
このような変化をいかにチャンスに変えるかが求められるでしょうし。

せっかくご注文いただいたのを送料問題でキャンセルというのは
お客様視点で考えたら良くないため、別の対策が必要です。

最後に一言。
「インターネットの力を使って、地方の商店や大きな店舗を持たない個人商店でも、全国規模で展開する大企業と同じ土俵で戦えるようにしたいという情熱」

原点に立ち返ってほしいです。楽天には。
全然パンダフルじゃない。

※2/16更新、送料無料ラインから送料込みラインに名称が変わると発表がありました。

※3/2更新、公正取引委員会による緊急停止命令の申立てがありましたが、楽天側(という三木谷社長だけ)は強行の姿勢を変えず。

WEBディレクター5年、WEBプロデューサー3年、WEBアドバイザー(コンサル)3年を経て、現在は自社部門のWEBマスターをしながら、デザイン、ブランディング、動画編集スキルなどを勉強中のゼネラリスト。