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from Ph to Ns 注射薬の基礎知識

新人看護師の皆さん、こんにちわ。病院薬剤師だまさんです。

このコンテンツは、薬剤師の視点から看護師さんに是非知っておいていただきたい注射薬の基礎知識について解説していきます。


1.リメンバー薬理学~「毒」に最も近い薬~

「薬」のルーツをたどると、往々にして「毒」にたどり着きます。

その事例は枚挙に暇がありません(下記はほんの一例です)。

20201212【注射薬の基礎知識】第1回

猛毒を病気の治療に用いようと考えるなんて、つくづく人間って逞しいなぁと思います。

20201212【注射薬の基礎知識】第1回

ただ言い換えれば、正しく使用しなければ、「薬」はいつでも「毒」に戻ってしまうということでもあります。

皆さんが学んできた薬理学は、「薬を毒にさせないための学問」なのです。


注射薬はとりわけ「毒」に近い薬と言うことができます。

注射薬 ≒ 猛毒 ≒ 妙薬

どういうことでしょうか?

ヒントは注射とそれ以外の投与経路の違いにあります。

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注射投与には他の投与経路と比較して以下の傾向があります。

20201212【注射薬の基礎知識】第1回

裏を返せば「誤投与したら取り返しがつかない」ということでもあります。

なので、本講義の前半は注射薬の「リスク」を中心にお話していきます。




2.注射薬に潜むリスク~ハイリスク薬とは~

注射薬に関連する医療事故は、全体の約1/3を占めると言われています。

赤 図形 バウハウス再訪 クリエイティブ プレゼンテーション (1)

注射薬に関連する業務は、複数の医療従事者が関わる点、薬剤の危険性、チェック項目の多さなど、諸要素が複雑に絡むのが特徴です。


近年、医療の場では「ハイリスク薬」という概念が浸透してきました。

赤 図形 バウハウス再訪 クリエイティブ プレゼンテーション (2)

勉強熱心な看護師さんからは「ハイリスク薬に関する勉強会」を要望されることもあるのですが、実はその定義は諸説(!?)あって意外に曖昧です。

(それはそうでしょう。リスクのない薬なんてないのですから)

例えば下記は薬剤師向けの定義となります。

赤 図形 バウハウス再訪 クリエイティブ プレゼンテーション (3)

「ざっくり」解説するなら、「薬用量の安全域が狭い薬」「過量投与すると命にかかわる薬」ということとなります。

※念のために申し上げておくと、通常量を使用していても、腎機能低下や相互作用等の要因で過量投与となる場合もあり得ます。

・・・ピンと来なかったかもしれませんね?

(それはそうでしょう、これは薬剤師向けの定義なのですから)

※「ハイリスク薬に関する業務ガイドライン(Ver.2.2)」はこちら


やはり、看護師さんには看護師さん向けの「リスク論」が必要です。

赤 図形 バウハウス再訪 クリエイティブ プレゼンテーション (4)




3.知っておきたい注射薬の「リスク論」❶貯法逸脱【危険度C】

今回は「貯法逸脱」の話です。

定められた貯法(保管方法)から外れ、品質が規格外となった医薬品を使用することは許されません。

薬効が低下していたり、不純物が発生していたりするからです。

最近では新型コロナワクチンの「超低温」保管が話題となりましたね。

コーラル 植物 上品 ビンテージ 活字 シンプル プレゼンテーション (2)


「冷所保存の薬を一晩室温に放置してしまいましたが、使えますか?」

これは毎週必ず1~2件程度ある相談です(苦笑)。

もちろん一部に例外はありますし、ケースバイケースではあるのですが、一晩位ならば大半は問題ありません。

薬局に問い合わせていただければデータを確認し、使用の可否を判断しますが、実はデータだけなら看護師さんでも調べることもできます。

インタビューフォーム安定性に関する情報を確認すればいいのです。


例)アトニン-O注

20201213【注射薬の基礎知識】第3回
アトニン-O

ちなみに室温とは1~30℃を指します(冷蔵庫内も室温!)。

※アトニン-O注のインタビューフォームはこちら


コーラル 植物 上品 ビンテージ 活字 シンプル プレゼンテーション (4)




4.知っておきたい注射薬の「リスク論」❷輸液トラブル【危険度C】

看護師さんにとって最も馴染み深い注射薬は恐らく「輸液」だと思います。

今回は遭遇頻度が高いと思われる輸液トラブルを取り上げました。


カラフル 幾何学模様 数学のクラス 教育用プレゼンテーション

輸液の外袋は清潔を保つ目的以外に、酸素・二酸化炭素・光による影響から輸液を保護するための加工がなされているものもあります。

よって、外袋は傷や穴が開かぬよう丁寧に扱い、開封後はできるだけ速やかに使用するようにしてください。

外袋開封後の使用期限の目安を記しましたので参考にしてください。

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皆さんは、メイロンやイントラリポスの外袋に丸いインジケーターが付いているのをご存知でしたでしょうか?

インジケーターの色が普段と違っていたら使用しないでください。


変色したり振っても溶解しない結晶ができた輸液も使用できません。

ただ、バッグが膨張しただけならば使用は可能です。


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プラボトルのプルオフキャップやソフトバッグのピールオフシールを外した後に投与が中止となるケースもあるかと思います。

注射針で穿刺していない限り、ゴム栓部分を消毒すれば使用可能です。

薬局に返品する場合は穿刺していない旨を必ず申し送ってください(というか、穿刺した製品は返品せず現場で廃棄してください)。


高カロリー輸液を筆頭に輸液は「栄養の宝庫」であり、感染源になりやすいということを忘れてはなりません。

汚染防止と確実な消毒をお願いします。


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プラスチック容器の表面に油性ペンで文字を書いた場合、それに含まれるキシレンなどの溶剤が輸液中に移行する可能性があります。

程度の問題ですが、直接記入は避け、ラベルを使用するのが無難です。


遮光カバーが必要かどうかも、よく訊かれる質問です。

ビタミン類は光の影響を受けやすく、特に高カロリー輸液は投与時間が長いことから遮光カバーは必須となります。

しかし、遮光保存の薬全てに遮光カバーが必須という訳ではありません。


皆さんは、元々無色透明の塩化カリウム液が黄色く着色されている理由をご存知でしょうか?(※透明の製剤も市販されています)

カリウム製剤は、急速投与すると高カリウム血症を起こし、致死的な不整脈や心停止に至る、極めてリスクの高い注射薬です。

よって、希釈濃度(K+濃度として40mEq/L以下)投与速度(K+濃度として20mEq/hr以下)が厳格に定められています。

黄色は、均一に混和・希釈されたかどうかを確認するための目印なのです。


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輸液類の「液漏れ」も薬局によく寄せられるクレームです。

そんな場合、我々は現物をメーカーに引き渡して調査を依頼するのですが、残念ながら(!?)原因の9割方は不良品ではなく手技の不備でした。

お忙しいとは思いますが、穿刺はまっすぐ、ゆっくりを心掛けてください。


大塚生食注TN等、バイアルと直接接続するタイプの溶解剤でも「液漏れ」「粉漏れ」「残液」が多く報告されています。

それらを起こさないためにはコツがありますので、資料をご一読ください。

※資料のダウンロードはこちら(要PW)。




5.知っておきたい注射薬の「リスク論」❸配合変化【危険度B】

注射薬に関する問い合わせの中で最も多いのが配合変化です。

注射薬配合変化の問題点は、次の3つに集約されます。

カラフル 幾何学模様 数学のクラス 教育用プレゼンテーション (12)


ところが、実際に配合変化を事前に回避することは容易ではありません。

薬剤師はメーカー提供の配合変化表や専門書を用いて確認を行っていますが、全ての組み合わせについてデータがある訳ではないからです。

20201219【注射薬の基礎知識】第5回

配合データが存在しない、かと言ってむやみにルートは増やしたくない。

実に悩ましい問題です。


場合によっては、物理化学的な見地から予測できることもあります。

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ただ、看護師さんが予測するのは困難だと思いますので、せめて「配合変化を起こしやすい注射薬」を把握しておきましょう。

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※薬品リストのダウンロードはこちら(要PW)。


輸液類にダブルバッグ製剤が多いのは、配合変化(メイラード反応)を防ぐためですので、隔壁は直前に開通してください(開通忘れも困りますが)。

20201219【注射薬の基礎知識】第5回


参考までに「配合変化を回避するコツ」も覚えておきましょう。

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6.知っておきたい注射薬の「リスク論」❹血管外漏出【危険度A】

注射薬の血管外漏出による皮膚傷害は、炎症潰瘍形成、ときに壊死を生じることがあり、患者に大きな苦痛を与え、治療継続が困難になることから、注射薬を投与する上で最も注意しなければならないトラブルの一つです。

特に抗がん剤による皮膚障害は、漏出時の炎症は軽微であっても、数時間から数日後に遅れて症状が強くなることがあるので注意が必要です。

※危険度は「壊死性」「炎症性」「非炎症性」の3段階に分類されます。

20201220【注射薬の基礎知識】第6回

抗がん剤以外で危険度の高い薬剤には下記があります。

20201220【注射薬の基礎知識】第6回

※血管炎・静脈炎を発症しやすい主な注射薬はこちら(要PW)


では、我々は危険度の高い注射薬にのみ注意を払えばよいのでしょうか?

実は、先にあげた注射薬以外(生理食塩液、10%糖液、維持液、脂肪乳剤)でも漏出による皮膚傷害が報告されています。

組織・細胞毒性が低いにもかかわらず傷害を招く機序は不明ですが,事前にリスク因子を把握し、ハイリスクの患者に関しては細心の注意を払う必要があると言えるでしょう。

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漏出時の基本的処置は下記の通りです。

20201220【注射薬の基礎知識】第6回
20201220【注射薬の基礎知識】第6回

※近年では接触性皮膚炎のためアクリノール湿布は使用頻度は減り、生食湿布に代替が進んでいます。

応急処置として局所保冷(冷罨法)または局所保温(温罨法)が行われることがあります。どちらを選択すべきかは薬剤によって異なり、誤った選択をするとかえって悪化させる可能性があり注意が必要です。

※保冷と保温に関する情報(NHSガイドライン2011)はこちら(要PW)。


漏出時に迅速かつ適切な対応がとれるよう、最新の情報(ガイドライン等)を元に院内で手順書を作成して全ての医療従事者に対して周知徹底を図るとともに、必要な処置薬や器具類を配備しておくことも重要です。

※当院の手順書「血管外漏出予防と対応マニュアル(第3版)」のダウンロードはこちら(要PW)。




7.知っておきたい注射薬の「リスク論」❺過量投与【危険度S】

冒頭で注射薬は「毒に近い薬」、「取り返しがつかない薬」とお話しましたが、言い換えれば「過量投与を生じやすい薬」ということです。

いやしくも医療従事者なら、したくて過量投与なんかする人はいません。

にもかかわらず、全国各地で過量投与による医療事故は絶えません。

赤と黒 コワーキングスペース ピッチデッキ プレゼンテーション (1)

そうおっしゃる方もいるかもしれませんが、あ・ぶ・な・いです。

指示を出した医師の意図と、指示を受けた看護師の解釈が一致していないケース(コミュニケーションエラー)が往々にしてあるからです。

なので、曖昧さは極力排除し、少しでも違和感を感じたら「しつこく」確認を取らねばなりません。


単位の誤り

赤と黒 コワーキングスペース ピッチデッキ プレゼンテーション (2)

単位の誤りは過量投与(数倍~数十倍量投与)の原因の「筆頭格」です。

20201220【注射薬の基礎知識】第7回

インスリンで単位を誤ること(例.4単位のところ4mL皮下注)は100倍量投与を意味し、患者はただでは済みません(けいれんや昏睡を来します)。

インスリンの場合、「単位数」をダブルチェックしていても、注射器の選択を誤ると元も子もなくなるという特殊性がありますが、次のようなケースは日常的に起こっている筈です。

赤と黒 コワーキングスペース ピッチデッキ プレゼンテーション (4)

口頭指示が避けられないなら、施設内ルールを設けておくことが肝要です。

※ちなみに当院では、オーダ単位は「第一単位」しか設定していません。


投与速度の誤り

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カリウム製剤は急速静注すると高カリウム血症を来し心停止を起こすため、必ず希釈して使用しなければなりません。

とりわけ危険性の高いカリウム製剤は、投与基準を明示するのが通常です。

20201220【注射薬の基礎知識】第7回


ワンショット可否の判別法

ワンショット静注厳禁の注射薬は、カリウム製剤以外にも多数存在しますが、アンプルラベルを注意深く見ることで判別できることがあります。

20201220【注射薬の基礎知識】第7回


あと、輸液の最大投与速度も把握しておきましょう。

特にNa+とHCO3-(100mEq/hr)K+とCa2+(20mEq/hr)は重要です。

※投与速度に注意を要する注射剤に関する資料はこちら(要PW)




抗菌薬の”適量”がわかる話~PK-PD理論の活かし方~
次回

ここから先は、看護師の皆さんにはあまり馴染みがないと思われる注射薬の論点をできるだけ「噛み砕いて」解説していこうと思います。



8.Nsの知らない!?注射薬の世界❶血中濃度を測定する薬

薬の効果や副作用には「個人差」がつきものです。

例えば治療域が狭い薬。

つまり薬物血中濃度が有効域を下回ると効果が出ず、逆に有効域を超えると中毒症状が出る、そんなさじ加減が難しい薬も一部に存在します。

※なので、薬の量を「倍にすると効果も倍になる」「半分にすると効果も半分になる」という考え方は必ずしも正しくありません。

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また、患者側にも薬物血中濃度を変動させる要素は沢山あります。

・体重の多い患者・少ない患者
・腎機能・肝機能の低下している患者
・血中濃度に影響を与える薬を併用している患者
・遺伝的に薬物代謝酵素が欠損している患者
・薬の飲み抜かしの多い患者  など


そのような薬は薬物血中濃度モニタリング(TDM)を行います。

TDMは「定期的なモニタリング(血中濃度の確認)」以外に、「中毒」や「飲み抜かし」が疑われる場合にも実施されることがあります。

≪TDMの流れ≫
医師 ⇒ 血中濃度測定をオーダする
看護師 ⇒ 血液を採取する
検査技師 ⇒ 薬物濃度を測定する
薬剤師 ⇒ 測定値を解析し、至適量を提案する

ご覧のように、薬剤師には薬物動態学の知識を用いて解析を行い、その患者に合った投与量を提案するいう重要な役割があります。

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解析には上記のようなソフトを使用することもあります。

カッコよく見えるかもしれませんが、実際はそうでもありません(笑)。

何通りもの投与量・投与間隔をシミュレーションし、その中から最も無難な投与法を探し当てるという、地味で辛気臭い作業だからです。

念のために申し上げておくと、TDMは内服薬に関しても行われます。

また、全ての薬物の血中濃度が測定できる訳でもないし、仮に測定できても診療報酬が付かないと大赤字になる薬物もあります。

※TDM対象薬(特定薬剤治療管理料の算定できる薬物)はこちら(要PW)


最後に看護師さんへのメッセージです。

20201229【注射薬の基礎知識】第8回




9.Nsの知らない!?注射薬の世界❷PVCとDEHP

看護師さんならば、「PVC」や「PVCフリー」という言葉を一度は見聞きしたことがあるかと思います。

PVC(ポリ塩化ビニル)はプラスチックの一種で、耐久性・透明性・接着性・経済性に優れるため、医療用具に汎用されている素材です。

20201230【注射薬の基礎知識】第9回


ところが、2000年以降、PVCを「危険視」する論調が増えてきました。

黒と青 バウハウス 再検討 金融 プレゼンテーション (2)

PVC製の医療用具には、柔軟性を持たせるために「可塑剤」という添加物が配合されているのですが、一部の注射薬にPVC製の輸液セットなどを用いると、この可塑剤が溶出してくることがわかってきたのです。

※輸液セット等から可塑剤(DEHP)が溶出する薬剤はこちら(要PW)


可塑剤が溶出すると、どんな危険性があるのでしょうか?

当初、代表的な可塑剤であるDEHP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)に関しては、次の3つの疑惑がかけられていました。

黒と青 バウハウス 再検討 金融 プレゼンテーション (3)

現在のところ❶と❸に関しては否定的な見解が取られています。

しかし、❷に関しては、DEHPへの感受性が高いと考えられる新生児・乳児・幼児、そして妊娠中の女性では代替品(PVCフリー)への移行を図ることが望ましいとされています。

※PVC製の玩具・育児用品も、EU・米国・日本等では規制されています。

PVCフリー(非PVC製)にはポリブタジエン製やポリプロピレン製などがありますが、PVC製に比べ高価な一方で性能は落ちてしまうため、限定的な使用に留まっているのが現状です。


最後に看護師さんへのメッセージです。

黒と青 バウハウス 再検討 金融 プレゼンテーション (4)




10.Nsの知らない!?注射薬の世界❸フィルター必須or禁忌の注射薬

輸液療法では、ガラス片やコアリングによって混入するゴムなどの異物混入や配合変化による沈殿物、微生物汚染、空気塞栓などが問題となるため、調製時あるいは投与時にフィルターが使用されます。

よって、一般的には輸液フィルターを通すのが理想的だと言えます。

緑とオレンジ かわいいモンスターのビジュアルアート・クラス 教育用プレゼンテーション


しかし、薬剤によってはフィルターへの目詰まりや吸着フィルターの溶解エアフィルターからの液漏れ等も報告されており、個々に添付文書・インタビューフォーム等を確認しておく必要があります。

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※添付文書にフィルターに関する記載のある注射薬はこちら(要PW)


また、下記のようにPVC製輸液セットに吸着・収着する薬剤もあります。

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最後に看護師さんへのメッセージです。

緑とオレンジ かわいいモンスターのビジュアルアート・クラス 教育用プレゼンテーション (3)




11.Nsの知らない!?注射薬の世界❹内服薬のある注射薬

成分は同じで、注射薬も内服薬もある。

そんな薬品が幾つあるか数えてみると、当院では100品目前後ありました。

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ここで注意したいのは、同一成分であっても、注射薬と内服薬の用途は必ずしも同じではないという点です。

冒頭でも述べた通り、注射薬は内服薬に比べ効き目が「早く」「強く」「短い」傾向があるため、緊急時内服困難時に使用されるのが一般的です。

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皆さんは、「バイオアベイラビリティ」という言葉をご存知でしょうか?

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つまり、同じ量を投与しても、内服薬は注射薬より「目減り」するのです。

実はこのバイオアベイラビリティ、薬によってまちまちです。

※バイオアベイラビリティはインタビューフォームで確認できます。

100%近いものもあれば、実は0%近いものもあります。

「ええっ?0%ということは、吸収されないってことでしょ?」
「吸収されない薬なんか飲んで、一体どんな意味があるの?」

そんな疑問を持たれた方はなかなか鋭いですが、意味はちゃんとあります。

それは「腸内殺菌」です。

具体例としてアミノグリコシド系抗生剤カナマイシンを挙げます。

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吸収が悪いからこそ、腸内では高濃度を維持して効果が発揮できるのです。


「注射薬≒内服薬」の誤解で困ったことも生じています。

それは抗菌薬の薬剤耐性(AMR)の問題です。

わが国で使用される抗菌薬のうち、約90%は外来で処方される内服薬ですが、これほどの量を使用しているのは世界中で日本だけです。

使用法が適正であれば何ら問題はありません。

しかし、最も汎用されている経口第3セフェム剤はとりわけバイオアベイラビリティが低く、患者が自己判断で服用中止する可能性も考慮すると、「耐性菌の増加に拍車を掛けているだけでは?」という批判も増えています。

そのため、近年では「経口第3セフェム不要論」が台頭し、国は国でAMR対策の啓発に躍起なのです。

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最後に看護師さんへのメッセージです。

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12.Nsの知らない!?注射薬の世界❺揉んではいけない注射薬

注射後の注射部位のマッサージは、下記の目的で行われます。

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一般的に、マッサージは皮下注射時や筋肉内注射時に行われ、皮内注射時や静脈内注射時では行いません。

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しかし、皮下注射や筋肉内注射であっても、例外はあります。

代表例がインスリン製剤です。

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また、持続作用を期待する Drug delivery system(DDS)製剤、マッサージによって組織障害を引き起こす恐れのある懸濁液、極少量の薬液等でも、原則としてマッサージは行いません。

※筋肉内注射を行ったあと揉まない注射剤はこちら(要PW)


最後に看護師さんへのメッセージです。

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13.Nsの知らない!?注射薬の世界❻薬局で支給できる注射薬

わが国において、2035年に高齢化率は33.4%に達し、人口の3人に1人が高齢者(65歳以上)になると推計されています。

20210410【注射薬の基礎知識】第13回

必然的に、地域において疾病や要介護状態にある高齢者は増加していきますが、その多くは自宅等、住み慣れた環境での療養を望んでいます。

その意味でも、在宅医療の整備は急務となっています。


在宅医療で投与の対象となるのは「厚生労働大臣の定める注射薬」に限定されており、処方箋を交付すれば薬局で支給を受けることができます。

病院 ベクタ形式・アイコン 医療 ヘルスケア プレゼンテーション (1)

ただ、在宅医療において使用できる注射薬は指導管理料を算定できるものに限定されており、在宅医療を提供するうえでの障壁となっています。例えば、入院中に使用していた注射薬が保険上在宅医療では認められず、退院を見送ったり、病院負担で支給する、といったことも生じています。

※薬局で支給できる主な注射薬はこちら(要PW)


最後に看護師さんへのメッセージです。

病院 ベクタ形式・アイコン 医療 ヘルスケア プレゼンテーション




14.Nsの知らない!?注射薬の世界❼転倒を引き起こす薬

(注射薬に限ったことではありませんが)今回は「転倒」を取り上げます。

医療安全上最重要課題の一つであり、看護業務と密接に関連する分野です。


転倒の危険因子は、身体的疾患や加齢変化などによる内的要因と、段差や照明、足にあわない履物など環境や構造に起因する外的要因に大別され、これらが複雑に関連して転倒が発生します。

転倒の危険因子

薬剤の服用は転倒の危険因子の中では内的要因に含まれ、リスクを高める要因の一つとなります。


薬剤と転倒の関わりでは、服用薬剤により生じる精神機能及び運動機能の低下が注目されています。

20210411【注射薬の基礎知識】第14回

精神機能の低下には、眠気・ふらつき・注意力の低下・失神・めまい・せん妄などがあり、運動機能の低下には、筋緊張低下・脱力・失調・パーキンソン症候群などが、服用薬剤の作用・副作用として生じることがあります。

これ以外には、服用薬剤による急激な血圧や血糖値の低下も、転倒を引き起こす可能性を高めることが知られています。

※転倒を引き起こす薬剤はこちら(要PW)


ところで皆さんは「ポリファーマシー」という言葉をご存知でしょうか?

転倒の危険因子 (3)

服用薬剤数と転倒リスクは密接に関連しており、5種類以上の薬剤を服用している人は転倒する割合が非常に高くなるという報告があります。

特に高齢者は身体機能が低下していることが多いため、ポリファーマシー、つまり転倒が起こりやすいのです。

転倒リスクを抑えるためには、薬の数を減らす努力も重要だと言えます。


最後に看護師さんへのメッセージです。

転倒の危険因子 (2)



≪今後のラインナップ≫
・投与間隔・順序が重要な注射薬
・ジェネリックの注射薬
・相互作用(グルカゴン)
・作用の長い注射薬(ボノテオ・エビリファイ)
・廃棄に注意を要する注射薬(ボトックス・トリセノックス)
・飲酒禁止の注射薬(セフメタゾール)


comming soon





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