ドラマ『やんごとなき一族』を切った理由

今期一番期待していた『やんごとなき一族』を4話で切りました。原作の良さが全てカットされ、後に続くであろう伏線を全て無視され。原作者の心中たるや…。と勝手に同情申し上げております。

原作通りじゃないとムカつく!というのはアニメオタクの悪癖だと自覚しておりますが、これはあまりに酷い。そもそもキャッチコピーが「アフターシンデレラストーリー」だった時点で私の中では疑問符がついておりました。

「シンデレラストーリー」とは童話「シンデレラ」の主人公のように、有名ではない一般人女性が、短期間で見違えるほどの成長と幸福を手にし、芸能界や社交界、その他の一流の場などにデビューしたり、あるいは資産家と結婚する成功物語をいう。(Wikipedia)

主人公・佐都は結婚によって深山家という資産家と繋がりはしたけれど、当初は慎ましく生きていくつもりだった。しかし現当主である義父に強引に「(暫定)次期女主人」に据えられる。というのが第一話であったはず。深山家に入ってからは女主人という名の家政婦で、「シンデレラ」というなら結婚後の方がシンデレラの境遇に近いでしょう。キャッチコピーの時点でコケていますね。制作側が原作を理解していないのですから。

原作への無理解は枚挙に暇がありません。
どて焼きを持って訪問した佐都を義母が突き飛ばすシーン。あれ何ですか。義父の命令に逆らえない義母の演出?それも女主人の役目なの?訴えられたらどうすんの?それこそ「ねえや」か「男衆」にやらせれば?

その後も続く佐都への嫌がらせ。
原作の嫌みはサラッとしつつ心にブッ刺さるセレブトーク。ドラマは「ぼくがかんがえたいじわるなおかねもち」。

佐都「その指輪素敵ですね」
リツコ「ありがとう。ヴァンクリのソクラテスなの。アントレ・レ・ドアも好きなんだけどやっぱりソクラテスならブーケかなと思って…。あっパーティーによく行ったりしなきゃなかなかつけることないですよね」

原作のこのシーン大好きなんですけど、ドラマではカットされてましたね。
ドラマでは全員が「庶民を見下して排除しようとする存在」なんですよね。そうなるともうモブ1モブ2モブ3…でいい。原作は一人ひとりに信念があり、佐都に冷たく当たるにしても理由が個別にある。
例えばハ寿子おばあさま。佐都が明確なマナー違反をしたときにはピシャリと注意するけどそれ以外は結構無言。それどころか佐都が機転を利かせて行動したときはちゃんと褒める。
例えば春菜おばさま。佐都をこきつかったり貶めたりもするけど、身体的なことは何も言わない。佐都が倒れた母を見舞いたいと言ったときも、驚いた顔はしていたけど「病気の人間なんてほっといてこっちの世話をしろ!」というセリフはなかった(言ってたのは全部関西弁の姉たち)。

読み進めて初めて気づくキャラクターの個性。
古語『やんごとなし』の語源は「止むこと無し」。それは称賛であったり武勇伝であったり様々だが、原作に相応しいタイトルだろう。
ただドラマは早く暴走を止めてほしい。

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