最近聴いている音楽 (8月〜9月)

 年の瀬に「今年よく聴いたアルバム」にかんする記事を書く心づもりだったのだが、いろいろと書きたいことがあったので10枚だけアルバムを挙げることにする。りちぎに聴き終えたアルバムをぜんぶメモ帳にまとめているのだが今年に入ってそんなに聴いていない。まあ数だけ多ければいいというわけでもなく。おもにこの休み期間中に聴いたアルバムになる。

1. African Piano / Dollar Brand
https://music.apple.com/jp/album/african-piano-live-at-jazzhus-montmartre-copenhagen-1969/1443235504
 ダラー・ブランド(現アブドゥラー・イブラヒム)のライブアルバム。『音楽の聴き方』で岡田暁生氏が紹介していたのをきっかけに聴いたのだが、たったピアノひとつでここまで喚起させるものかという驚き。聴いているだけでアフリカのうだるような熱気とあの赤土の色が浮かんでくる。「The Moon」という曲は8分間ずーっと暴れ回るような弾き方で、夜というものの感覚を揺さぶられる。アフリカの夜が感じられる。すばらしい一枚。

2. Congtronics / Konono Nº1
https://music.apple.com/jp/album/congotronics/551456910
 アルバム名の通りKonono Nº1はコンゴで結成された、実は数十年前から活動を続けているかなり長寿のグループである。さぞ伝統あるエスニック音楽のグループかと思うが、本作で聴けるのはジャケットに写っているカリンバ(いわゆる指ピアノ)を電化して音作りに応用したエレクトロニカである(!)。他の楽器もジャンク品を再利用したりしてほかに見られない音像をしている。全7曲51分とはいえ全曲同じで意識しないと曲間がどこにあるかわからない。とにかく音が楽しい!アフリカ音楽特有のポリリズムが延々と続く。理屈うんぬんでは語れない良さがある。「Paradiso」という曲が特に良い。

3. Dini Safarrar / Mor Thiam
https://music.apple.com/jp/album/dini-safarrar/1165333166
 モル・チャムはセネガル出身の音楽家で本作は1973年にリリースされた。apple musicではジャズと分類されているがほぼ民族音楽である。現地の言葉を織り交ぜたきわめて祝祭的雰囲気の強い一枚。ドラマーだけあって「Kanfera」を筆頭にパーカッションへの意識が高い。それぞれの曲がキャッチーで聴きやすくアルバムも31分ほどなのでおすすめ(アフリカ音楽のアルバムは基本的に1時間前後が多い)。アフリカ音楽を聴き始めてから「音楽は楽しけりゃよくない??」みたいな考えが強くなった気がする(それが良いか悪いかは置いておいて)。

4. Deceit / This Heat
https://music.apple.com/jp/album/deceit/1526175563
 やっとディス・ヒートの2ndを聴いたのだが、まあこれがおそろしくカッコよくて。1stに比べるとだいぶポップになったんでは?という印象。土俗的で無機質で徹底して感情を排している。「Paper Hats」最高の音楽。とても良い。意味のない叫び。突発的な怒り。これが40年近く前に出たというのは奇跡としかいいようがない。「Makeshift Swahili」という曲なんかは身につまされるものがある。こっちを呪ってくるようなコーラスが印象深い。呪術的。その意味では狂人の神がかり的なものを感じる。

5. via nowhere / bed
https://music.apple.com/jp/album/via-nowhere/1508943476
 bedはつい最近聴き始めて、ここらへんのバンドもdigろうかなという感じ。なんだかんだいってギターポップが好きなんですよね。ギターの音でしか表現できないものがある。bloodthirsty butchers以降のロックを正統にやっているという感覚。「YOU」ももちろんいいんだけど、次の「誰も知らない」も良い。こういうのを「言葉以上にギターがものを語る音楽」と勝手に呼んでいる。実力派。

6. New Games / goat
https://music.apple.com/jp/album/new-games/958840411
 goatは関西のバンドで佐々木敦主宰のHEADZから音源をリリースしている。とにかくものすごい緊張感。リズムキープの鬼。人力でこれをやるのは狂気に近い。一歩でも足並みが遅れたら瓦解するビート。ライブ映像もyoutubeに上がっているが見ていてめちゃくちゃハラハラする。目の前で演奏するのを見たらトランス状態に入れるかもしれない。一度は生で見てみたい。

7. Icarus / The Forms
https://music.apple.com/jp/album/icarus/250340613
 アルビニ録音。ではあるが、アルビニ感はそんなにない。10曲でたったの19分しかないのだが、こういう音楽を聴いたのは初めてな気がする。意識しなければ曲の継ぎ目が判然としない。強いて例えるならYesの『危機』の10分を超えるトラックを分割したような…。20分を超えないが密度は高い。アメリカのインディーズバンドってほかにもまだまだこのレベルのエモロックをやっているのがゴロゴロいるんだろうなあと思う。

8. なぎ / 環ROY
https://music.apple.com/jp/album/%E3%81%AA%E3%81%8E/1242638356
 夏休みに入って何枚か日本語ラップのアルバムを聴いてみて、C.O.S.A.とKID FRESINOの『Somewhere』もよかったのだが、これも良くて。短歌の朗読がインタールードとして挟まる。「On&On」が格好良い。トラックがどれもほかではあまり聴けない感じ(ミニマル/コンテンポラリー/電子的)なのも面白い。詞がスッキリ身体に入ってくる感覚がある。もっと評価されてもいいんじゃないかと感じる一枚。

9. Henzai / Hisato Higuchi
https://music.apple.com/jp/album/henzai/809896380
 寝る前によく聴く。アシッドフォークというのかアンビエントというのか(apple musicでは「Contemporary Singer/Songwriter」とジャンル分けされている)歌詞もなく杳としているギター1本の弾き語り。ジャケットがひじょうに良い。ダウナーでかなり落ち着く。Nick DrakeやGrouperが好きな人にオススメできる一枚。

10. Wool in the Pool / Wool & The Pants
https://music.apple.com/jp/album/wool-in-the-pool/1516399790
 録音が良すぎる。「私」の発音にクセがある。ゆるいグルーヴが耳に心地いい。JAGATARAの「でも・デモ・DEMO」の歌詞をサンプリングしたそのままずばり「Edo Akemi」という曲が実は原曲よりも好きだったりする。ありそうでなかなかない3ピース音楽。ものすごく面白いバンドだと思うしどんなライブをするのか一度生で見てみたい。



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